輝いています、ときの人 #130 クイーン位5連覇達成 史上最年少、永世クイーン獲得 かるた会 楠木早紀さん(産業社会学部1回生)
子どもたちの手本となるようなクイーンで在り続けたい -史上最年少、永世クイーンの夢-
多くの学生が小学校・中学校時代に一度はふれたことがある百人一首。
今年度最後の「ときの人」は、そんな百人一首を究めた学生にインタビュー。
2009年1月10日(土)、かるた競技の女子最高位、かるたクイーンを決める53期クイーン位決定戦が、
滋賀県近江神宮で開催され、楠木早紀さん(産業社会学部1回生)がクイーン位決定戦で勝利し、見事5連覇を達成!
史上3人目となる永世クイーンに最年少で輝いた。
今回はそんな快挙を成し遂げた楠木さんに、決定戦の様子や自身のかるたへの思い、そして今後の目標などを伺った。
(2009年1月30日掲載)
Q

クイーン位5連覇達成、そして永世クイーンの獲得、おめでとうございます。まず、今回のクイーン決定戦の様子をお聞かせ下さい。

楠木

競技かるたをご存知の方も少ないと思うので、まず試合の進め方から説明しますね。競技かるたは2人で対戦し、各自持ち札25枚ずつから始めます。相手の陣地の札を取りにいくことも可能で、自分の陣地にある札を相手に取られた場合や、お手つきをした場合は、1回につき相手の札1枚が自分の陣地に追加されます。先に自分の持ち札25枚を無くした方が勝利となり、3試合のうち2ゲームを先に取った方が勝ちというルールです。

 

今回出場したクイーン位決定戦は、年間のかるた競技大会の中でも一番大きな大会で、クイーン位を保持していた私にとっては、挑戦者を待っているという立場でした。私は中学校3年生で初めてクイーン位になった時から、これまで4回にわたってその座を守ることが出来、今回が5度目のクイーン位戦でした。しかし、今回の試合はこれまでのものとは違い、永世クイーンがかかっていた試合だったので、対戦相手がどんな選手なのか、少し不安でした。相手選手は私に対し、戦略を立てることができますが、私には挑戦者が決まるまで相手の事を知る術がないので、決定戦で初めて相手のプレーを見ることになります。対戦相手の池上三千代さんは、クイーンへの挑戦権を賭けた東西決定戦や予選会で、全国の挑戦者を倒してここまで勝ち進んできている選手なので、強いということは分かっていました。

 

しかし、私は今まで池上さんと対戦したこともなかったため、本番では初戦から「自分のプレースタイルを貫く」ということだけに集中して、相手の出方を見ると同時に、大学での練習と同じような姿勢で試合に挑みました。そうして自分のプレーを貫いた結果、1回戦は22枚、永世クイーンがかかる2回戦では13枚の差をつけて、勝つことが出来、永世クイーンになることができました。

 

 

 

Q

決定戦は大差での勝利だったんですね。色んなプレッシャーもあったと思いますが、一番の勝因は何だったのでしょうか?

楠木

永世クイーンがかかった今回のクイーン位決定戦は、大学生となって初めて挑んだ試合でもありました。一番の勝因は、大学という新しい環境で、素晴らしいメンバーと共に、「勝つ」ことを想定した練習をしてきたことだと思います。私自身、立命館大学のかるた会の実力の高さは、高校生の時から知っていました。そこで、立命館という環境で自分のかるたをもっと極めていきたいと思い、入学を決めました。一方で、馴れ親しんだ地元・大分を離れること、そして新たな土地で大学生活とかるたを両立させていけるかどうか大変不安に感じていました。ですが、実際に入学して、初めてかるた会を訪ねたとき、部員のみなさんが温かく迎えてくださり、不安が一気に吹き飛びましたね。かるたが出来る環境が立命館にはある、そう感じました。

 

現在、大学ではかるた会の先輩やメンバーに囲まれて、練習に励んでいます。高校生まで地元でやっていた一人での練習とは違って、様々な仲間と色んな練習が出来るので、互いにスキルアップ出来ます。全日本優勝レベルのメンバーが多く所属しているので、練習で勝つことも自信につながっています。今回の試合に向けては「勝つ」ことを今まで以上に意識して練習してきたので、自信を持って試合に臨むことができました。今までとは違う仲間の存在が勝利の原動力になったと強く感じています。

Q

ずばり、楠木さんにとって「かるた」とはどのような存在なのでしょうか? また、今後の目標もお聞かせ下さい。

楠木

「かるた」に出会えた事は、自分の人生における素晴らしい財産だと思っています。かるたを始めたのは、小学校3年生の頃に従兄弟と一緒に、かるたクラブに行ったことがきっかけでした。習い事といえば、ピアノや習字教室が一般的ですが、従兄弟ととても仲がよかったので、両親が通わせたようです。始めて約1ヶ月後に、大分県のかるた大会に出場し、初出場で初優勝。当時は「かるたが好き」というよりも、「トロフィーが貰えることが嬉しい!」という魅力に惹かれ、かるたを続けました。競技かるたは、E級からスタートし、試合を重ね勝っていく事でD、C、B、Aと級をあげていくのですが、私はかるたを始めて2年経った小学校5年生でA級を取得しました。そうして、かるたの世界にのめり込んでいったんです。

 

しかし中学3年生の時、ちょうどクイーン位戦の予選会を控えた数ヶ月前に、これまで勝ち続けた結果、A級選手が自分の周りにいなくなり、部活でやっていたテニスで同じ年代の友人とプレーする楽しさを知ったこともあり、かるたに面白みを感じなくなったんです。「クイーン位戦の予選で負けたら、かるたを辞める」そんな風に父と話していました。そんな私に父も「負けたら辞めれば良い。でもこの予選は出場しなさい」とこの試合を最後に辞めることを許可してくれました。ところが予選会で勝ち、東西戦でも勝利し、なんとクイーン位決定戦でも勝って、最年少でクイーン位を獲得してしまったんです。その時からは、かるたに対する考え方も変わり、「やっぱりかるたが好き。かるたは自分が最大限に輝けるもの」と再認識し、今まで続けてきました。今ではかるたは自分にとってなくてはならない存在です。

 

今後の目標は、2009年度も全日本大学かるた選手権で団体戦と個人戦の両部門日本一のタイトルを獲得したいと思います。そして更に自分のかるたに磨きをかけたいですね。また、学部で子どもと社会の関係について学んでいるので、ゆくゆくは子ども達にかるたを教える、指導者になりたいと思っています。今後、かるたが世の中に広まって、もっとみんなに親しんでもらえるように、今はこどもたちの手本となる負けないクイーンでいられるよう、練習に励みたいと思います。

取材・文/李 利奈(国際関係学部3回生)
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