Introduction of Labolatory of Molecular Medicinal Science

細胞の分化・成熟のプロセスを分子レベルで理解することを目指して。

 生体の機能維持のためには、細胞の「増殖」と「分化」が正常に制御されていなければなりません。受容体型チロシンキナーゼは細胞増殖と分化の両方で重要な役割を果たしていることが知られています。当研究室では糖尿病の発症や肥満に関わる脂肪細胞の分化や機能発現にインスリン受容体下流の情報伝達分子がどのような役割を果たしているかを中心に研究を進めています。

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脂肪細胞の分化

 糖尿病(最近の調査では日本における患者数は予備群を含めると1620万人に達する)などの生活習慣病の多くは肥満と密接な関わりがあるといわれています。本研究室では白色脂肪のモデル系として3T3-L1細胞を用い、遺伝子導入などの技術を駆使して、脂肪細胞の分化のメカニズムを分子レベルで解明することをめざしています。

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細胞内情報伝達におけるタンパク質間相互作用

 細胞表面の受容体が受け取った刺激は細胞内情報伝達系といわれる多くのタンパク質から成るネットワークを介して核などに伝えられていきます。近年、このネットワークにおける「タンパク質間相互作用」の重要性がクローズアップされています。酵母のTwo-Hybrid法を用いて、SH2-Bなどのアダプタータンパク質と他分子との相互作用を解析し、チロシンキナーゼの関わる細胞内情報伝達系の全体像を明らかにすることをめざしています。

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肥満と慢性炎症による糖尿病発症のメカニズム

 肥満に伴い脂肪組織が肥大化すると腫瘍壊死因子や遊離脂肪酸、単球マクロファージ走化性タンパク質 (MCP-1)などの炎症性サイトカインの分泌と共に成熟したマクロファージの浸潤が増加することが報告されています。3T3-L1脂肪細胞とRAW264マクロファージ様細胞の共培養を行い、両細胞間の直接的及び間接的相互作用の下で引き起こされる生化学的な変化を検討して、脂肪組織における炎症が糖尿病をはじめとしたメタボリックシンドロームの病態の進展にどのように関わるのかを明らかにすることをめざしています。