輝いています、ときの人 #137 「Decoding Kyoto Project」 代表 長曽由起(ちょうそ・ゆうき)さん(政策科学部3回生)、丹羽有希(にわ・ゆうき)さん(政策科学部3回生)、川島千明(かわしま・ちあき)さん(政策科学部3回生)
外国人の声をもとに作られたガイドブック 京都版『銭湯‐Sento-の歩き方』
2007年度から政策科学部で始まった地域貢献型英語教育プログラム「Decoding Kyoto Project」。
昨年度の『KIYAMACHI WALKER』に引き続いて、今年度は10名の学生たちの手で
京都の銭湯の英語版ガイドブック『The Sento(銭湯):Japanese Public Bathhouses in Kyoto』が発行された。
これは、京都市内にある銭湯について、マナーや歴史、それぞれの浴場の詳細情報などを紹介したもので、
4月17日(金)には、報道機関に向けての発表も行った。
今回は、ガイドブックの制作から完成に至るまでの経緯やエピソードについて、
このプロジェクトのメンバーである長曽由起さん(政策科学部3回生)と丹羽有希さん(政策科学部3回生)、
川島千明さん(政策科学部3回生)の3名にお話を伺った。
(2009年6月5日掲載)
Q

プロジェクトに参加したきっかけと、研究課題を「銭湯」に選んだ理由を教えて下さい。

長曽

「語学に興味がある」「自分の手でガイドブックを作ってみたい」「京都が好き」など、みんなそれぞれ違った動機でこのプログラムに参加しました。

川島

プロジェクトの研究課題を決めるにあたり、51名の外国人に取材をし、彼らが何を知りたがっているのかを聞き出しました。そこで返ってきた答えは「お風呂の使い方」でした。

丹羽

「銭湯」という日本独特の文化に外国人から「料金の支払いや、お風呂でのマナーがわからない」という声が多くありました。銭湯の数が多い京都で、是非外国人の方に「体験重視の観光をしてほしい」という想いから「銭湯のガイドブック」を制作することにしたんです。

 

 

 

Q

冊子の制作にあたって工夫した点や苦労した事などがあれば教えてください。

丹羽

まず、観光地周辺を中心に23か所の銭湯の掲載を決め、夏期休暇を中心に実際に銭湯への取材を始めました。多くの銭湯は地図では分かりにくい場所にあるため、何時間も歩いて、外国人の方にも分かりやすいように工夫をした地図を作りました。

長曽

何度も何度も銭湯と学校を往復して、作り手である私たちと、銭湯の経営者の方、両者が納得できる冊子を作り上げるよう心がけました。しかし、作業が思うように進まず、周囲のグループのテーマが具体化する中、焦りといらだちもありました。

川島

一番苦労したのは、英訳作業かもしれません。これには、4か月もの期間を要しました。『番台』や『薬湯』など、日本独特の文化である銭湯の特徴をどう表現すれば伝わるか、チェックにチェックを重ね、簡単な単語を選び、巻末には用語集も掲載して、分かりやすさを追求しました。「一人でも多くの外国人の方に参考にしてもらいたい」と思いながら作業をしていましたね。

丹羽

ただ、苦労だけではありませんでした。取材を始めると、想像していたより多くの銭湯の方が快く取材に応じて下さいました。「大変だね」とジュースを出してくれたり、「せっかくだからお風呂に入っていけば」と声をかけてもらって、実際にお風呂に入ったりした事もあります。

 
Q

出来上がった冊子を見た時の感想と記者発表の様子を教えてください。

丹羽

この冊子の制作を通して、社会と繋がることができたと実感しています。苦労も多かったですが、『人の温かさ』に触れるとともに、電話応対やマナーなどをはじめ、社会勉強になりました。

長曽

衣笠温泉での記者発表では、終始顔が引きつり、カメラのシャッター音の数に驚きましたが、自分たちが作った冊子が注目されているという事が嬉しかったです。貴重な体験にもなりました。

Q

最後に在学生のみなさんにメッセージと、外国人の方に一番見てもらいたいページを教えて下さい。

長曽

一番見てほしいページは、マナーについてのページです。これさえ読めば、初めて銭湯に入る外国人のみなさんも不安なく銭湯に入れると思います。

川島

政策科学はフィールドワークが重視される学問。現状把握を行い、社会を自分から知っていき、視野を広げることが大切だと思います。

丹羽

学びの場が社会にも広がるという事をこの冊子の制作を通じて感じました。一歩外に出て社会と接点を持つことが、大切だと思います。

京都を探索し、一日の疲れを癒すため、彼らの作ったガイドブックを片手にのれんをくぐる外国人の姿を見る日も近い。
Link The Sento Decoding Kyoto2008のホームページはこちら
  「The Sento」冊子の PDF版もダウンロードできます。
取材・文/大舘 匠(法学部3回生)
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