子ども時代に「兼高かおる世界の旅」というテレビ番組に影響を受け、海外の様々な国で暮らしてみたいという漠然としたあこがれを持ったことが外交官を目指したきっかけです。大学では法学部に入学し、憲法などを基礎から学びましたが、法学部の勉強は難しく、入学して間もなく入部した体育会馬術部の活動も忙しくなり、外交官を目指し勉強することに意欲を失ってしまいました。しかし、「とにかく大学でやりたいことは全部やってしまおう」という開き直りにも似た気持ちで、留学生との交流やアルバイト、習い事など、大学生活の中で「やりたい」と思ったことをかたっぱしから実行に移しはじめました。
3回生の夏からは、大学を1年間休学してアメリカのコミュニティカレッジに留学しました。そこでは主に番組製作などメディア業界への就職を視野に入れた授業を選択し、最後の3ヶ月間は地元のテレビ番組製作会社でADをしたり、国際マーケティング関係のインターンシップを経験しました。しかし、インターンシップを経験してみると、メディア関係は自分が将来を掛けてやりたいこととは違うと感じ、「本当に自分がしたいことは何なのか?」と改めて自問自答し始めたんです。そこで、一度自分の原点に戻ろうと、子ども時代に「アンネの日記」を読んで以来関心があったイスラエルに行くことにしました。軍やキブツ(※キブツとはヘブライ語で「共同体」のことで、イスラエルで発達した共同体社会のこと)のボランティアに参加し、エルサレムではパレスチナ人街を歩き回り多くの人に会い、色々な話を聞きました。
今思えば、これが私の人生の大きなターニングポイントでしたね。そこで受けた衝撃は今でも忘れられません。いつ隣国から武力侵攻されるかも知れない、という恐怖を感じながら生活するイスラエルの人々の生き方や、基本的な権利が保障されない中で苦しい生活を強いられたパレスチナの人々の生活を目の当たりにし、日本がどれほど平穏で、平和で、幸せな国なのかを実感しました。大好きな日本がいつまでも平和で豊かな国で有り続けられるよう、自分もその一助となる仕事がしたいと思い、もう一度外交官の仕事を目指す決心をしたんです。このように、自分の中で「外交官を目指す」という目標を再設定してからは、それを達成すべく心を改めて勉強に取り組みました。自分の目指すものを明確にし、それに向かって突き進むという経験も、自分の中で大きな糧となったと感じています。 |