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名取 隆

「MOTを学ぶとあなたの人生が変わります。」

MOT教員 名取 隆 教授

テクノロジー・マネジメント研究科

名取 隆なとり たかし教授

東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)入行。日本政策投資銀行地域振興部企画審議役を経て、2009年4月より現職。金融機関に約30年在職して調査とファイナンス業務に従事し実務経験が豊富で、あらゆる業界と現場の事情を熟知していることが強み。また、市長アドバイザーとして自治体へ出向し、地域振興政策を担当するなど地域振興行政の経験もあり。英国ロンドン・ビジネス・スクール・スローン・プログラムコースを修了。東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻を修了し、博士(工学)を取得。現在、自治体や経済団体等の中小企業支援事業に協力するとともに、研修講師等として地元企業の経営幹部、技術者等の教育、指導にも携わる。

「先生がMOTに興味を持ったきっかけはなんですか。」

MOTを学ぶことによって、「機会損失」を無くして欲しい。

 私は30代前半の時に、イギリスのビジネススクールに行きました。留学はMOTではなくMBAのコースでしたが、欧米の経営学が新鮮でした。この経験によって、自分の考え方も大きく変わり、まさに人生が変わったのです。その後、日本の大学の博士後期課程に社会人入学して、MOTの分野で博士号を取得しました。その理由は、MOTに大きな希望と期待を感じたためです。日本企業は、技術は優秀なのに、なぜ収益に結びつかないのかが、根本的な疑問でした。私は博士論文では、日本の中堅・中小企業が特許などの知的財産権がたくさんあるのに、収益性と連動していないことを見出しました。そして、その理由を調べたところ、技術(知的財産)の使い方の巧拙がポイントであることが分かりました。まさにこれがMOTの真髄です。MOTはきわめて実践的で役立つ学問です。私が博士論文で明らかにしたように、技術の使い方を学ぶことが、現代の日本企業に求められていると思います。MOTを学んで技術の使い方を知っている企業とそうでない企業には大きな差が生まれると思います。したがって、MOTを学ばないことによる「機会損失」は非常に大きいと思います。

「MOTはどういう学問ですか。」

MOTとは単なる「技術の経営」ではなくイノベーションマネジメントである

 技術というものを様々な角度から捉えることが大事です。特に、その技術が持っている「機能」に注目すると、広い分野での応用の可能性が出てきます。しかし、意外に、技術を「機能」の面から検討することは簡単ではありません。どうしても技術を一面的に捉えがちになります。例えば、自動車部品の会社であれば、自社が持っている技術を自動車業界へ応用することしか考えないようになりがちです。そのため、ある技術がたとえ多方面に応用できる素晴らしい機能を持っていても、その機能を活用しきれていない残念なケースをたくさん見てきました。技術者の方からご相談を受けることが多いのですが、MOTの知識をお持ちであれば、持っている技術をもっと多面的に展開できるはずなのに、もったいないと思うことがあります。企業が技術開発に集中することはとても大事ですが、MOTの観点から言えば、技術者であろうともマネージャーのような目で技術を収益化する方法を考えることができるわけです。また、技術者でなくても、MOTを学べば、自社が持っているいろいろな資源を活用して、収益化に結び付けることができるようになります。つまり、MOTを学ぶことによって広い視野を持って課題に取り組める人材になれるという事です。

 また、私はゼミを通してイノベーションの本質を学生に理解してもらうように指導しています。イノベーションとは単なる技術革新ではありません。技術を含む様々な資源を組み合わせて、社会に新たな高い価値を提供するためのしくみをつくり上げることがイノベーションの本質です。MOTとはそうしたイノベーションをどう創り上げるのか、イノベーションをどう普及させるのか、などイノベーションをマネジメントすることと言ってよいと思います。その際に大事なことは、イノベーションによって達成したい目的を理解することです。達成したい目的が明確であれば、どんなイノベーションが社会から求められているのかが分かります。

「若い人が早いうちからMOTを学ぶ意義とはなんだと考えますか。」

知識を発酵させ有機的につなげていくのが大切である。そこには年齢の壁など無い。

 MOTを新卒学生が勉強しても良いのかと言う悩みをたまに聞きます。私の答えは、「全く気にする必要はない」ということです。例えば、新卒学生であれば後からもう一回学び直す時に早く吸収できるというアドバンテージになります。知識が蓄積していくと有機的に結びついていくからです。20代のうちはまだ難しいかもしれませんが、知識が徐々に発酵していき、時間がたってきた時にMOTの知識が役に立ちます。学生の時に勉強することによって、企業全体に対する理解力が高まるので若いうちにMOTを勉強しておくと社会人になった時に大きなアドバンテージになります。社会人になるとMOTを勉強する時間が簡単にはつくれません。また、社会人の方は物の見方が偏る傾向があります。なぜかと言うと、組織にはそれぞれ色があるからです。分かりやすくいえば、組織にはそれぞれの固有の考え方や価値観があるということです。そのため、自身が属する業界の見方、考え方に偏ってしまいます。そうした偏った考え方をほぐすためにも学生、留学生、他の社会人の方々と討議をすることによって、「あ、こんなふうに発想するんだな」と、自らの殻を破ることができると思いますよ。

 また、日本の場合は転職がまだそれほど盛んではないので、自らの価値を考える事はないかも知れません。けれども、MOTに来ていただいたら、転職できる能力は高まると思います。なぜなら自分の価値を考えることが出来るからです。だからといって転職を勧めているわけではありませんが。言いたいことは立命館MOTを学ぶことによって社会人としての価値が高まるということです。MOTを学べば自らに自信がつくと考えています。私たちは社会人の皆さんに自分の殻を破れる場所を提供できると思っています。

 学生の皆さんにいつも申し上げていることは、どうすれば他人に自らの考えを伝えられるかを意識しなさいということです。それを意識するとモノの本質が見えてくるわけです。易しい言葉で説明できなければその人はその本質を理解していないと思ったほうが良いです。発表の場では10分、15分はあっという間に過ぎていきます。本当に本質が分かっていれば、短い時間で分かりやすい説明ができるはずです。こうした実践力を身に着けることもMOTでは可能です。社会人の方も仕事で活用できる能力のひとつだと思います。