1975 東京工業大学工学部 卒業 1979 東京工業大学総合理工学研究科生命化学専攻博士後期課程 修了
修士課程を終え某化学会社に勤めている時に、薬害被害にあった方の話を聞くことがありました。薬で救われる一方、被害を受ける方もいるわけで、比較的身近と思っていた化学への見方が変わりました。 人を救える薬の勉強がしてみたいと大学時代の恩師に相談したところ、修士はあるのだから博士課程へ行けと言われ、研究者や博士になりたかったわけではないのですが、生命化学専攻の博士課程で勉強を始めることになりました。 取りあえず与えられた研究課題が、抗生物質の構造解析。右も左もよく分からないままに博士号を得て、そのまま共同研究先だった研究所へ就職しました。後にノーベル賞受賞者となられた先生のもとで、研究者の卵から研究者へ成長したようにも思えます。 もっと面白いことを求め、海洋生物の研究の世界に入ったことがあります。多くの海洋生態学者と交流するうちに、微生物はなぜ生理活性物質を作るか、といった見果てぬ夢に囚われるようになったように思います。
微生物二次代謝産物の研究
微生物がつくる未知の生理活性物質を探索するとともに、微生物がなぜ生理活性物質をつくるかの研究を行っています。
微生物がつくる生理活性物質は、抗生物質や抗ガン剤といった薬として役立っています。 微生物が生理活性物質を作り出す過程には、随分とエネルギーが使われています。微生物は、何も人間のために薬を作っている訳ではないはずで、彼らは多くのエネルギーを使って、おそらく生存競争を生き延びるために物質をつくり、それがたまたま人間の役に立つことになったのでしょう。微生物の生存競争は肉眼では観察もできず、想像の中でしか存在しないようなものです。微生物が作る産物が、環境中での生存競争で、どう使われているのか、どうやってそんな能力を獲得してきたのか、そんな解き明かすことはできないであろう謎を考えながら、少しでも真相に近づきたいと思っています。 自然界に棲む単細胞の微生物の謎かけに、複雑な多細胞の人間がどこまで迫れるかの挑戦です。
「学び」も「遊び」の一つ
学生時代には、良く遊び、良く学んでください。 「遊んでいる時」は、何かに興味を持って自発的に動いています。さらに言えば、時間を忘れて集中し、終わったときに充実感をもたらすような時間が、「良く遊んだ時間」だと思います。 いろいろな遊びを通して、さまざまな経験、さまざまな場面に遭遇して、ほろ苦い人生経験も積んで、豊かな人間性を身につけてください。「良く学ぶ」には目的意識をしっかり持つことは勿論ですが、一番の早道は学ぶこと自体が楽しめるようになることです。 大学での学びの基本は、『自学自習』です。自分で調べ、自分で理解していくことができれば、そしてそれが楽しめれば、どんな状況でも向上できる人物になれます。 大学時代、多くの知識も身につけなければなりませんが、一番大切なことは「学び」も「遊び」の一つだと気付くことかと思います。