バンクーバー朝日軍の前身である日本野球倶楽部(児玉氏は最後列中央)

2016.04.08 TOPICS

文学部・河原教授らが、カナダ日系人野球チーム「バンクーバー朝日軍」の関係者遺族を探し出し、スポーツ殿堂入りメダルを授与

 4月2日(土)に朱雀キャンパスにおいて、文学部の河原典史教授を中心とした研究チームが、カナダ日系二世野球チーム「バンクーバー朝日」の発起人である児玉基治氏のご遺族に、ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)からスポーツ殿堂入りの記念として贈られたメダルをお渡しする授与式を行いました。

 「バンクーバー朝日」とは、1914年、カナダのバンクーバーで日系移民によって結成された野球チームです。体格差などのハンデを乗り越え頭脳派野球とフェアプレーで、白人リーグで優勝を果たし、当時人種差別を受けていた東洋人・日系人に希望の光をもたらしました。最近では、そのエピソードを元にした映画『バンクーバーの朝日』(2014年)が公開されるなど、再び注目を集めました。河原教授は、カナダ日系人史を研究しており、映画製作にあたり、資料提供やパンフレットの解説執筆、宣伝番組の監修などに携わりました。
 同チームは、2003年に野球文化への功績を認められ、チーム解散から60年以上を経て、団体でカナダ野球殿堂入りし、2005年にはチーム団体と個人でBC州スポーツ殿堂入りを果たしました。この殿堂入りを記念し、チームと個人に対し記念メダルの授与が行われましたが、選手はすでに他界されている方が多く、ご家族の所在も不明であったため、記念メダルは未渡し状態で保管されていました。河原教授らは、埋もれたカナダ野球史の発掘のために、日本在住の「バンクーバー朝日」の選手家族やカナダ日系人社会と連携し、これまで約20数名以上の家族にメダルをお渡し、現在、残り9名まで絞られてきていました。
 今般、メダルをお渡ししたのは、バンクーバー朝日軍の前身となる日本野球倶楽部を設立し、朝日軍の立ち上げでも中心的な役割を果たした児玉基治氏のご遺族です。児玉氏は、日本に帰国後は、鳥井商店(現サントリー株式会社)の社長補佐も務められた人物で、サントリーを通じて、ご遺族と連絡が取れ、授与式が実現しました。河原教授からはメダルとともに、カナダにおいて児玉氏が日加用達会社の重鎮として活躍された様子をまとめた拙稿「1910年の悲劇はいかに報道されたか―カナダ・ロジャーズ峠の雪崩災害と日本人移民社会」が収められた河原典史・日比嘉高編『メディア―移民をつなぐ・移民がつなぐ―』(クロスカルチャー出版、2016年)も謹呈しました。
 ご遺族である児玉氏のいとこの娘にあたる熊中和子さんは、「本人が生きていたらとても喜んでいたと思います」と笑顔でお話されました。
 河原教授は、「こうして埋もれた歴史を掘り起こし、つないでいくことに研究の面白さと価値がある。残りのご遺族の発見にもつなげていきたい」と語りました。

写真:河原教授(後列一番左)と児玉氏のご遺族(前列2名)とその他関係者
河原教授(後列一番左)と児玉氏のご遺族(前列2名)とその他関係者
写真:河原教授から児玉氏のご遺族に著書を謹呈
河原教授から児玉氏のご遺族に著書を謹呈
写真:バンクーバー朝日軍の前身である日本野球倶楽部(児玉氏は最後列中央)
バンクーバー朝日軍の前身である日本野球倶楽部(児玉氏は最後列中央)
写真:児玉基治氏
児玉基治氏

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