2016.05.03

書を携えて・・・。その1:薫風編

ゴールデンウィークも後半に入りましたが、いかがおすごしでしょうか?行楽地に出かけたり、スポーツを楽しんだりと外にでることが何より気持ちのよい季節となりました。その一方で、新学期からの緊張を解き、ゆったりとした時間を過ごしてみるものまた良い時期でもあります。そんな時は、やはり心を鎮めて読んでみたいと思っていた本を読むのもオススメです。

このゴールデンウィークは久しぶりに本棚から以下の本を引っ張り出して再度読み返しています。
「定本 育児の百科」松田道雄著 岩波書店
ご存知でない方は、なんだ育児書か。と思われるかもしれませんが、この本は数多ある子育ての実用書とは少し趣が異なります。

著者の松田道雄は、小児科医の経験や育児中の親や保育者らとの長年の対話により我が国固有の風土を基盤にしつつも、最新の科学的知見を常に取り込みながら、人を育てるという大きな仕事に立ち向かう若い夫婦に寄り添い、それを応援する「育児の百科」を1967年に上梓しました。それ以降、1度は絶版になったこともあったようですが、新しい科学的・医学的知見を取り込み、3度の改訂を加えることで「定本 育児の百科」として1999年に出版し、2009年には文庫化され、いまでも多くに読み継がれる古典となっています。
確かに、医学の進歩著しい今となっては古い箇所も散見されたりもします(特に病気ついて)が、子供の生命力を何より礼賛し、その生命力の前では親となる存在はむしろそれに勇気づけられるといった極めて人間学的な思想書であるとも言える内容が、平易かつ簡潔な文体で書かれています。

子育て真っ最中の私も、これまで何度となく本書を開き励まされてきました。また、子育てを終えられた諸兄諸姉、これから子育てに取り組む若い夫婦、さらには未来に子育てをすることになる学生諸君においても松田道雄の人間への深い尊厳の眼差しに触れることで、人間の成長発達の不思議と、自らの成長を支えてきた周囲の存在への感謝が芽生えることと思います。
かつて「書を捨てて、町へ出よう」といった人もいましたが、「書を携えて、街を出よう」とし薫風に吹かれながらの読書などはいかがでしょうか?

スポーツ健康科学部は、文理融合を掲げて社会に貢献する人財を育成していますが、この基本的な人財育成の思想は、松田道雄が最新の科学・医学の知識を取り入れながら(アメリカやイギリスのウィルス学、眼科、耳鼻科、循環器科、伝染病学、小児外科、免疫学などの学会誌を毎週読んでいたとのこと)も、我が国固有の風土や考え方と合一した育児の考えを醸成したこととも、その軌を一にするものといえるかも知れません。


※後記
ちなみに、私事ながら本日「憲法記念日」は【ken(憲)】の誕生日となります。家族をはじめ周囲の皆様に感謝したいと思います。有難うございます。

【ken】