鳥山正博教授

2022.05.31 TOPICS

なぜ「ビジネススクール」なのか-鳥山正博教授 ①

基礎的なところを鍛えることで全体像が理解できるようになる

 私がMBAを取得したのは34年前、まだ20代の頃です。当時、コンサルタンタントとして勤務していた企業の社内留学で、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院(以下、ケロッグ)で学び、「近代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー先生の指導も受けました。
 私自身、経営大学院で学んだことで痛感するのは、「視野が広がった」ということです。留学前、コンサルタントとして、お客さまに求められることを一生懸命にこなしていました。常に流行のテーマを追いかけ、お客さまが知りたいと思っていることを掘り下げ、課題解決の方策を模索していました。構造的にコンサルタントはお客さまが自分ではできないことをすることで価値を生んでいるのです。それはそれでやりがいのある仕事ではありましたが、ごく狭い領域の応用問題ばかりをやっていたのだということを、ケロッグに行って思い知らされたのです。「マーケティングってこんなに広いんだ」ということに気づいたのでした。
 ケロッグでは、すべての領域にわたって基礎科目をみっちりとやらされます。そのことによって、どの分野の話であっても一応の理解ができるだけの基礎知識を身に付けることができました。もうひとつ、企業のいろいろな機能は、人間の身体のようにすべてがつながり作用しあっているのだということを、体感しました。
 すなわち、企業活動を理解するには部分だけを見ていても意味がないということです。目先の仕事をこなしていくだけでは、全体的な知識の獲得、全体像の理解にはつながりません。しかし、ビジネススクールという学びの場で基礎的なところをみっちりと鍛えることで、全体像が理解できるようになります。——それは、何もコンサルタントに限った話ではないはずです。ここに、ビジネススクールで学ぶことの最大の意味があるのだと思います。
 私自身の経験を申し上げれば、ケロッグで学んだ後、どんな先端の新しい現象が出てきてもそのことを自分の頭の中でちゃんと位置付けることができるようになりましたし、自分が専門でない領域についてもフロンティアがどのあたりにあるのかという見当が付くようになりました。また、新しく何かを学ぶ必要が出てきたときに、何を、どのような順で学べばよいのかも分かるようになり、新たな知見の理解を効率的に進めることができるようになったと思っています。

海外とのビジネスで交渉相手は皆、MBAを持っている

 日本ではMBAを持った経営者はまだ少数派ですが、海外の経営者は、MBAを持っていることが普通です。特に、アジア・中国では10年くらい前に〝MBAブーム〟が起きていて、ほとんどの経営者がMBAを持っていると言ってもいいくらいです。国内外の、このギャップを甘く見てはいけません。
 つまり、海外の企業とビジネスをしようとするとき、その交渉相手は皆、MBAを持っているということです。相手は、MBAの知識は当たり前のこととして話をしてきます。同じマーケティングの体系を学び、経営について同じ概念・理論を理解している人同士が話をすれば、話が早いことは明らかです。
 グローバル化がますます進むビジネス界において、MBAが共通言語化しているということです。グローバルビジネスに打って出るとき、言葉の壁を乗り越えるものが英語力だとすれば、〝概念の壁〟を乗り越えるものは、MBAレベルの経営に関する知見の獲得なのではないでしょうか。そうした意味からも、目先の仕事に必要な知識だけを理解しておけばいいというスタイルの学びではなく、ビジネススクールにおいて基礎からトータルに学び、MBAレベルの概念・理論を身に付けてほしいと思うのです。

RBSにはモチベーションの高い院生が集まっている

 立命館ビジネススクール(以下、RBS)には、他のビジネススクールにはない強みがあります。最大の強みは「院生のモチベーションの高さ」にあると、私は感じています。東京には大企業の本社が多く立地し、東京のビジネススクールには、大企業の若手社員が多く集まってきます。
それに対し関西にあるRBSは大企業勤務者の割合が相対的に低く、中小規模企業を親から継いだ2代目・3代目の経営者、創業経営者、起業を考えている人たち、教育機関・医療機関のマネジャー、弁護士・会計士など「士業」職に就いている人たちなどが、経営力・マーケティング力を必要として入学してきます。 
 同じ目的を持ち切磋琢磨しながら学ぶ場においてモチベーションの高い院生が揃っているということが、最高の学習環境になっていると言えるでしょう。このように多様なバックグラウンドを持った人たちが集まっている上にRIMOという同窓会組織が活発なので、RBSにしかない、本当に面白い出会いがたくさんあることも、大きな魅力だと思います。
 一方、学部卒業生が進む「キャリア形成プログラム」にも、モチベーションの高い院生たちが集まっています。近年、特に顕著なのが、中国を中心とした留学生の増加です。多国籍の留学生が在籍していること自体が、多様な価値観を理解するという点で意味のあることですし、日本人の院生にとっていい刺激になってもいます。
 それだけではなく、留学生の場合、親が会社を経営しているケースが多く、また、日本に比べて起業のハードルが低いので大学時代から事業を興そうと考えている院生が多いといった特色があります。そのため、学びに対して貪欲な院生が多く、クラス全体の雰囲気を盛り上げているように感じています。
 社会人にとっても、学部卒業生にとっても、ビジネススクールで学ぶ2年間という時間は貴重です。その貴重な時間を使うに値する、共に成長できる環境が、RBSには整っていると思っています。

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