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総合心理学部
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2017.5.11 up

モチベーションとどう付き合うか?

髙橋 潔

勝って感涙にむせび、負けて悔し涙を流す。スポーツは、試合結果に心が大きく揺るがされる純粋な世界です。しかし面白いことに、試合が始まる前に涙するスポーツもあります。

2015年ラグビーW杯イングランド大会。アメリカ戦キックオフ前のロッカールームで、日本代表ヘッドコーチのエディ・ジョーンズは涙を見せながら、「プライドをもってしっかり戦おう!」と話しました。それにつられて堀江翔太副キャプテンも涙ぐみました。なぜラグビーでは、試合が始まる前に涙するのでしょうか?
ラグビーという競技は肉弾戦なので、激しいタックルを受けて気を失ったり、死にそうな目に遭ったりすることがあります。身をもって危険を感じている選手は、試合に対する恐怖や不安を、泣くことによって晴らそうとします。すると気分が落ち着いて、試合で楽に動けるようになるというのです。つまり、泣くことで試合に対するモチベーションを高めているのです。

モチベーションの語源は、「動くこと」を意味するラテン語「モベーレ」です。泣いたり笑ったりして感情をあらわにし、気持ちを動かすことで、心と体の両方が動けるようになる。反対に、いつもまわりにいい顔をして自分の感情を押し殺していると、やがて気持ちがダウンして、なにをするのもおっくう(バーンアウト)になってしまいます。

内発と外発の2つのモチベーション

エコノミストは、人をやる気にさせるのはお金だと考えます。お金は誰にとっても大事だから、あながちウソでもないでしょう。しかし、ベストセラー作家のダニエル・ピンクは、「21世紀の働き方は、お金で動かされる筋合いのものではない」といいます。成長・知的好奇心・社会貢献など、内面から湧き出る自発的な動機がお金よりも大切です。この考え方は「モチベーション3.0」と呼ばれています。

『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴,2013)で、「strong」の意味すらわからなかった高校2年生のさやかちゃんを、勉強に向かわせた塾講師の坪田先生。彼のモットーは、「人を見た瞬間に、その人のよいところを20個言えるように」です。
困難に対してやる気を出して取り組んでいくためには、もともと本人の中にもともと好奇心のような内発的な要素がなくてはなりません。しかし、上司や教師や親などが、生徒や部下をよく見ること、生徒や部下をほめること(髪型、服装でもなんでもOK)もまた必要です。本人の成長を思って、アメとムチをうまく使い分け、モチベーションをマネジメントしていくことが大切です。内発と外発のモチベーションのどちらが欠けても、やる気とうまく付き合うことはできないのです。

キーワード
イノベーション
キャリア(1)
組織
モチベーション
リーダーシップ
引用文献
坪田信貴(2013).学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話 アスキー・メディアワークス

文:髙橋 潔

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