ミクロネシア短大

課外国際交流プログラム(1) 学生部副部長 川方裕則理工学部教授

国内外の他大学の学生と協働で活動 課外活動ならではの取り組み
学生団体natuRable
学生団体natuRableのメンバー (ミクロネシア短期大学にて)
ミクロネシア海
ミクロネシアにとって環境保全は急務な課題。この美しく豊かな自然を守りたい
現地のダンプサイト
ポンペイ島にあるダンプサイト。大量のゴミがほとんど分別されずに集積されている

 立命館大学では、正課(授業)・課外活動を問わず多くの海外研修プログラムを実施しています。ここでは課外活動のひとつ「ミクロネシアRPGチャレンジ」について紹介します(全3回を予定)。この活動は、ミクロネシア連邦(以下、ミクロネシア)が抱える環境保全に関する問題を見いだし、解決策を考えるPBL型プログラムで、今回結成された学生団体のnatuRableが千葉県にある麗澤大学と現地唯一の高等教育機関でもあるミクロネシア短期大学(以下、COM)との協働で実施。到達目標はもちろん活動内容なども学生が決める課外活動ならではの取り組みとなります。第1回目の今回は、担当教員で現地での活動にも同行した学生部副部長の川方裕則理工学部教授に活動の特徴や今後の展開などについてお話を伺いました。

学生主体の課外活動

あらかじめ決められたプログラムではない課外活動の魅力
ミーティングの様子
課題解決に向け3団体でミーティングを重ねた
小学校での環境教育
小学校での環境教育の様子

―学生部の国際的なボーダーを超える取り組みについて教えてください。また、今回のプログラムが行われるようになった経緯を教えてください。
 キャンパスをまたぎ、いろんな学部・回生の学生が、ひとつの目的を持って集い、“何を目標にどう進めていくか”から学生がゼロベースで活動を始めるこうした取り組みは、学生部が支援する課外活動ならではのものです。一般的な短期留学プログラムなど、海外に行って外国語を話したり国際交流を深めるといった活動に止まらず、ミクロネシアと日本がどういう歴史や関わりを持ち、それを踏まえ両国が現在どのような関係にあるのか、さらに日本が同国に与えた影響などをも踏まえた上で課題解決に取り組むことができる一歩踏み込んだプログラムです。
 学生部では、これまでいわゆるサークル活動などドメスティックな活動への支援がベースとなっていましたが、学生の活動自体も国内に止まらず国際化が進んでおり、その対応が求められていました。そうした流れのなか、初めての取り組みとして実施したのが今回のプログラムです。
 学生部としても、こういった自主ゼミ的な海外での取り組みを推し進めるのは初めてのケースでしたので、学生に機会を与えるという意味で、「こういう活動があるが、やってみませんか」という形で、最初の導入部分だけ学生部の方で準備し、学生を募集しました。どんな学生が応募してくるのか、それ以前に卒業単位にもならない課外活動にそもそも学生が集まるのかという不安もありましたが、事前説明会にも予想を上回る50人以上が参加し、最終的に約20人の応募の中から学部や専攻の異なる7人(6学部の1~3回生)を選抜することができました。集まった学生の多くが、「プログラムの内容があらかじめ決められている他のプログラムと違い、自由にイチから決められることに魅力を感じた」などの声が聞かれました。

―ミクロネシアRPGチャレンジの内容、特徴について教えてください。
 今回の活動は、もともとJICAで働いておられた麗澤大学の成瀬猛教授のご指導のもと2013年から始まった(ミクロネシアが抱える深刻なゴミ問題について考える)自主企画ゼミの取り組みに立命館が協働参画する形をとらせてもらっており、そのなかで立命館として何ができるのかを学生自らが考え行動するという自主ゼミ的な活動となります。夏休み期間中に約2週間、現地(ミクロネシア・ポンペイ州)を訪問することは決まっていましたが、麗澤大学やCOMの学生と何をどう進めるか、企画・計画はもちろん、リーダーやそれぞれの担当、団体名などを決めることから学生主体で進めてもらいました。
 学生団体の活動なので学生主体で自由に決めていくことは当然ですが、メンバーが3キャンパスに分かれており、学部も回生もバラバラで、各自が時間を合わせたりするのに苦労したようですが、それでも出発までにWebメディアを併用しながらミーティングを重ね、さらに麗澤大学での合宿などを経て現地での活動に出発しました。

到達目標から自分たちで設定

自ら価値を見いだし、自己評価する力が向上
川方先生
今回の活動について話す川方教授
在ミクロネシア日本国大使館に訪問
在ミクロネシア日本国大使館に訪問

―1年目を終えた感想と今後の展開、広がりなどについて教えてください。
 今回のプログラムのような課外活動の場合、到達目標を自分たちで考えて定めるという点が他の正課の留学プログラムなどと大きく異なる点だと思います。当初、学生たちは初年度から大きな成果を上げたい、何か結果を残したいという高い目標を胸に抱いていました。実際には、合格点など基準や定められたゴールがないだけに、学生は壁にぶち当たったり、不安や衝突、意見の食い違いなども現地では数多く経験したようです。全てが学生自身の自己評価であり、自分たちでここまで出来たと思うのか、いやこれだけしか出来なかったと感じるのか、達成感なのか挫折なのか、それを決めるのもまた学生自身です。グループ内でも評価はバラバラだったようですが、そうした経験もまた、課外活動ならではの利点であり、社会性を養う上では大きな一歩だったのではないでしょうか。
 現地での活動を終え、担当教員として総括した際、一部の学生から「先生の評価云々ではなく、自分自身としてもっと成果が実感できる活動がしたかった」という声が聞かれました。こうした反応こそが、私たちが望んでいたものであり、今回の活動の一番の成果だと思っています。なぜなら大学の成績などもそうですが、他者の評価を中心に生活している現代社会にあって、若者が自己評価すること自体が少なくなっています。取り組みに対して価値を見いだし、自己評価する力を養うことは、今後社会に出て活躍する上でも重要となります。そういった意味でも良いスタートが切れたと感じています。
 発展途上と言われる国や地域に、各国が自動車をはじめとした物資は輸出するけれども、その後の処理やリサイクル、公害に対する対策がなおざりにされ、現地で環境破壊などが起こっていることが世界的にも問題になりつつあります。こうした事案などは現地で実際に見聞しないことには分からないこと。現地の豊かな自然と合わせて体験することで何を感じ、今後にどう生かすか。こうした活動こそがグローバルな人材育成につながると信じています。
 現地での活動は2週間ですが、現地と連携しつつ日本でできることもたくさんありますし、活動は次年度以降も継続的に続いていきます。こうしたところもまた、他の正課プログラムとは違った課外活動の利点です。今後、学生がどんなアクションを起こすか、楽しみにしていますし、学生の持つポテンシャルに期待しつつ、学生部としてもボーダーを決めることなく、こうした活動が広がっていくよう支援していきたいと考えています。

*RPG=RITSUMEIKAN PROJECT IN GLOBALIZATION
*PBL=Problem/Project-Based Learning

第2回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=422
第3回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=423
natuRable facebook(学生団体)https://www.facebook.com/7natuRable/

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