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情報理工学部
野口尚吾さん
教職支援センター
竹内久代 さん
立命館大学スポーツ・健康産業研究センター・センター長
理工学部 ロボティクス学科
牧川方昭教授
「学」バックナンバー
#1 法学研究科 平井利枝 さん
#2 理工学研究科 並河祥司 さん
#3 経営学研究科 劉 莉 さん
#4 社会学研究科 池田さおり さん
#5 経済学研究科 中川賢司 さん
#6 政策科学研究科 藤井えりの さん
#7 国際関係研究科 佐伯廣謙さん
#9 情報理工学部 野口尚吾 さん
RS Webアンケート
文学研究科綜合人文学専修 博士課程前期課程1回生 石川ちひろさん
2004年、2005年 木村一信教授ゼミ生

高校のとき、私は理系分野より、文系の分野に興味をもっていました。しかし、まだ明確に学びたいものが確定していなかったこともあり、はじめに文系の学問分野を横断的に学べるという、文学部人文総合科学インスティテュート総合プログラムに進学することにしました。

1回生では、研究入門という小集団の授業で、心理・文学・哲学・地理・歴史の5つの分野を幅広く学びました。この授業は、学生がグループごとにプレゼンテーションを行うというスタイルではなく、5つの分野をそれぞれ専門に研究している先生方が、リレー方式で講義するというものでした。研究入門の授業を通して、自身の興味・関心が文学や歴史分野に向いていることがわかりました。そのため、2回生の基礎講読で分野を選択する際には、文学と歴史の2分野を選択することに決めました。

2回生では、基礎講読という小集団の授業で、前期に文学、後期に歴史を学びました。1回生では、レジュメを作って発表するという授業スタイルではなかったので、この授業で初めてレジュメの作成と発表を経験し、文献の調べ方等も学びました。また、美術史関連の講義や学芸員課程の授業により、美術や博物館資料などについてふれる機会が増え、このことが、後の研究対象となる大津絵との出合いにつながっていくことになります。

3回生では、「文化としての<移動>」をテーマとする木村一信先生のゼミを選択しました。木村先生は、文学作品を「文学」という枠にとらわれず、他の分野の視点もとり入れた新たなアプローチから研究しておられる先生です。ゼミでキー(key)となったのは、「<移動>の切り口から文学作品を読んだとき、新たに何が見えてくるか」という視点でした。

ゼミは、初回に先生が講義をされ、その後は、学生の発表を中心とした形で運営されていきました。学生は、先生が候補として挙げた文学作品及びテーマから1つを選び、3人1組で3週連続の報告を行います。そこで私が最初に選択したテーマは、「上海」でした。

「上海」のテーマを選んだ私たちのグループは、まず芥川龍之介の『上海游記』について報告することにしました。初回は、各自担当する部分のあらすじをまとめ、そこに描かれた上海の当時の社会状況や、国際都市として成立するまでの歴史的背景などをまとめて報告しました。2回目以降の発表では、初回の報告を下敷きに各自が関心のあるテーマを抽出し、発展させていきます。私の場合は、芥川と同様に上海に渡り、そこを舞台とした作品を残した文学者――横光利一『上海』、金子光晴『どくろ杯』など――を取り上げ、芥川の描写との比較などを行いました。この報告後、先生から同じ芥川龍之介の『庭』という作品に大津絵が出てくるので、読んでみてはどうか、というアドバイスをいただきました。今思えば、この作品がきっかけで、私の中に点在していた「移動」と「大津絵」というキーワードがおぼろげながら結びつき、卒業論文のテーマへとつながっていったのだと思います。

4回生では、「旅とものの文化―大津絵について―」を研究テーマに据えました。「大津絵」は、江戸初期から明治初期頃にかけて、東海道の大津‐京都間の街道筋でみやげ物として売られていた絵画です。3回生では、「文化としての<移動>」がテーマだったので、「移動」といえば「旅」、「旅」といえばみやげ物、みやげ物の1つの「大津絵」ということで研究テーマに設定したのですが、大津絵の研究はあまり盛んに行われていない分野だったので、研究を進めるにあたって予想以上に苦労しました。そこで先行研究をまとめる際には、文献の巻末に記録されている参考文献からさらに参考文献へと、とにかくいもづる式に調べていきました。
論文では、民衆の旅とみやげの発達との関連から、大津絵の画題や形態の変遷を考察し、大津絵が長きにわたって受容された理由を明らかにしたいと考えました。結論としては、大津絵が物理的にも精神的にも、当時の人々がみやげに求めた条件を満たしていたこと。また、その時々で移ろい易い人々のニーズに応え得るような、柔軟な受容のされ方をした絵画であったことを挙げました。この大津絵受容の在り方を考察にするにあたっては、木村先生からのアドバイスが大変参考になっています。研究の中間報告で、大津絵の画題が表わされた浮世絵などの絵画・出版物・工芸品などを図版で紹介したことがあったのですが、それらを大津絵の表われ方から分類したら面白いのでは、と助言いただいたのです。そのことを基に、卒業論文では集めた図版を分類・体系化した表を作成し、添付しました。

大学院では、明治になって廃れた「大津絵」が、近代以降、特に民芸運動と連動するかたちで再評価されていく過程について研究し、さらに「大津絵」研究を深めていきたいと考えています。研究にあたっては、自分の中にしっかりとした芯を持ちつつ、総合プログラムで培った柔軟な姿勢も忘れずに臨みたいと思います。

修了後は、就職する予定ですが、複数の視点から物事にアプローチするという考え方は社会に出ても忘れないでいたいです。

卒業研究が完成するまで―石川さんの場合

回生 授業スタイルと研究方法キーワード
1回生 ■研究入門(小集団)
心理・文学・哲学・地理・歴史の5つの分野について、各分野を専門に研究している先生方から5回ずつ講義を受ける。
キーワード ex) 国民国家論
貧困と観光
史学概論
分野の選択
…etc.
2回生 ■基礎購読(小集団)
前期は文学、後期は歴史を大きなテーマとして、文献に関する報告を行う。
キーワード ex) 日本美術史
民族と文明の美術史
作品論
歴史教科書問題
…etc.
3回生 ■テーマリサーチゼミナール(小集団)
3人1組で3週連続報告を行う。
キーワード ex) 移動と文学
移動と文化変容
…etc.
4回生 ■テーマリサーチゼミナール(小集団)
前期は各自の研究成果の報告、後期は個別指導を受ける。
キーワード ex) 旅と大津絵
柳宗悦と民芸運動
美術的な視点
文化史的な視点
…etc.

研究成功の秘訣
―よりハイレベルな卒業研究のために

 

木村一信 教授

2004年度・2005年度に私が担当したゼミは、「文化としての<移動>」をテーマとするテーマリサーチ型ゼミナールでした。そもそもテーマリサーチ型ゼミナールとは、現代的な諸課題を分野・領域を自由に横断しながら、人文科学の立場からアプローチすることを目的とした、文学部独自のゼミナールです。そのため、テーマリサーチ型ゼミナールで扱うテーマは毎年見直され、常に新しいテーマが開拓されています。また、文学部であれば、所属の専攻・プログラムにかかわらず履修することができるため、様々な所属の学生が集まるのがテーマリサーチ型ゼミナールの特徴です。

まず3回生では私が日本の近代・現代社会について「移動」を視点とした講義を数回行い、その後こちらから指定した「移動」をテーマとしたキーワード・作品の中から学生がテーマを選択し、発表を行いました。こちらが指定したキーワード・作品の例としては、夏目漱石の『三四郎』を通して、「上京する青年」というキーワードの諸相をとらえました。このように3回生では、学生自身がこちらから指定したキーワードを広げていきました。また、4回生では各自が「移動」という視点をふまえてテーマを見つけてそれを深め、卒業論文を作成しました。

石川さんは「移動」を視点としたこのゼミの意図を最も理解し、卒業論文を作成した学生だと思います。また、石川さんは大変熱心で、特に図書館での文献調査力に優れ、収集した多くの大津絵の図版は、卒業論文に十分な説得力を与えています。また、系統立てた論文作成をとアドバイスしたところ、石川さんはしっかりと研究内容を整理することができ、さらに説得力のある論文になりました。石川さんには学部に引き続き、大学院でも研究に邁進してくれていると思っています。

今後、卒業論文を作成される学生へのアドバイスとしては、まず2・3回生で自分が最も研究したい、明らかにしたいと思うテーマを見つけることが大事だと思います。特に3回生の時点では問題意識を鋭敏に研ぎ澄まし、テーマを探すことが大切です。そしてテーマを見つけた後は、しっかり先行研究をすることですね。また、ただ卒業論文を書けばいいという立場ではなく、自分がこの研究に関わることがどういう意味を持つのかということを考えて、広い視点で卒業論文を作成して欲しいと思います。

取材・文 皆木孝夫(政策科学部2回生)
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