私は今、一等書記官としてネパールで働いています。一等書記官と言っても様々な職種があるのですが、私は広報・文化交流の分野を担当しています。赴任した国で、日本のイメージアップのために宣伝を行ったり、イベントを開催したりする仕事です。大使館のホールを使用して生け花教室を主催したり、日本映画上映会の開催、和太鼓グループなどによるデモンストレーションを行うことで、直接日本の文化に触れていただく機会を提供しています。
コルカタ(旧称カルカッタ)で和太鼓の公演を企画したとき、現地でストライキが起こり、和太鼓を会場へ運ぶことが困難な状況に直面しました。苦労の末、早朝にトラックを動かすことでどうにか現地の警察の協力を得ることができ、公演を無事成功させることができました。公演後、お客さんが立ち上がり大歓声が沸き起こったときは、そうした「裏方」の苦労もすべて吹っ飛び、感動に打ち震えたことを、今でも鮮明に覚えています。今の仕事には私自身、やり甲斐を感じており、「文化交流」の架け橋として貢献できることに誇りと喜びを抱いています。また、私自身、音楽や映画が個人的に好きなので、それらに関するイベントに携わることもまた大きな楽しみとなっています。
この仕事では、企画を次々と提案していかなければなりません。私が大切にしていることは、企画が「打ち上げ花火」に終わるのではなく、持続可能かどうかという視点です。例えば、昨年2月から新たに立ち上げた生け花教室では、現地の生徒さんにお花の代金だけ負担していただいて、授業料は外務省経費としてこちらで負担しています。負担額も、我々日本人にはわずかと思えるものでも、生徒さん一人一人にはとても大きな金額なのです。そういう視座に立ち、併せて持続可能性を追求していくために、現地協力者とともに智恵を出し合うことで、日々の生活に必ずしもゆとりのない中間層の人でも生け花教室に安心して参加することができ、持続性もまた確保出来るのです。現地の人に何が必要なのか、どうすれば参加の機会を増やせるかを常に考え、企画に繋げています。 |