理工学部の長谷川知子准教授の参画する気候変動・エネルギーに関する研究グループ(京都大学大学院工学研究科 都市環境工学専攻 藤森真一郎 准教授、大城賢 同助教、滋賀県立大学環境科学部 環境政策・計画学科 白木裕斗 講師)が中心となり、日本の長期的な気候安定化目標である2050年に温室効果ガス(GHG)排出量を80%削減する目標について、新しいシミュレーションモデルを用いて分析を行いました。その結果、エネルギーシステムの変革などに必要となるマクロ経済損失(費用)が従来考えられていたよりも格段に安いことが明らかになりました。

 全球平均気温の上昇を2℃以下に抑えるという気候安定化目標がパリ合意で掲げられ、日本は長期的な気候安定化目標として2050年にGHG排出量を80%削減するという目標を掲げています。しかし、既往研究では、この削減策を実施した場合に、マクロ経済GDPへの影響が2~8%といった値が報告され、GHG削減は大きな経済負担という見解もありました。今回の本研究グループの推計ではマクロ経済GDPへの影響が1.1%となり、従来の値と比べて大幅に小さいことがわかりました。これは、従来の経済モデルでは難しかったエネルギーシステムの変化を今回新しく開発したモデルで描写しやすくなったためです。エネルギーシステムについては、それに伴って、再生可能エネルギーとその変動性に対応するための蓄電池を大量導入する必要があることが明らかとなりました。本研究は、気候変動政策をより進めるうえで経済的観点、エネルギーシステム的観点両面から重要な示唆を与えるものです。

 本研究成果は、2019年10月18日に国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

<論文タイトルと著者>
タイトル:Energy transformation cost for the Japanese mid-century strategy
(日本のパリ協定に基づく長期戦略のためのエネルギーシステム変革にかかる費用)
著  者:Shinichiro Fujimori, Ken Oshiro, Hiroto Shiraki, Tomoko Hasegawa

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