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立命館保健センター 伊東 宏 教授に聞く 現代人が体内に抱える“リスク” 現代人の生活スタイルが食生活の乱れ、運動不足を招き、メタボリックシンドロームを増加させている。放置し続けると脳卒中や心筋梗塞などで死亡する危険性が高くなるため、注意が必要だ。今回は立命館保健センターの伊東宏所長に「メタボリックシンドローム」についてお話を伺った。 |
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「メタボリックシンドローム」とはどのようなものでしょうか
「メタボリックシンドローム(以下MSと略す)」は、それ自体が症状を有する病気ではなく、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を予防するために考え出された疾患概念です。「高血圧」、「糖尿病」、「高中性脂肪血症」、「内臓脂肪型肥満」などは、それぞれ単独でも動脈硬化性疾患を起こす原因になりますが、これらが3つ以上重複するとリスクが30倍以上にもなる事が疫学調査で確かめられています。これらのハイリスク群を効率よく抽出して保健指導や治療の対象にするためにMSという疾患概念が作られました。最初にWHOやアメリカでMSの診断基準が提唱され、2005年4月にはわが国のMS診断基準が内科学会から発表されました(図1)。これによると、内臓脂肪蓄積に加えて、高中性脂肪血症、高血圧、高血糖のうち2項目以上満たす場合をMSと定義しています。MSはアメリカでは成人の3人に1人、わが国でも成人男性の20%が診断基準を満たします。立命館大学でも、男性教職員の約20%がMSで、更に約30%は内臓脂肪蓄積だけのいわゆる「MS予備軍」でした。
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「メタボリックシンドローム」の由来について教えてください
「高コレステロール血症」が動脈硬化性疾患の重要なリスクファクターであることは周知の事実です。しかし、コレステロール値が高くなくても心筋梗塞を起こすケースが結構みられます。これらのケースでは、前項に挙げたリスクファクターを複数合わせ持つ場合が多く、これまで「死の四重奏」、「シンドロームX」などと呼ばれてきました。これらは皆MSと同じものですが、最初に「内臓脂肪蓄積」があり、それが他のリスクファクターの原因になっていることが、MSで初めて明らかにされました(図2)。脂肪細胞は単なる「脂肪貯蔵のための細胞」にとどまらず、ホルモン様の多彩な情報伝達物質(アディポカイン)を分泌する内分泌組織であることが判明しました。更に、「内臓脂肪」は門脈を介して肝臓につながっているため、肝臓での脂質代謝や糖代謝に大きな影響力を持っています。内臓脂肪はこれらを介して、血圧を上昇させ、血糖値を上げ、脂質代謝異常を起こし、最終的には心筋梗塞や脳梗塞を起こすことが分かったのです。
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なぜ今「メタボリックシンドローム」が注目されているのでしょうか
動脈硬化性疾患は、全世界の死因別統計でトップ(30%)を占め、わが国でも1位の癌(31%)に次いで第2位(29%)となっています。動脈硬化性疾患は癌より多くの国民医療費を費やしているため、その予防は特に重要です。厚生労働省は、MSというハイリスク群に対象を絞って介入することにより、効率よく動脈硬化性疾患を予防することを計画しています。MSの診断を受けた人に、保健指導を行い、食事療法や運動療法に取り組んでもらい、その結果内臓脂肪を減らことができれば、他のリスクファクターも同時に改善するため、薬剤費などの医療費をかけずに将来起こりうる動脈硬化性疾患を予防し、将来の医療費も大幅に縮小することができます。少子高齢化社会を背景に社会保障システムの財政破綻が危惧されるわが国において、国民に更なる負担を上乗せすることなく医療費の増加を抑えることができると期待されているのが、厚生労働省が導入を予定している「メタボリックシンドロームの概念に基づいた新たな健康診断・保健指導のシステム」なのです。 | |||
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治療にはどのようなことが効果的でしょうか MSの治療は、生活習慣を改め「内臓脂肪」を減らすだけで良いのです。体重を減らすことはなかなか難しくても、ウェスト周囲径は少しの努力で容易に改善すると言われています。具体的な食事・運動療法の方法はいろいろありますが、ここでは自分1人でも簡単にできるモニタリングを紹介しておきます。 毎日、万歩計を装着して歩数を記録し、体重やウェスト周囲径も測定して、ノートに記録していきます。それぞれに目標値を設けてみましょう。歩数は一日一万歩に、体重やウェスト周囲径は3ヶ月後にスタート時の−5%位の値になるように設定してみて下さい。更に、摂取カロリーを必ず減らせる自分自身の簡単なルール作りをしてみて下さい。例えば、「毎晩のビールを半分にする」、「間食はやめる」、「ご飯のおかわりはしない」等々。きっと効果があると思います。
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