輝いています、ときの人 #138 葵祭 第54代斎王代 千 万紀子(せん・まきこ)さん(文学部国際プログラム4回生)
行動することで伝えられる「日本の伝統を世界中に伝えたい」
京都市の賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)で、
5月15日(陰暦四月の中の酉の日)に行なわれる京都三大祭りの一つ「葵祭」。
正式には「賀茂祭」と呼ばれる葵の花を飾った平安後期の装束での行列が有名なこの例祭で、
お祭りのヒロイン「斎王代」を務めた千万紀子さんに、伝統行事で大役を務めた感想を伺いました。
(2009年6月12日掲載)
Q

まず始めに、「斎王代」に決まった時の感想を教えてください。

「斎王代」に選ばれた当初は、自分が「ヒロインを務める」という実感があまりありませんでした。普段と変わりのない生活を送っていましたが、記者発表で「斎王代」に決まった事が報道されると、周りの友人や近所の方、時には知らない方々にも声をかけられるようになりました。そこで「多くの人が注目しているお祭りで大役を務めるんだ」と、だんだん実感が湧いてきました。

 

 

 

Q

本番までの準備は大変でしたか?

当日は、化粧や衣装の着付けをしてもらうのに時間がかかりました。
十二単を身にまとうのは5月4日に下鴨神社で行われた「御禊(みそぎ)の儀」以来2度目でしたが、やはりとても重く、少し動くのにも一苦労しました。ただこの日は、衣装の重さよりも、責任の重さを感じました。

*葵祭本番前に斎王代が身を清める儀式
Q

当日は、御所や巡行ルートを多くの人が埋め尽くしましたが、「斎王代」から見たお祭りの様子はどんなものでしたか?

本番を前にして、緊張と不安な日々が続いていましたが、腰輿(およよ)に乗り込む時には覚悟をきめました。といっても、実際に腰輿に乗って少し高い位置から見渡すと、前にも後ろにも王朝装束をまとった方々が列をなし、沿道にも観光客の方をはじめ、多くの方々が見えました。その光景をみて、「『斎王代』を務める」ということの責任を改めて感じました。当日を迎えるまでは、プレッシャーや緊張などネガティブな感情のほうが強かったですが、当日、腰輿の上から本当に多くの参加者や観客を見て感動し、プレッシャーが吹き飛びました。保育園や幼稚園の子どもたちや、外国人の方々もたくさん来ていて、京都の伝統行事に携わっている責任を感じ、気が引き締まりました。

 

また今回、たくさんのボランティアの方々の協力によってこのようなお祭りが支えられているという事を知りました。

Q

貴重な経験をされたのですね。今回の経験を通じて変わったことはありますか?

裏千家家元という古い家に生まれ育ち、「伝統」という言葉は、小さい頃から慣れ親しんでいました。でも実際は、近くにありすぎて、深く考えていなかったのかもしれません。幼いころから目立つのが苦手で、これまではできるだけ人前に出ないようにしていました。しかし、今回の経験を通して、行動することの大切さを学びました。せっかくこのような機会を与えていただいたので、将来は日本の文化を世界に伝えていくような仕事がしたいと考えています。

取材・文/橋本さくら(文学部3回生)
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