2017.03.07

子供の遊びを豊かに

紀貫之が「春霞 たなびきにけり 久方の 月の桂も 花や咲くらむ」(後撰集18)と詠んだ春の月は、秋とは違った趣があり、春の霞におぼろになった様子は、またよいものです。草津市も少し霞がかかっており、昼間でも遠景がおぼろとなっております。


今回は、現在私の研究室のゼミの学生が取り組んでいるプロジェクトを紹介したいと思います。
その内容はタイトルにもしましたが、「児童の運動遊びを豊かにする!」として、小学校の休み時間(長休みや昼休み)に、大学生が小学校を訪問し、スポーツ健康科学部でこれまで学んできたトレーニングやコーチングの知識や実践力を活かして小学生にさまざまな運動遊びを教えることで、外遊びをする児童の数や、運動遊びのバリエーションを増やすことを目的としています。

今週は、そうした成果を検証するために、まずは、現在の小学生児童が、昼休みにどのような遊びを行なっているのかを、事前の調査に出かけております。あらかじめ大学近隣の小学校に連絡を取った上で主旨を説明し、学校長の許可をいただいた上で、対象校の児童の1週間の昼休み校庭で行われている運動遊びを調査しています。

具体的な調査項目は
  • 運動遊びに校庭に出てきている人数
  • 運動遊びの種類・内容
  • 校庭の滞留時間
としており、ビデオを複数台設置し、休み時間に校庭で遊んでいる児童をじっと撮影しながも、適宜人数をカウントしたり、メモをとりながら、調査しています。



その結果は、現在集計・分析中ではありますが、
運動遊びの種類・内容をみてみますと、ドッチボール、サッカー、縄跳びが圧倒的に多く、そのほかの遊びは、少人数の児童が、固定遊具を用いた滑り台、ブランコ、ジャングルジムなどで遊んでいる程度で、校庭で遊ぶ児童の遊びの内容は、バリエーションに欠けるものでした。たとえば、あんたがたどこさ等の伝承遊びはほとんどみられないようでした。

次年度には、実際に大学生が昼休みに小学校を訪問し、伝承遊びを含めたさまざまな運動遊びを提供することとなっております。
この介入により、児童の遊びがどのように変化するのでしょうか?
また、この介入の効果が児童の運動に対する有能感、さらには体力・運動能力にも影響を及ぼすのでしょうか?
大変興味深いところです。

今後のゼミ学生の頑張りに大いに期待したいと思います。


※追記
「人間と遊び」を考える際に、是非とも読んでおきたい文献としては、やはり「ホモ・ルーデンス」(Huizinga,1938)を挙げる必要があります。オランダの歴史学者であったホイジンガは、人類の歴史をひもときながらもあらゆる文化および文化的装置に「遊び」が深く関連している様子を圧倒的な博識と、円熟した筆致で展開して、人間存在の根源的な様態として「遊び」を位置付けました。そして「すべては遊びなり」という結語で本書は締めくくられます。校庭で遊ぶ子供たちが我々に指し示してくれるのは、我々人間に必要なすべての根源的なものかもしれません。それを見つめる学生らがなにをどう受け取り、どう語ってくれるのか、大変楽しみです。


「ホモ・ルーデンス」ホイジンガ著, 高橋英夫訳, 中公文庫





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