2019.01.15

それぞれの道

先週は、卒業生が二人、来訪してくれました。
今日は、そのうちの一人のお話を。

昨年3月に一年遅れで卒業した、中・長距離ランナーの男性で、今は、高野山で僧侶になるべく修行中です。山を下りたときに連絡をくれます。今回は、授業の合間に教室に会いに来てくれました。
修行僧の話しを生で聞く機会は、めったにないと思い、下界とは異なる生活にどのように「アダプト」しているのかを学生にも聞いてほしいと思い、「アダプテッド・スポーツ論」の受講生に話してもらうことにしました。

起床は朝の4時。掃除をして、ダッシュで部屋に戻り着替える。すぐにお経の時間が数時間。
食事は、ご飯一膳とおかずが一品。肉や魚は食べられない。穏やかに仕えるということから、身体に力がみなぎるものは食べないということのようです。緑黄色野菜もほとんどなく、イモ類が多い。炭水化物&炭水化物で、体重が増量するそうです。粗食なのに太る…ちょっと驚きました。

修行の中には、段階ごとにいくつかの厳しい修行があるそうです。中でも、睡眠2時間で一週間行われる修行では、数名が下山。他の苦行でも何名かずつがリタイアして、60名いた修行僧は43名になっているそうです。

テレビはない。携帯は持ち込めない。必然的にSNSとは無縁。「浦島太郎状態です」と彼。
これらの話しのたびに、受講生の顔は、え~と驚き顔。「無理や~」という小声があちこちで。

受講生から、いくつかの質問がありました。
「煩悩はありますか?」→「最初は、みんなあるんですけど、肉も魚も食べてないんで…」
「山を下りて、肉食べましたか?」→「はい。めいいっぱい。中には、胃が受けつけなくて戻してしまうひともいるのですが、僕は大丈夫でした」
他にもいくつかの質問が出て、約20分の有意義な時間になりました。

彼が修行生活にアダプトするように、多くのスポーツは、既存のルールや道具に人が「アダプト」します。
アダプテッド・スポーツは正反対で、スポーツのルールや道具、環境がそれぞれに「アダプト」します。
こんな違いや障がいや個性など、さまざまなテーマを軸に議論を続けてきた講義の終盤で貴重な時間となりました。受講生は何を感じたのか、明日の授業が楽しみです。

もう一人の卒業生の選択については、次週にしたいと思います。