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2013年のニュース

2013.01.23

?id=29前原元外相・国交相、ガジャマダ大学学長、タマサート大学副学長を招いて、世界展開力強化事業キックオフカンファレンスを開催しました

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2013.12.25

政策科学部における一年間の研究成果を発表するアカデミック・フェスタの開催

政策科学部では各回生の優秀者が一同に会して一年間の研究成果を発表するアカデミック・フェスタを毎年12月におこなっています。今年度は、12月20日(金)に以学館1号ホールで開催されました。この研究発表会は、3・4回生ゼミである専門演習における優秀者が発表を競い合うPS Exposition(Policy Science Exposition) 本選と1回生ゼミである基礎演習、英語基準の1回生ゼミであるIntroduction to Academic Research、2回生ゼミである研究入門フォーラムの最優秀賞受賞者による発表から構成されています。

当日は、まずPS Exposition本選からおこなわれました。今年度は6組が、各ゼミで実施される第1次予選(~11月15日)、各ゼミ代表者が公共政策系分科会、環境開発系分科会、社会マネジメント系分科会に分かれて競い合う第2次予選(12月10日)を経て出場しました。

今年度の本選出場者の研究テーマは、タイムリーというより、日本が長期に渡って抱える課題を多角的な視野から分析した研究テーマ、次世代を担う当事者として未来志向的な方策を考察した研究テーマを設定する出場者が目立ちました。これは政策科学部の学際的な特色をよく表しています。そのなかで優勝したのは、「京都市における袋路の実態と経年変化」という研究テーマで発表したグループです。建造物の老朽化が進む袋路の現状と変化を既存のデータやフィールド調査を通して特性別に整理・評価し、袋路環境改善のための政策を考察した研究で、グループワークならではの成果が表れていました。

準優勝者の研究テーマは「国からの地方公務員給与削減要請に対する地方の対応の検証」です。地方公共団体の政策行動を給与削減要請に対する異なる対応から要因分析した意欲的な研究です。さらに、「植物工場普及における我が国の政策の在り方と方向性 -国際的競争力の確保に向けて-」「日中関係の改善に向けての青少年交流事業の強化について -独仏青少年事務所の事例から-」「持続可能な創造都市 -飯田モデルの意義と展開-」「京都府におけるサービス付き高齢者向け住宅の調査」と続きました。

次に1・2回生の最優秀賞受賞者による発表がおこなわれました。1回生の基礎演習リサーチ・プロポーザル・コンペティション最優秀賞受賞者の発表は「カンボジアにおける社会関係資本に基づく教育推進機関導入の実現可能性」で、今後のフィールド調査につなげることでより高い研究成果を期待できそうな研究です。また、政策科学部では英語基準のCRPS専攻(Community and Regional Policy Studies Major)がこの9月より開設されましたが、1回生ゼミであるIntroduction to Academic ResearchのResearch Proposal Competition最優秀賞受賞者は “Internationalization of Japanese Corporations”という研究テーマで発表しました。発表・質疑応答はすべて英語でおこなわれ、会場は日英両言語による研究発表が以前から当たり前だったような空気に包まれました。最後に、2回生の研究入門フォーラム最優秀プロジェクトが、グループワーク、フィールドワークを最大限に活かして商店街の衰退原因を分析した「龍安寺参道商店街の活性化にむけて」と題する発表をおこないました。

アカデミック・フェスタは今回で9回目ですが、企画・運営は学生スタッフによっておこなわれています。これもまた政策科学部の実践による学びの一環といえるでしょう。閉会後には、学年を超えた交流を通じて自分の学びを客観視し、新たな知見を得ることの大切さに気付いたという参加者からの感想もありました。

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2013.12.25

研究入門フォーラム二次選考会を開催しました

2013年12月13日(金)、政策科学部2回生の小集団演習科目「研究入門フォーラム」の2次選考会を以学館1号ホールにて開催しました。「研究入門フォーラム」は、7~13名程度の学生メンバーからなる研究プロジェクトを編成し、各プロジェクトがテーマを設定して1年間にわたって文献調査やフィールドワークなどを通して研究を深化させていく科目です。2次選考会では、11月15日(金)の中間発表会で選出された以下の5つのプロジェクトが教員のコメント等を参考にさらに研究を進展させ、プレゼンテーションソフトを用いて口頭発表を行いました(「 」内は発表テーマを示します)。

・ベトナムプロジェクト「ベトナムの金融システムにおける政策トレードオフ~持続的経済発展を目指して~」
・報道研究プロジェクト「報道被害防止施策の在り方の検討~日本のBPOとスウェーデンの報道評議会の比較を通して~」
・マーケティングプロジェクト「効果的なブログマーケティング戦略案の模索~アクセス解析ツールを用いて~」
・高齢者福祉プロジェクト「地域コミュニティにおける認知症ケア~地域包括支援センターの役割に注目して~」
・竜安寺参道商店街プロジェクト「龍安寺参道商店街の活性化に向けて」

5つのプロジェクトの発表と質疑応答が行われ、教員による厳正な審査の結果、衣笠キャンパスに近い竜安寺参道商店街の活性化をテーマとして、現地でのヒアリング調査や学生へのアンケート調査、国勢調査などのデータ分析を通じて研究した「竜安寺参道商店街プロジェクト」が最優秀プロジェクトに選出されました。

選に漏れたプロジェクトもいずれも完成度の高い発表でした。「報道研究プロジェクト」で発表した臼杵大地さんは「研究入門フォーラムを通じて、これまでしてきた勉強と、仮説を立て検証して未解決の問題を解き明かしていくという研究の違いがわかった。最初はプロジェクトがまとまらず挫けそうになることもあったが、メンバーの個性が刺激になって発想の幅が広がり次第にプロジェクトが一つにまとまって、グループワークや仲間の大切さを学ぶこともできた。この1年を通じて学んだことを来年入るゼミ(専門演習)に活かして、1回生の時から目標だったアカデミックフェスタに出場したい」と述べました。フロアで熱心に発表を聴いていた学生たちからは、発表の優れた点や至らなかった点を参考にして自分たちの研究を進めていきたいという感想も聞かれました。

最優秀プロジェクトに選出された竜安寺参道商店街プロジェクトは、12月20日(金)に開催された政策科学部アカデミックフェスタにおいて、2回生代表として発表を行いました。

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2013.12.25

基礎演習リサーチプロポーザルコンペティションを開催しました

政策科学部では、学年ごとの小集団クラスをコア科目と位置付けています。1回生では「基礎演習」がコア科目です。政策科学部政策科学科政策科学専攻は、政策科学に関する科目を教授し、問題解決指向的な精神を備え、政策実践力と政策構想力を持った人材を育成することを目的とします。基礎演習では、前期後期通して様々な政策課題や政策争点について、新聞記事や論文、レポートなどからリサーチしたことをもとにディベートや意見交換、ディスカッションをします。その中で批判的思考や多角的視野、論理的思考、プレゼンテーション能力や文章構成力を育み2回生の研究入門フォーラムに繋げていくことを目標としています。

今回発表してもらったリサーチプロポーザルは1回生の学びにおける集大成であり2回生の集団コア科目「研究入門フォーラム」へと直接繋がり自分が行きたい分野のフォーラムに関する、研究計画書を書いてみるという課題です。1年間の基礎演習の間に2回のライティング課題に取り組み、基礎演習担当の教員や院生のティーチングアシスタントにより丁寧に添削され論理性、文章論述能力を鍛えることが出来ます。

リサーチプロポーザル(研究計画書)では、まず「研究タイトル」、そして研究の問題点や意義を記述する研究概要を書きます。リサーチプロポーザルでは、偏った政策研究、政策提案ではなく政策科学部の基本の三本柱である批判的思考や多角的視野、論理的思考を重視した研究が求められます。「先行研究」では類似、関連した論文、レポートからどこまで自分がしようと考えている研究が他者によって進められているかなどを整理、把握しこれからの研究の参考にします。またその際に参考にした文献、資料には「参考文献」が求められます。また外国語能力向上のために、外国語の「研究タイトル」及び「研究の概要」も必要とされています。

今回行ったリサーチプロポーザルコンペティションでは各基礎演習12クラスで予選を行い、クラス代表を決めました。評価の基準は(1)研究タイトル・概要:研究課題および研究目的の明確さ(10点満点)、(2)先行研究:先行研究の調査分析を主とする事前調査(10点満点)、(3)プレゼンテーション:発表態度、質問対応などプレゼンテーションスキル(5点満点)、の合計25点満点で競われます。担当教員以外の教員11名から採点され、今回1位はAクラスの三浦なつきさんが選ばれました。「カンボジアにおける社会関係資本に基づく教育推進機関導入の実現可能性」というテーマで非常に完成度の高いリサーチプロポーザルでした。どのプロポーザルも良く出来ていて1回生の質の高さを感じました。なお優勝者の三浦さんは12月20日に開催された政策科学部アカデミックフェスタにおいて、1回生代表として発表を行いました。

運営は政策科学部学生委員会のスタッフと各クラスから1名運営委員を選出してもらいました(文:学生学会委員小沢賢太郎)

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2013.12.18

第9回 京都から発信する政策研究交流大会

2013年12月1日(日)、キャンパスプラザ京都において、第9回京都から発信する政策研究交流大会が開催され、政策科学部・研究科の学生が「大学コンソーシアム京都理事長賞」(2回生川上萌仁香さん他)、「日本公共政策学会賞」(2回生久米由香子さん他・大学院生林祥偉さん)をはじめ各賞を受賞しました。

この大会は、都市の抱える問題・課題を見つけ、それを解決するための「都市政策」を学ぶ京都の大学生・大学院生の研究交流・発表の場として大学コンソーシアム京都が主催して開催されました。

今年度は、口頭発表部門において51組、パネル発表部門において11組の発表が行われ、本学からはそれぞれ12組、7組が出場しました。

当日は、学生の研究発表に加えて、学生実行委員ら(本学3回生桑原佳佑さん・千田繁利さんを含む)による「創る都、創れば都」企画も開催され、地方都市活性化についての講演会やグループ・ディスカッションも行われました。

多くの来場者に恵まれ、本学の学生の他、他大学の学生、行政、市民の方々による賑やかな交流会となりました。

受賞内容
(受賞者名は研究代表者のみ)
○大学コンソーシアム京都理事長賞
「龍安寺参道商店街プロジェクト」2回生 川上萌仁香他(研究入門フォーラム)

○日本公共政策学会賞
「TMOによる中心市街地活性化法~飯田市を事例に~」2回生 久米由香子他(研究入門フォーラム)
「先進国と新興国の幸福感及び影響要因に関する研究―日中両国国民の生活実感調査を通じて―」大学院生 林祥偉

○優秀賞
「介護ロボット産業の政策的取り組みの課題と今後の方向性―経済分析によって得られる新たな視座―」3回生 安田あずさ(石川ゼミ)
「都市のスマート化と電力システム改革の課題の検証―持続可能なCEMSの構築と事業化―」3回生 松本薫(小杉ゼミ)
「京都MICEの誘致に向けて―香港の事例より―」3回生 武市明莉(上久保ゼミ)
「2010年尖閣諸島沖漁船衝突事件をめぐる政策決定過程―揺れる民主党政権と対中外交―」3回生 本田純一(宮脇ゼミ)
「社会と個人の時間を考える時間政策によるまちづくり―今後の日本における個人の時間とコミュニティの再構築―」4回生 多田楓(高村ゼミ)

○ベスト質問賞
藤井望美 王鳳陽


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2013.11.27

留学生と日本の学生が共に学ぶCross-Border Policy Issues

英語で開講されているCRPS (Community and Regional Policy Studies)専攻の学生と日本語で開講されている政策科学専攻の学生が一緒に授業でグループワークを行うCross-Border Policy Issues という科目が上久保誠人准教授の指導で開かれています。

この授業は、留学生と日本の学生が参加し、英語と日本語の二言語を用いて日本の社会、文化、歴史、政治に関するトピックについて調査し議論する科目です。受講生のセミナーやコミュニケーションは英語で行われています。多様な価値観や文化を持つ受講者による建設的な議論を行うため、このクラスでは留学生と日本人学生混成のグループワークが組織されています。



この科目では、留学生と日本の学生が相互に考え方の特徴を学ぶことが目標とされています。多様な価値観を知り、グローバル社会についての理解を深めるとともに、日本社会、文化、歴史、政治への関心を高めることが期待されます。

11月29日の授業では、戦後の日本の政治システムの変遷を4つのグループが発表しました。学生の司会によりプレゼンテーションは進行し、CRPS生と政策科学専攻生が一緒のグループで発表しました。与党はなぜ長期にわたって政権を維持できたのか、なぜ1990年代に多党化がすすんだのか、官僚は議員に対して強い影響力をもっていた要因は何か、といったテーマをめぐって活発な議論が繰り広げられ、日本政治を対象として共通の議論の土壌が形成されました。

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2013.11.22

?id=22文部科学省「平成25年度大学の世界展開力強化事業」に立命館大学「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」が採択されました

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2013.11.20

?id=21政策科学部の問題解決型学習(PBL)「研究入門フォーラム」の中間発表会を実施~2回生が自主的に課題を設定し、実践を通じて課題の本質を探り、解決策を提言する~

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2013.11.08

立命館大学政策科学部開学20周年記念式典を挙行しました。

2013年11月4日(月・祝)、衣笠キャンパス創思館カンファレンスルームで行われた記念式典は、在学生、同窓生、教員など約100名の列席のもとに行われました。
 
記念式典では、校歌斉唱の後、政策科学部同窓会「洋洋会」の新井弘徳会長(1期生)より開会の挨拶が行われました。挨拶では、開学当時の政策科学部を振り返り、最先端のコミュニケーションツールの活用や阪神・淡路大震災における学生主体のボランティア活動などの先進的な取り組みを挙げ、20年間で5,800人を超える卒業生を輩出してきたことに触れながら、同窓生の交流活動の充実とそれを通じた政策科学部のさらなる発展への期待が述べられました。

 
挨拶の後、重森臣広政策科学部長(第11代)が「政策科学部の教育理念とポリシー」と題して式辞を述べました。式辞では、まず政策科学部が開学した1994年度の社会の出来事を回顧し、それから20年間の社会の変化にカリキュラム改革や国際化の取り組みなどを通じて対応しながら、5,855名の学士課程卒業生、504名の博士課程前期課程修了生、54名の博士課程後期課程修了生を送り出し、また78名の専任教員が所属してきたことを述べました。そして「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」という中央教育審議会答申に触れ、模範解答のない問題の解決を学問する政策科学部の掲げてきた教育理念とポリシーが時代に先駆けていたことを述べ、政策科学部は2015年開設の大阪いばらきキャンパスへの移転を機会としてさらに新たなステップを踏み出すことが語られました。
 
式辞の後、来賓で第6代政策科学部長の川口清史立命館大学学長より祝辞が述べられました。祝辞では、政策科学部が立命館大学の長期計画の中で社系学部のあり方を問いなおす野心をもって開学し、基礎演習や研究入門フォーラムといった小集団演習科目を通じて取り組んできた、「教わる」ばかりでなく「自ら学ぶ」教育への質の転換が、現在では全学に、さらには日本全体に広がりつつあることに触れ、これまでの実践を裏付けとして、大阪いばらきキャンパスへの移転を新しいステップとすることへの期待が語られました。

 
続いて、来賓で第3代政策科学部長の石見利勝姫路市長より祝辞が述べられました。祝辞では、政策科学部での9年間の在職時代を回想して、学生が非常に活発で教育を意気に感じ、また学部長を務めては教職員に盛り立てられた充実した教員生活だったと振り返り、在学生に対して、センサーの感度を高め、アンテナを高くして学生生活を送ってほしいと激励されました。
 
祝辞の後、山田順一初代政策科学部事務長からの祝電が読み上げられ、同窓生と教員の記念写真の撮影が行われました。


小休憩を挟み、「政策科学の20年と、今後への期待」と題した記念対談が行われました。記念対談は、川口清史立命館大学学長、石見利勝姫路市長、同窓生代表として谷内博史七尾市まちづくりコーディネーター(1期生)を迎え、佐藤満政策科学部教授を進行役として行われました。対談では、石見市長が姫路市長としての実際のまちづくりの工夫を紹介し、川口学長とともに、そのような現実の問題の解決に関わることのできる研究と人材の育成を目指す政策科学部の開学以来の理念について語らいました。谷内さんは熱気に満ちあふれた開学当時の政策科学部の様子を振り返りながら、決して正解があるわけではない問題の解決を模索する政策科学部での学びが、まちづくりコーディネーターとして市民と行政の間に立つかたちでの実践につながっていることが語られました。

対談の後は、フロアとの質疑応答が同窓生や重森臣広政策科学部長をまじえて活発に行われました。最後に対談者からそれぞれ在学生と同窓生に向けて激励のメッセージが述べられ、川口学長が政策科学部第2の創業となる大阪いばらきキャンパスへの移転事業への応援を要請して締めくくりました。


在学生と教員の記念写真撮影の後、中川記念会館レストラン「カルム」へ移動して祝賀会が催されました。祝賀会は、在学生、同窓生、教員が入りまじり、和やかな雰囲気で行われました。
 
(写真提供:立命館大学新聞社ほか)

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2013.11.05

豊田准教授が日本地域学会 田中啓一賞(博士論文賞) を受賞しました

政策科学部の豊田准教授が日本地域学会  田中啓一賞(博士論文賞)  を受賞しました。
受賞についてのインタビューです。


聞き手)受賞おめでとうございます。どのような研究をなされたのでしょうか。


豊田)人口流動期における都市部のコミュニティ避難計画に関する研究です。

聞き手)人口が流動する時代とはどのような時代なのでしょうか。

豊田)日本は人口減少に伴う都市部における人口流動期にあり、災害の世紀と呼ばれている21世紀において、更なる猛威が予測されている自然災害に対処する方策が求められています。そこで博士論文では、このような予想されるリスクを軽減し、大震災からの生存確率を高めるための地域コミュニティにおけるコミュニティ避難計画モデルを構築しました。

聞き手)人口が減っている地域コミュニティに固有の防災の課題はどのようなものですか。

豊田)まず、これまでの大震災時の地域コミュニティにおける安全な避難の教訓を整理して、地域コミュニティのより安全な避難のために、防災まちづくりの手法が着目されているものの、防災まちづくりには社会関係資本(住民の地域との関わり〔信頼、規範、ネットワークなど〕)が重要です。一方、都市は定常状態にあるのではなく、常に変動しています。今回受賞した博士論文では、特に、人口減少や少子高齢化という社会変化に伴う今後の都市変容の有力なコンセプトである都市のコンパクト化に焦点を当て、コンパクト化に必然的に伴う人口流動によって社会関係資本が希薄な新住民の割合が都市部において多くなることを大規模調査データより予測しました。これは先に述べた防災まちづくりにとって深刻な課題となります。

聞き手)防災を意識したまちづくりでは、どのように避難計画を立てれば良いのでしょうか。

豊田)私は「コミュニティ避難計画モデル」を提案しました。このモデルは先ほど問題視した社会関係資本の醸成を前提としておらず、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを援用した「コミュニティ避難システム」の「構築」、「(事前)評価(アセスメント)」、そして「補完」という三段階から構成されています。そして、将来予測される都市と共通の特徴をもっているという共通性、防災まちづくりの効果を測定しやすいという優位性から、本モデルを検証するための対象地域として、地震リスクが存在する地区を設定しました。
まず「コミュニティ避難計画モデル」の第一段階に基づき住民参加型防災(避難)マップづくり、および作成したマップの不参加住民への配布によって、「コミュニティ避難システム」の構築と有効範囲の拡大を検証しました。ここでは「コミュニティ避難システム」の構築を確認するとともに、避難場所に集まり安否確認や救出・救護活動、消火活動などの支援という「コミュニティ避難システム」が有効に作動できるような情報に関する認知の、不参加者への拡大を一定程度は達成できることを示しました。そして、「コミュニティ避難計画モデル」の第二段階「システム評価」と第三段階「システム補完」の検討を行いました。「コミュニティ避難システム」の評価手法として、コミュニティ避難システムの再現性と安全性、そして失敗を含む学習モデルから、ゲーミング・シミュレーションが評価手法として有効なことを理論的に論じ、開発した「避難シミュレーション訓練」を当該地区において実施し、各町内の住民名簿作成および避難場所の追加というリスク対策の決定と実施(リスク・マネジメント)を行える(踏み切る事ができる)ことを示すことに成功しました。

聞き手)コミュニティの避難モデルを作成することが重要であることが分かりました。

豊田)このようにこの研究は、都市中心部において社会関係資本が希薄な新住民が増加し、避難時共助(住民間の助け合い)の発現機会の低下という脆弱性の増大期に入りつつある日本において、避難時共助の発現機会を増加させ、震災後避難時における生存確率を向上することが期待できる介入可能な行動体系によって構成される「コミュニティ避難計画モデル」を設計し、その有効性を明らかにしました。
この研究では地域住民のみを対象にしているため、今後は「コミュニティ避難計画モデル」を進化させて、行政やNGO、大学など多主体による防災まちづくりを促進するための方策を検討していきたいと考えています。


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