2018.05.06

低酸素実験室を用いた研究

GWもいよいよ最終日です。私は木曜日からGWに入りましたが連日の様々なイベント(遊び)で走り回っていることで全身が筋痛で、明日から仕事に復帰できるのか??と不安になってきました(笑)。運動後の疲労回復促進(リカバリー法)に関する研究をやっているのですが、実生活には十分に活かせておりません。

さて、本日は研究に関するトピックです。写真はインテグレーションコア3Fにある「低酸素実験室」を室外から撮影したものです。この実験室は特殊で、室内の酸素濃度を調節することが可能です。たとえば、私達が普段過ごしている環境は空気の中の約20.9%が酸素ですが、低酸素実験室では酸素濃度を14.5%にまで減らすこともできるのです。これは標高3000mに相当する酸素の量で、この環境の中で運動・トレーニングを行うことで身体に対してどういった(良い)影響があるのかを研究しています。「低酸素トレーニング」というと、マラソン選手のような長距離種目選手への活用をイメージされる方が多いですが、スポ健で取り組んでいる研究では球技種目選手や陸上の短距離種目選手など、短時間でのパワーやスピードが必要となる選手に対する効果にも焦点をあてています。国立スポーツ科学センター(JISS)とも連携をして研究を進めているのですが、「陸上の100m種目の選手が低酸素トレーニングを導入!!」こういった取り組みがニュースで報道される日は遠くないかもしれません。



さて、この「低酸素実験室」は「人工気象室」としての機能も備えており、室内の温度や湿度を変化させることも可能です。したがって、室温35℃の暑い(暑熱)環境や12℃の寒い(寒冷)環境を設定することもできるのです。多くの研究では室温23℃付近の「快適(通常温)」な環境で運動を実施した際の生理応答を検討します。しかし、実際のスポーツ競技は真夏や真冬にレースが行われることもあり、そのような過酷な環境でいかにして良い運動パフォーマンスを発揮するのか??というのはきわめて重要な視点です。また、夏に開催される東京オリンピックを控え、暑い環境でも優れたパフォーマンスを発揮するためのスポーツ生理学研究がここ数年間で盛んに行われています。「夏に強い選手」を増やすための研究ですが、その第一歩として「暑い環境での運動時に身体で起こる現象」を明らかにしなければなりません(それによって暑熱対策を提案することが可能となります)。このような背景もあり、現在は「暑熱環境での運動」を用いた研究にも積極的に取り組んでいます。さらに昨年からは、「低酸素環境」と「暑熱環境」を組み合わせた「暑熱・低酸素環境」を用いた研究も始まりました。まだ馴染みのない研究ですが、今年開催の学会で初めてデータを紹介することができそうです。





大活躍の「低酸素実験室」、連休中の使用予定はありませんが明日からは再び実験の毎日でフル回転となります。なお、低酸素実験室での研究の内容は8/4-5のオープンキャンパスでも紹介します。施設見学もありますので、興味・関心のある高校生の皆さんはぜひ遊びに来て下さいね(私は模擬講義を担当します)。