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“やわらかいハードウェア”とその応用

動的再構成システム研究室

担当教員/泉 知論・孟 林

携帯電話や自動車から人工衛星まで、電子機器はソフトウェアやハードウェアといった技術で実現されています。ソフトウェア(やわらかいもの、の意)は書き換えて機能を変更できるプログラム。ハードウェア(かたいもの、の意)は高性能だが機能が固定された電子回路。研究テーマはそんな常識を超え、ソフトの利便性とハードの高性能を兼ね備えた“やわらかいハードウェア”です。これにより、例えば、放送規格が地域毎に異なっても回路を書き換えて受信できる、使い方に応じて回路が書き換わって進化していく、など、これまでにない機器が実現できます。さらに、宇宙・深海・放射能下などの機器を遠隔で書き換えることで管理や修理が安全に行える、書き換えて利用することで廃棄を減らせる、など、安全や環境への貢献も期待されます。

“やわらかいハードウェア”を搭載した電子基板と応用イメージ(左図)

SSoC(Search System on Chip)による知的処理実現をめざして

知的シリコンシステム研究室

担当教員/小倉 武・熊木 武志

通常のメモリは、アドレスを用いてデータを出し入れします。一方、データそのものの一部を用い、それと関連するデータを出し入れできるのが連想メモリです。このような連想メモリは人間の知的機能の根幹をなす知的な記憶を実現するものと言えます。これをLSIで実現した連想メモリLSIは、このような記憶機能のほか、様々な並列処理機能をもつことも知られています。SSoC(Search System on Chip)とは、このような連想メモリをキーデバイスとしたシステムモデルです。SSoCで実現しようとするターゲット処理に対する分析と考察を出発点とし、その処理を効率よく実現するアルゴリズムとSSoCの構成法を検討します。映像処理、ネットワークセキュリティ、ロボット制御等をおもなターゲットとして、知的処理実現をめざした研究を進めています。

知的画像処理用のSSoCの一例

安全・安心をサポートする無線通信システムの実現

無線信号処理研究室

担当教員/久保 博嗣・佐保 賢志

無線通信は離れた場所に大量のデータを送るだけでなく、私たちの生活の安全・安心をサポートするのに役立っています。当研究室では、高速に走行する物体や電波が届きにくい環境でも、高い品質の無線通信システムを実現できる無線通信技術の研究を実施しています。具体的には、時間・周波数・空間という3つの観点から信号をディジタル処理することで、時速数百kmを超える速度で移動する高速鉄道や航空機、地上から数万km上空にある人工衛星において安定した無線通信を実現します。また、無線通信システムを支えるために、目に見えない無線の環境を可視化することで、課題解決を容易にすることを目指しています。加えて、これらの研究成果を、無線通信のみでなく、光ファイバやメタリック線を使った有線通信、音波センサなど、広範な領域に展開するべく活動しています。

時間・周波数・空間を融合した 無線通信用ディジタル信号処理技術

電池のいらないシステムの設計とその応用

マイクロパワーシステム研究室

担当教員/道関 隆国・田中 亜実

電池交換の不要なシステムは、センサーネットワークや体内コンピュータ等、人手の届かないシステムに対して設置するだけで保守のいらない便利なものになります。当研究室では、電池のいらないバッテリレスシステムの研究開発、応用を目指します。バッテリレスシステムを実現するためには、エネルギーの生成(発電技術)、変換(電源変換技術)、消費(低電力LSI技術)といった3つの観点から研究を進める必要があります。エネルギー源としては、我々の身の回りに存在している光、熱、運動エネルギーといった自然エネルギーを活用します。LSI関連では、不安定な自然エネルギー源から内部CPU等に安定な電力を供給するための新電源変換回路技術や、電力の極端に小さな回路技術の研究を行います。システム作りまで行うので、学内はもとより数社の外部企業と連携して研究を進めています。

システムオンチップや組込みシステムの設計方法論

システムレベル設計方法論研究室

担当教員/冨山 宏之・谷口 一徹

デジタルテレビやBlu-Rayデコーダなどの情報家電製品、携帯電話、ゲーム機、あるいは、自動車や航空機などに組み込まれ、特定の処理を行う計算機システムを組込みシステム(Embedded System)と呼びます。組込みシステムの頭脳に相当するのが、システムオンチップ(System-on-Chip)と呼ばれる半導体集積回路です。システムオンチップには、複数のプロセッサ、メモリ、専用回路などが高度に集積されています。我々の研究室では、システムオンチップや組込みシステムを設計するための方法論を研究しています。システムオンチップや組込みシステムを用途に応じて最適に設計する技術や、設計を自動化する技術を、ハードウェアとソフトウェアの両面から研究しています。

PlayStation3上の
並列プログラミング

画像処理システムのハードウェアとソフトウェアを同時に設計している様子

高性能・高信頼・低電力なVLSIシステム設計技術の研究

VLSI最適化工学研究室

担当教員/福井 正博・谷口 一徹

情報家電で成功を収めてきたVLSI(超高集積回路)は、今後、車載、超小型医用システムなど、用途の多様化の時代を迎え、新たなる展開を遂げようとしています。このような時代では、用途に応じたシステムの最適化を極めることが高付加価値化につながり大きな競争力の源泉になります。たとえば、体内に入れる治療ロボットであれば、超低電力動作が要求されます。自動車の安全制御やスペースシャトルの姿勢制御であれば、高速性と超高信頼性が要求されます。当研究室では、これらの時代の要請に応えるため、システムレベルでの低電力設計技術および、電池や電源回路も含めた超低電力設計に取り組んでいます。また、システム面のみならず、LSI化したときの動作の確実性が求められるため、微細化物理における熱やタイミングを考慮した設計最適化手法の確立にも力を入れています。

道路白線認識システムのアルゴリズム設計と電子化による高速低電力化

アナログ回路の最適設計技術

アナログ集積回路研究室

担当教員/藤田 智弘・田中 亜実

携帯電話などに使われる電気信号を増幅する回路やアナログ信号をデジタル信号に変換する回路はアナログ回路と呼ばれています。この研究室ではアナログ回路のコンピュータによる自動設計技術を主に研究しています。アナログ回路はとても複雑で、設計手順どおりに作成しても十分な性能が得られなかったりするため、設計者の経験をもとに調整を繰り返しながら設計を行います。この煩雑な設計の流れをコンピュータにより自動化することで、欲しい性能の回路を誰でも作ることができます。また、携帯電話などで使われる高い周波数の回路はコンピュータを使った製造前性能予測が困難なため、シミュレーション技術の研究も行っています。開発したシミュレーション環境は回路の信頼性を高める設計に利用されています。

特徴あるLSI設計技術のセキュリティーへの応用

ネットワークLSIシステム研究室

担当教員/藤野 毅・熊木 武志

ICカードのように、暗号LSI(大規模集積回路)を利用して金銭や個人情報を保管するシステムが広く普及し、信頼性・安全性保証の重要性が非常に高まっています。暗号回路においては、暗号鍵が他者に知られないことによって、秘密情報が守られていますが、近年暗号LSIが動作している時の消費電力や放射電磁波を利用して暗号鍵などを窃取する攻撃手法が開発され、対策となる耐タンパLSI設計技術が非常に重要になっています。また、自動車用LSIや太陽電池などにおいては粗悪な模造品の流通が問題となっており、偽造防止技術として、LSIの製造ばらつきを利用するPUF(物理複製不可能)デバイスが注目されています。当研究室では、耐タンパLSI設計技術や偽造防止技術の研究を行っており、これらの技術を使って安心・安全な電子機器の実現に貢献します。

耐タンパAES暗号LSIと電力・電磁波を用いた攻撃実験環境

環境情報に関する信号計測処理、
電磁界の生体効果・生体信号処理に関する研究

環境情報計測/生体電磁工学研究室

担当教員/馬杉 正男・佐保 賢志

当研究室は、「環境情報に関する信号計測処理」と「電磁界の生体効果および生体信号処理」の2つの領域の研究を行います。まず、前者のテーマは、近年、注目されている地球温暖化や環境防災に関連するものです。地球温暖化は、雷活動や降雨量と深く関わっていることが知られており、雷放電時に発生する電磁界計測データをベースに、地球環境変動の定量化や雷対策技術の確立を目指します。また、防災関連テーマとして、レーダ技術を用いた人体識別検知などの信号計測処理の研究にも取り組みます。一方、後者のテーマでは、過渡的な電界変動が各種の生体システムに与える作用を対象とする生体電磁工学分野、さらには、人の自律神経や認知機能の解明に向けた生体信号処理の研究に取り組み、社会に貢献する新技術の確立を目指していきます。

雷放電に伴う放射電磁界の観測イメージ

脳の学習モデルによる画像音声処理と VLSIによる実現

画像音声医療信号処理研究室

担当教員/山内 寛紀

ロボットを、人間と同じように賢くする研究を行っています。知っている人を見つけ(人物検出、顔検出、顔認識)、その人の表情から機嫌が良いかどうかを判断し(表情認識)、唇の動きと音声とから話していることを理解し(発話認識)、ペットのように甘え、家政婦のようにサービスできる(セラピー)ロボットです。これは、人間の脳の情報処理モデルを、コンピュータ上に構築し、LSIというハードウエアを使って実現します。
この脳モデルは多くの所に使われてきています。映像の中から不審な動きをする人を見つけて警備会社に連絡するセキュリティシステム、登録した人の顔を見分けて建物の中に入れるガードマンシステム、レントゲン画像から癌らしき領域を見つけて医師に知らせる癌診断サポートシステムなどで、産業界や医学部と連携して研究と開発を進めています。また、大学発のベンチャー企業(TakumiVision株式会社)を運営しています。

左右の2つのカメラの画像から、コンピュータが物体形状と距離を認識して、周りの環境を再構築します。ロボットが自由歩行するために必須です。

並列コンピューティングとハード/ソフト・コデザインの研究

高性能計算研究室

担当教員/山崎 勝弘・孟 林

並列処理とハード/ソフト・コデザインを融合して、高性能な問題解決システムを構築することにより、ハードとソフトの両方が分かる人材を育成することが研究室の目標です。
並列処理
画像生成や気象予測などの大規模な問題は並列処理を用いて高速化することが必須です。我々はGPU(2500コアプロセッサ)を用いて、甲骨文字認識、ガラス傷検出、リアルタイム画像生成、BlokusDuo(ゲーム)などの研究を行っています。
ハード/ソフト・コデザイン
算術論理演算装置(ALU)を複数有する並列マシンを1個のFPGA上で動作させ、並列処理の有効性を調べる研究を進めています。本システムはマシン本体、アセンブラ、シミュレータ、プロセッサモニタ/デバッガから構成されています。

甲骨文字の例

マルチALUプロセッサのシステム構成

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