PROJECT REPORT | 解決編

多国籍の多様な考え方から
新しいアイデアが生まれた

教室で講義を聞くだけでなく、フィールドワークを通じて実社会の人と接し、
実社会の課題の解決に取り組むのがこの演習の特徴です。
1年間の研究成果を大学で発表するだけでなく、実際に政策提言にまで結びつけます。

9月〜:ディスカッション調査を踏まえて提案をまとめる

9月以降は、フィールドでの調査結果をもとに大学で議論を重ね、調査で明らかになった課題を解決し、茨木市北部地域の活性化を図るための提案をまとめました。

地元農家の方の声
  • 農家の高齢化と農業人口の減少が大きな問題
  • 労働力不足を解決するため、アルバイトで学生を雇用してはどうかという学生の提案に対しては、経済的な理由に加えて、先祖代々受け継がれる家族経営的な農業形態が企業のような雇用関係に馴染まないといった理由からも積極的ではない
  • 長期にわたって持続的に農業を手伝ってくれる学生を求めている
  • 地震や台風などの自然災害で被った損害の補償も課題
  • 農地だけでなく周辺の山野のメンテナンスに対しても支援が必要
茨木市職員の声
  • 茨木市の農家の高齢化と農業人口の減少が大きな問題
  • 労働力不足に対し、アルバイトで学生を雇用することは経済的な理由で難しい
  • ボランティアで農業を手伝う学生が必要だが、それでも交通手段や交通費の確保などの課題が残る
「見山の郷」訪問者の声
  • 茨木市の農業人口が不足している問題を知らない
  • 農業は天候などに左右されるため安定して収入を得ることが難しい
  • 自分も農家だが、農業の大変さを知っているので、子どもに後を継いでほしいとは言えない

提案の一つ目は、「農業に興味を持っている学生がボランティアとして農業に携わることができる仕組みを大学につくること」。クラブやサークル活動にすることで、農家の方々が心配するような一時的な取り組みに終わらず、持続的なサポートが可能になると提案しました。

二つ目には、アンケート調査で立命館大学生のほとんどが泉原地区の農業について知らない現状が明らかになったことから、まず農業に関心を持つ学生を増やすために、「農業をめぐるさまざまな問題を学ぶことのできる授業を大学につくること」も提案に盛り込みました。

語でのディスカッションについていくのは大変でしたが、留学生と研究についてだけでなくお互いについてさまざまなことを語り合い、友達になれたことがよかったです。

菊池 優芽さん
(日本)

れぞれ異なるテーマに関心を持っているメンバーの意見をまとめ、研究目的を一つにするために、先輩としてサポートしました。2回生の時に自分自身が調査した時の経験を生かしてアドバイスしました。

ARORA Snehaさん
(インド)

11月:プレゼンテーション農家、市職員の方にもアイデアを提言

11月、研究成果をポスターにまとめた「ポスター・セッション(現プレゼン・セッション)」では、英語でプレゼンテーションを行いました。さらに12月、「農業体験ファーム事業」が終了する日、農家の方々や茨木市職員の方々の前でも調査結果と提案を英語と日本語で発表。農家の方からは「学生が茨木市北部の自然の豊かさや人の優しさについて話してくれて、涙が出そうになった」、また茨木市職員の方からは「提案について市でも検討したいと思います」といった声が聞かれました。

何度も現地に足を運んで地元農家の方々や茨木市職員の方々とコミュニケーションをとり、確かな信頼関係を築いたからこそ、現実の政策提言につながるような実効性のある提案を導き出すことができました。1月下旬、英語で「研究報告書」を提出し、プロジェクトは終了。1年間の経験が、それぞれの学生にとって3回生での研究につながる大きな糧になりました。

スターや研究報告書を作成するにあたっては、アカデミックな英語で論述するのが難しかったです。文法や表現方法など、先輩からたくさんアドバイスをもらいました。

QIAO Yuqiさん

QIAO Yuqiさん
(中国)

によって文化的な背景も価値観も多種多様。皆とのディスカッションを通して多様な考え方や新しいアイデアを学ぶことができました。

LU Zijingさん

LU Zijingさん
(中国)

フィールド調査だからこそ学べること

教室での学びや文献調査と違って、フィールド調査は思うようにいかないことが多く、苦労の連続です。しかし、だからこそ学べることがたくさんあります。

今、日本の多くの大学がグローバル化を掲げ、たくさんの留学生が学んでいます。一方、留学の醍醐味は、大学の授業で言語や理論について学ぶことだけでなく、実際にそこに暮らす人々と交流し、その地域の文化や歴史を学ぶことにもあると思います。実際にフィールドに出て行政や地域の方と連携することで、農業人口の減少など、実際の社会問題の解決法を追求することができます。問題解決型の学習ができることこそフィールド調査の魅力です。

このプロジェクトでは、日本に来てから半年しか経っていないような留学生が、日本人学生と協働しながら、地域の農家への聞き取り、農作業への参加、市役所の職員との意見交換会の開催など様々な取り組みをして、最終的には政策提言を含む研究発表をしてくれました。また、留学生の多くは「大学で勉強するだけでは地域の市民と接することは全くないため、この授業で初めて日本の一般の方、家族、子供たちと交流でき、本当の日本を理解することができた」と話していました。

この一年間で学生が成し遂げたことは、まさにCRPSプログラム、政策科学部、そして立命館大学の可能性を示していると思います。

留学生、日本人学生を問わず、学生たちは、大学を超えて社会に生きる人々と触れ合うことで、リサーチスキルを身につけるだけでなく、人として大きく成長したのではないかと思います。

桜井 良 准教授
桜井 良 准教授