「Rs be ambitious!」 笹井大嗣 氏(1986年 文学部東洋史学専攻卒業) 在ネパール日本大使館 一級書記官 広報・文化交流事務担当
日本と世界の文化の架け橋
立命館大学を卒業し、さまざまなフィールドで活躍するOB・OGが
在学生の皆さんに熱いメッセージを送る「Rs be ambitious!」。
今回は、在ネパール日本国大使館で一等書記官として働く笹井大嗣氏にインタビュー。
学生時代の過ごし方や今の仕事の醍醐味、在学生へのメッセージを伺った。
(2009年4月27日掲載)

学生時代は正課の勉強よりも、自分の興味のある本を読むことに夢中でした。古本屋や古本市にもよく足を運びましたね。私の卒論のテーマとなったインドに関する本だけでなく、小説や新聞、評論、ドキュメンタリー等もよく読みました。学生のときに本をたくさん読み、様々な考えに触れたことは、社会に出た今でも役に立っています。その他、何事も経験と思い、好き嫌いは抜きで、能や狂言、歌舞伎等の伝統芸能、それに、上京した際には、新劇にも足を運びました。

 

学生時代の私の専門はインド史でした。勉強していくにつれ、実際に現地へ行ってみたくなり、インドのコルカタ(旧称カルカッタ)他国内数カ所へ旅行しました。泥まみれになるような凄まじい現地の生活の様子を見て、字句に表せないほどの激しい衝撃を受けました。そして、このインド旅行が私のその後の人生において大きな影響を与えることになりました。

 

立命館大学を卒業して数年後、インド・ボンベイ大学の修士課程政治学研究科へ進学し、国内政治学を専攻しました。その後、在インド日本国大使館の専門調査員を経て、現在は外務省の一等書記官として働いています。最初から将来の自己像を決めてしまうのではなく、その時々の自分と相談しながら、一歩ずつ今の仕事に近づいていったという印象が強く、あらかじめはっきりとした計画性があった訳ではありませんでした。

 

 

 

私は今、一等書記官としてネパールで働いています。一等書記官と言っても様々な職種があるのですが、私は広報・文化交流の分野を担当しています。赴任した国で、日本のイメージアップのために宣伝を行ったり、イベントを開催したりする仕事です。大使館のホールを使用して生け花教室を主催したり、日本映画上映会の開催、和太鼓グループなどによるデモンストレーションを行うことで、直接日本の文化に触れていただく機会を提供しています。

 

コルカタ(旧称カルカッタ)で和太鼓の公演を企画したとき、現地でストライキが起こり、和太鼓を会場へ運ぶことが困難な状況に直面しました。苦労の末、早朝にトラックを動かすことでどうにか現地の警察の協力を得ることができ、公演を無事成功させることができました。公演後、お客さんが立ち上がり大歓声が沸き起こったときは、そうした「裏方」の苦労もすべて吹っ飛び、感動に打ち震えたことを、今でも鮮明に覚えています。今の仕事には私自身、やり甲斐を感じており、「文化交流」の架け橋として貢献できることに誇りと喜びを抱いています。また、私自身、音楽や映画が個人的に好きなので、それらに関するイベントに携わることもまた大きな楽しみとなっています。

 

この仕事では、企画を次々と提案していかなければなりません。私が大切にしていることは、企画が「打ち上げ花火」に終わるのではなく、持続可能かどうかという視点です。例えば、昨年2月から新たに立ち上げた生け花教室では、現地の生徒さんにお花の代金だけ負担していただいて、授業料は外務省経費としてこちらで負担しています。負担額も、我々日本人にはわずかと思えるものでも、生徒さん一人一人にはとても大きな金額なのです。そういう視座に立ち、併せて持続可能性を追求していくために、現地協力者とともに智恵を出し合うことで、日々の生活に必ずしもゆとりのない中間層の人でも生け花教室に安心して参加することができ、持続性もまた確保出来るのです。現地の人に何が必要なのか、どうすれば参加の機会を増やせるかを常に考え、企画に繋げています。

 
 

在学生のみなさんには、興味が湧いたことにとりあえず挑戦してみて、そしてしぶとく続けて欲しいと思います。私は、大学の講義はそれほど熱心に取り組むタイプの学生ではなかったかもしれませんが、興味のある本をひたすら読んだ結果、自分の世界が拡がり、社会に出た今でもどこかで役に立っています。

 

特に、文章作成能力と対話術、交渉術、語彙の増加に顕著に表れていると思うのです。それから、時間に余裕のある今のうちに、いろいろな場所へ旅に出て欲しいのです。特に、あまりインフラが発展していない印象の強い国や地域を自分の目で見据えることは、豊かな日本の生活を見つめ直す良いきっかけになると思います。自分の目で見て、異文化を体で感じてもらいたいのです。

 

最後に、学生生活を送る上で、「調整力」を身につけて欲しいと思います。例えば、授業でプレゼンテーションを行う際に、グループ内で役割分担をすることがありますね。そういうときに、どうやったらプレゼンテーションがスムーズに遂行できるのか、どうしたらグループの仲間との間で自覚と責任を共有できるのか、考えて行動することが大切です。何かを行う際、状況に応じて調整することは社会に出て必要になってきます。学生生活で身につけられる場面は実はたくさんあります。常に意識して過ごしてほしいと思います。

[学生広報スタッフ取材後記]
一等書記官と聞くと、学生時代は勉強一筋というイメージがありました。しかし、学生時代に読書や海外旅行で自分の世界を広げた笹井氏のお話を伺って、時間のある学生生活でしか出来ないことにも力を注ごうと思いました。日本とネパールの相互理解の架け橋として働く笹井氏のお話を聞いていると、仕事への誇りが伝わってきました。私も将来自分の仕事に誇りを持てるような、そんな働き方をしたいなと思いました。
 
取材・文/土山由衣(法学部3回生)
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