ミクロネシア COM

課外国際交流プログラム(3) 理工学部環境システム工学科3回生 鈴木慧さん

初海外で感じたこと  人と人をつなぐ中継役になる
ダンプサイト 車
リサイクル施設がなく無造作に置かれる廃車。そのほとんどを日本の中古車が占める
ダンプサイト 大
近代化と共にゴミの量が増え、ダンプサイトの処理能力も限界が近付いている

 立命館大学では、正課(授業)・課外を問わず多くの海外研修プログラムを実施しています。ここでは課外活動のひとつ「ミクロネシアRPGチャレンジ」*ついて紹介します。ミクロネシア連邦(以下、ミクロネシア)が抱える環境保全に関する問題を見いだし、解決策を考えるPBL型プログラムで、到達目標はもちろん活動内容なども学生が決める点などが特徴となります。3回目の今回は、ミクロネシアが初海外だったという鈴木慧さん(理工学部環境システム工学科3回生)にお話をうかがいました。英語にコンプレックスがあり、参加が決まるまでパスポートすら持っていなかったという鈴木さんに訪れた変化とは……。

自分でもびっくりの変化

一歩前に踏み出すことの重要性
JAIC訪問
JICAで働く日本人の方から話を聞いた
ミーティング
COMの寮に宿泊し3大学でミーティングを重ねた

 「中学時代からあまり英語が得意ではありませんでした」と苦笑いする鈴木さん。その影響などもあり知らず知らずの間に海外留学なども自分には不向きだと考えるようになっていた。そんな鈴木さんの背中を押してくれたのが信頼する友人の一言だった。3回生から地球温暖化などによる海面上昇、水没の危機にある南太平洋の島々の環境問題を研究したいと考えていた鈴木さんに今回のプログラムのチラシを渡し「チャレンジしてみれば」と勧めた。海外旅行にも行ったことがなく、パスポートすら所持していなかった鈴木さんだったが、友人の一言が学部での学びを通じ国際協力にも少し興味・関心を抱くようになっていたことなどもあいまって重い腰を上げるきっかけとなった。
 いざ決意してみると、「自分でも不思議なぐらい熱を入れ志望書を書き上げ」提出。時を同じくしてヨーロッパ(フランス&オランダ)への短期留学へも応募。いずれも定員があり「英語がネックで受かる自信はなかった」と振り返るが、熱意が通じ参加が決定。あれよあれよという間に夏休みに2つの海外プログラムを経験することになった。

 今回のプログラムは麗澤大学が4年目なのに対し、立命館としては1年目でもあり鈴木さんたちメンバーは当初「麗澤大学のサポートが主な役目」だと考えていた。それでもミーティングを重ねていく間に「(小学生などへの環境教育を中心に行っている)麗澤大学とは違う角度からゴミ問題に取り組めないかということになり、ゴミの量が増え続けるなか、ゴミ置き場(処理場)となっているダンプサイトの処理能力向上など、ゴミのリサイクル関連についてアプローチしていこうということになりました」と経緯を話す。

 チームの結成から渡航までの期間が短く、関東にある麗澤大学のメンバーとのコミュニケーションも不十分な状況での出発となったが、初年度の大きな目標として掲げたていた“現地を知る”という意味では成果は少なくなかった。さらに、ミクロネシア短期大学(COM)の学生たちも自国のゴミ問題解決には前向きで、国を挙げて真剣に取り組んでいこうという雰囲気を感じ取ることもできた。さらに小学校でポイ捨てをする下級生を注意する上級生の姿を見て、「これまでの麗澤大学の取り組みや今回の環境教育の授業などが役立っていることを実感できました」と、小さいが確実な変化を目の当たりにし、「取り組みへのモチベーションもさらにアップした」と笑顔を見せる。
 なかでも印象に残っているのは、麗澤大学の初期メンバーで卒業後、青年海外協力隊として現地の環境局で働いている方の話を聞けたことだという。「こうした活動はなかなか成果が見えないもの。押し付けや一過性の取り組みにならないよう地道に継続していくことが大切ということが分かりました」と、これまでの経緯や活動の詳細を聞き、活動の方向性を決めていく上でも大いに参考になった。

現地でのふれあいを通じ英語の必要性を実感

プログラムの存在に感謝 機会があれば誰でも変われる
鈴木さん
環境教育で訪れた小学校にて (左・鈴木さん)
ハイキング
自然に触れることでの気付きも多かった

 夏休みに2つの海外プログラムを経験した鈴木さん。正課・課外活動と、ふたつの異なるタイプの留学を通じ、「ヨーロッパへの短期留学は、スタディツアーだったこともあり、向こうの学生と接する機会がほとんどありませんでしたが、ミクロネシアでは宿泊もCOMの寮で、小学校を訪問するなど文化や人と触れ合う機会に恵まれました」。苦手意識の強かった英語も、COMの学生や小学生などと話す間に、「相手を知り、相手に正確に伝えるためにも英語は必要。もっとしっかり勉強したいと思うようになりました」と心境の変化を口にする。
 「2回生までは自分で言うのも変ですが、あまり成績も良くありませんでした。しかし、今回のプロジェクトに取り組むようになったことで、自分の勉強に対する気持ちも変わり、3回生の前期はこれまでより成績も向上。以前は、学部卒で就職しようと思っていましたが、もっと深く勉強したいと考えるようになり、今は大学院進学を考えています」とはにかむ。

 これまでは英語がネックとなり留学という選択肢を自ら遠ざけていた鈴木さんだったが、「今回は、興味のあった地域、やりたかった活動(国際協力・貢献、環境問題)でもあり、さらに自分たちで内容が決められるということで、まず英語ありきではなく活動をイメージできたのが大きかったと思います。正課、課外活動を問わず、英語が苦手でも参加できるこうしたプログラムを用意してくださったことに感謝しています」と、鈴木さんにとって、今回のチャレンジがボーダーを超える大きなきっかけとなったことだけは間違いない。
 natuRableの活動はまだ始まったばかり。今後は、継続的な活動、次年度のメンバー募集なども含め現在の7人が中心となって進めることとなる。「麗澤大学との協力関係を深めていくことはもちろん、現地での活動の中心となるCOMの学生と綿密に連絡を取りながら、日本でできることを含め継続的に活動していきたい。英語力・コミュニケーション力を磨き、現地と日本、人と人をつなぐ中継役になれれば」と鈴木さん。秋にはCOMの学生が日本を訪れることになっているなど、この活動がどのように発展していくのか。メンバーそれぞれの成長、3つの大学の各団体、そして現地の変化を含め注目したい。(了)

第1回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=411
第2回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=422
natuRable facebook(学生団体)https://www.facebook.com/7natuRable/

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