立命館小学校

学ぶは人生

今月の「学校だより」にも書きましたが、先月30日は、元立命館中学校国語教員で、立命館大学の名誉教授、東洋文字文化研究所名誉所長であった白川静(しらかわ・しずか)先生のご命日でした。先生は、2006年10月30日白川文字学の「続文字講話」の著書校正を終えられた最中に96歳でお亡くなりになられました。2006年と言えば、奇しくも立命館小学校開校の年になります。

そして、本校では、「白川文字学」という「漢字の成り立ちとつながりを系統立ててまとめられた漢字体系」を、本校では、楽しく分かる漢字学習方法の一つとして、ここ数年来、教育課程に取り入れています。

 

白川先生は、福井県生まれで九人兄弟の六番目の子でした。家業は洋服屋さんでした。幼少の頃から読書好きで、知的好奇心の強いお子様だったそうです。先生は、小学校を卒業後、大阪へ丁稚奉公に行かれた時も、その先で漢詩と漢文と出会い、14歳の時には、「詩経」と「万葉集」を同時に読み深め、比較研究もされていたそうです。14歳の時に、です。中学2年生ぐらいになるでしょうか。その頃に、日中両国の古文の比較研究をされたことには、本当に驚きます。

また、その時の将来の夢は「中学の国語の先生になること」だったそうです。なぜなら、いつでも本が読める、ということから決めたと伺っています。そして、その後は、立命館中学校の国語の教員から立命館大学の教員になられ、皆様ご存知の通り、「甲骨文字」や「金文」から漢字の成り立ちとつながりをひたすら一途に研究、追究を重ね、東洋文字学を確立されました。常に学び続けたお方であり、学ぶことに没頭されたお方といえるでしょう。

その白川先生には、次の有名な言葉があります。

 

 『知識はすべて疑うことから始まる。

  疑うことがなくては、本当の知識は得がたい。

  疑い始めると、全てが疑問にみえる。

  そして、それを一つずつ解き明かしてゆくところに、知的な世界が生まれる。 』

 

まさに、言い得て妙です。自らが問いを持ち、そして、自分なりの考えを持ちながら、自らがその「解」に向かって歩んでいく。それが、本当に学ぶこと、ということなのでしょう。

その後、白川先生は、有名な『字書三部作』(「字統」・「字訓」・「字通」)を自分のこれまでの研究の集大成としてまとめ上げ、「白川文字学」を確立されました。驚くことに、これは、74歳で決意され「字通」が完成したのが86歳だったと言われています。

ここにも、白川先生の学びの姿勢がずっと最後まで貫き通されたと言えると思います。白川静先生の生き方、それは「学ぶは人生」と言えるものだと思います。

 

本校の児童も、白川先生が教鞭をとっておられた北大路校舎にて学ぶことに誇りと喜びを感じ、そして、この学び方を学び、知的好奇心を持って、前へ前へと学び続けて欲しいと思います。大先輩の白川静先生に学んでまねて、追いかけて

  

 

学校長  長谷川昭