研究室の概要


      今世紀初頭、国際ゲノムプロジェクトがヒトゲノム精密解読終了を宣言し、得られたヒトのゲノム情報は

    インターネットを通して公開されている。 ポストゲノム時代に突入した現在では、高速シーケンサを用いて

    個人のゲノム情報が解析可能となり、その情報をテーラーメイド医療に生かすべく工夫が始まっている。

    
    
     ここで、解読された塩基配列は31億という膨大な数であり、百科事典数十冊分にも相当する量である。こ

     れらの情報から必要なものを抽出し、有意義なものに加工していくには、コンピューターを用いた計算科学

     とin vitro の実験の融合が必須である。

    

     そこで、本研究室では、コンピューターを駆使しながらゲノムやタンパク質の情報を抽出、加工し、生化学

    
    的、薬理学的実験を主としたin vitro での実験を組み合わせ、薬の効果や新しい医農薬の設計を目指す研

    究を行っている。


      現在主たるターゲットとしているのは受容体タンパク質である。生体内では、アミンやペプチド、ヌクレオチド

    といった化学物質が、細胞間の情報伝達物質として作用し、細胞増殖や代謝調節、脳機能などに深くかか

    わっているが、これらの情報伝達物質は、標的細胞の表面にある、それぞれの受容体タンパク質に結合する

    ことで細胞内にシグナルを伝達し、生理現象を引き起こす。しかしながら、ゲノム解析で受容体本体のアミノ

    酸配列は解明されたものの、活性化物質(アゴニスト)が不明なオーファン受容体が存在する。そこで、本研

    究室ではオーファン受容体の内在性アゴニストの探索、およびオーファン受容体を介した情報伝達について

    コンピューター科学や生化学的、薬理学的手法を用いて解明し、新規医薬品の設計やこれら受容体に生じた

    変異が及ぼす影響についての解明ををめざしている。

    


    
back