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小田 哲明

―アイデアひとつで世界を変える―
知財戦略とテクノロジーを学び、世界にイノベーションをもたらしてほしいです。

MOT教員 小田 哲明 教授

テクノロジー・マネジメント研究科

小田 哲明おだ てつあき教授

東京大学工学系研究科修士課程及び博士課程修了。2001年弁理士登録、特許法律事務所にて特許出願業務に従事。2007年渡米、フィネガン・ヘンダーソン・ファラボー・ギャレット・ダナー法律事務所にて特許出願業務に従事。2008年米国弁理士試験合格。ストックホルム王立工科大学、カールスルーエ大学、及びスタンフォード大学の研究員を経て、大阪大学工学研究科特任准教授に着任。2010年4月よりテクノロジー・マネジメント研究科に着任。2018年4月より東京大学政策ビジョン研究センター(現 未来ビジョン研究センター)特任准教授に着任。2018年10月~2019年1月ハワイ大学ウィリアムS.リチャードソン・スクール・オブ・ロー客員研究員。

「MOTに携わった経緯を教えてください」

知的財産を活用した戦略的経営の研究が必要とされていました。

 私は工学系の修士課程・博士課程を修了するとともに、弁理士資格を取得し、法律事務所で特許出願業務に従事していました。特許に興味を持ったのは、アイデアひとつで世界を変えるような影響力を持つ点、国境を超えグローバルに展開される点に強く惹かれたためです。弁理士として実務に取り組むかたわら、特許に関するデータ分析やブランド価値・戦略といった無体財産に興味を持ち研究を行いました。スタンフォード大学をはじめとする海外大学で研究をする機会にも恵まれ、様々な知見を得ました。ちょうどその頃、日本でも国家戦略として知的財産立国を目指す動きがあり、知的財産に基づいた創作活動やビジネス展開に関心が集まっていました。

 戦略的な経営を進めるための知的財産の活用に関する分析が必要とされていたことに加え、弁理士の仕事と並行して研究を進めるうちにたくさんの人的なつながりが生まれました。その結果、アカデミアの世界に身を置くことを決心し、現職に就くこととなりました。

「ご自身の研究内容や指導内容について教えてください」

知財情報分析によってビジネスをデザインする研究をしています。

 研究内容としては、知的財産価値評価を中心に、企業分析・ブランド戦略分析、最近は地域ブランドのケーススタディやSDGsに関連した分析も行っています。

 知的財産価値評価の研究では、特許の引用された回数から価値を測定する引用分析という手法で価値評価を行っています。特許はアイデアひとつで世界を変える可能性を秘めています。とてもわくわくする、魅力的な研究対象です。

 地域ブランドのケーススタディでは、地域団体商標の事例を調査しその研究結果をまとめています。地域団体商標とは、例えば「宇治茶」や「今治タオル」など地域の名称が入った商標のことで、事業協同組合が運営しています。実際に組合にヒアリングに行き、現在抱えている問題点やこれからブランドをどう守り、展開していくのかを調査しています。

 SDGsに関連した分析では、環境技術が経済成長に与える影響の実証分析や、SDGsへの取り組みを評価する基準を研究しています。SDGsを掲げることは、企業にとっては積極的に取り組むインセンティブとなりますし、実際に多くの企業がSDGsを取り入れていることからも評価基準の設定には社会的に大きな意義があると考えています。

 またAIに関する研究にも裾野を広げています。例えば、GAN(敵対的生成ネットワーク)により生成された画像を用いた研究を行っています。医療分野での実証分析も展開し、AIの可能性を広げていきたいです。

「立命館MOTの特徴は何だと考えていますか」

デザイン思考を促す良質な環境が整備されていることです。

 MOTの特徴は環境の良さだと感じています。たとえば、産学交流ラウンジには木製のブランコや動物を模したオブジェクト、そして畳まで設置されています。一見すると「なんだこれは」と感じる不可解な空間ですが、この非日常性がアイデアづくりやデザイン思考をする上でプラスになると私は考えています。以前シリコンバレーにある某有名IT企業のオフィスを見学したことがあるのですが、そこではアイデアを出すための環境づくりに非常に力を入れていました。MOTにもそれに通じる、創造的な活動をしたくなる環境が整備されています。

 学生の多様性という面でもMOTは優れています。また、MOTには企業経験のある教授や、私のように弁理士などの資格を持つ教授もいます。普通の大学院とは少し違った、良い意味で「異質」な環境が刺激となってよりよいアイデアを生み出すかもしれません。

 日々同じ生活をしていると、ルーティンの中で思考が凝り固まってしまう恐れがあります。MOTの非日常的な空間に身を置き、自分とは違う考え方を持った他者と交流することで、柔軟な思考を保ちつつアイデアの幅を広げていけるでしょう。

「MOTで学ぶ学生たちに期待することは何ですか」

MOTの充実した環境を最大限活用し、「個」の力を伸ばすことです。

 MOTで学ぶ学生には、「個」の能力をどこまで伸ばせるかに挑戦してほしいです。組織力を高めることは依然として重要ですが、現代は組織に埋もれるのではなく「個」の力を発揮する時代だと思います。テクノロジーがコモディティー化し、新商品やサービスの開発に多大なリソースを投下する必要がなくなりつつあるため、さまざまなネットワークやチャネルを活用できる個人が機動性を発揮できる時代です。このような時代では、言われたことをこなすだけの人材の価値は下がり、さまざまな能力やスキルを身につけた能動的に動く個人が必要とされます。これからの社会で求められるのは自分でアイデアを出しそれを実行に移す能力なのです。

 また能力を伸ばすと同時に、それを裏付ける成果や実績も意識しなければなりません。あれもこれもできますとやたらにまた能力を伸ばすと同時に、それを裏付ける成果や実績も意識しなければなりません。あれもこれもできますとやたらに主張しても、それに見合った実績がなければ信用してもらえない。今はグローバル化によって自身の能力を発揮できる場がますます広がっています。日本だけで完結せず、世界を視野に入れてどんどんチャレンジし、実績や成果を積み上げることが重要です。

 組織力やコミュニケーション能力ももちろん重要ですが、これからの「個」の時代では、どれだけ個人で戦えるかがたいへん重要です。個人の知的活動によって生み出されたイノベーティブなアイデアが次世代の産業やテクノロジーを創出していきます。MOTで学ぶことで、独創性をはじめとする「個」の能力を伸ばし、実績を積み上げてください。