2017.02.21

書を携えて・・・。その5 梅花編

スポーツ健康科学部が位置する滋賀県草津市は、朝から雪が舞い、春の訪れを感じていたところで季節がまた真冬へと戻ってしまったようです。そんななかでも、木花はもう春の訪れを敏感に感じ取っているようで、梅は堅かった蕾を徐々に開き、雪帽子を被りながらも開花し、上品な香りを漂わせています。


今回は、いま話題となっている森絵都さんの「みかづき」(2016, 集英社)を読了しましたので紹介したいと思います。
もう読まれた方も多いかと思いますが、昭和から平成という時代を切り取り、教育なかでも学習塾を舞台として主人公一家三代に渡る人生を描いた長編小説です。森絵都さんの著作は、飛び込み競技を描いた「DIVE!!」等の青春小説の印象が強かったのですが、今回の作品では、学習塾を舞台として、塾と学校教育との関係性に主人公らが翻弄されていく様子が、丁寧に描かれており、これまでの森さんの作風への印象が大きく変えられました。理想の教育という、「だれしも語ることができるが、もっとも難しい問題」に、切り込んだ本作は非常に面白く、また新しい教育の未来への展望を示唆する最後は、読むものに希望の光を指し示します。教育に携わる人以外にも様々な考える機会を提供する良書であると思います。


「教育は国家百年の大計」だとよく言われ、国の基礎を担う最重要課題であることは、誰も疑うところではありません。そんな教育の方針を示す「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案」が、文部科学省より示されました。
これらの教育要領、学習指導要領は、戦後の我が国の教育の方針を概ね10年に一度のペースで改訂を行い、一貫して不変(普遍)な教育の原則の確認とともに、激動の社会情勢にマッチしたものへと適宜改変されてきました。そして、また前回の改訂(平成20年)よりおよそ10年を迎えるなか、新しい要領案が提示されました。

今回の要領の改訂では、よく聞かれる「アクティブ・ラーニング」という用語こそ書き入れなかったものの、「主体的・対話的で深い学び」を児童・生徒へもたらすことが大きな柱になっています。さらに伝統・伝承の継承や道徳の重視、体験活動の重視、外国語教育の充実、プログラミング教育の推進なども明示されています。また、スポーツや健康の観点からは、体育・健康に関する指導の充実による豊かな心や健やかな体の育成、部活動の適正な運用、オリンピック・パラリンピック教育の推進が入るなど、2020年(平成32年)開催予定の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、これを重視する姿勢が示されています。

現在、これらの幼稚園教育要領案、小中学習指導要領案について、文部科学省では広く国民の意見を募るパブリックコメントの募集(意見公募)が行われています(平成29年2月14日~平成29年3月15日)。
ぜひこれらの百年の大計となる教育の方針案に目を通し、あらゆる視点からこれを見極め、周りの人と意見を交換し、より建設的な意見を届けたいものです。




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