MORIOKA Masayoshi

森岡 正芳

森岡 正芳
所属学部
総合心理学部
職位
教授
専門
臨床心理学、人間性心理学
主な担当科目
「発達心理学概論」、「学校カウンセリング論」、「ナラティヴ療法論」
おすすめの書籍
ことばが劈(ひら)かれるとき竹内 敏晴 (著) ちくま文庫

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

私の専門は臨床心理学・人間性心理学です。ナラティヴ(物語;語り)や対話的自己という視点からトラウマのケア、心身相関、家族関係、文化と癒しの問題に取り組んできました。カウンセラーとしてさまざまな学校や適応指導教室に訪問してきました。最近では、母子生活支援センターでの家族と子どもの社会的養護や、犯罪の再発防止に関わる処遇の現場に入っています。

『臨床心理学』『人間性心理学研究』などいくつかの専門誌の編集主幹をしています。これまでに「うつの現在」「スクールカウンセリング」「いじめと学校臨床」「自傷行為」などを編集しました。日本心理学会『心理学ワールド』では、「スピリチュアリティ」「対話」を特集しました。以上からお分かりのように、ナラティヴ、ドラマ、対話といったキーワードで、理論や方法も一見異なる心理療法の各学派に共通する要因について探求し、国内外で発表してきています。

どんな学生時代を送っていましたか。

私の学生時代というと、第一次石油ショックの大不況のさなかでした。TVは11:15を過ぎると放送終了となった時代です。暗かった。文学部に入学したが、専門を何にしようか定まらず、さまよう日々でした。

能楽のサークルにひょんなことから入り込み、稽古はさぼりつつも、続けていました。目標が具体的で、上達のステップがあり、稽古は頭を使うよりも体から入り、身につける。声を出すこと。稽古の型が決まっていてそれをひたすら繰り返すこと。今から思うとこのようなことが、漂流する学生期もそう大きくは崩れることなく、乗りきらせてくれたのかもしれません。

この前『スタニスラフスキーと心理学』というテーマで、シンポジウムを行いました。訓練方法は身体ベースで、ヨーガなどとも接点があり、心理学とも思わぬところでつながっています。学生期のあの頃に模索していたことも、今になると関連が見えてくるようにも思います。

現在の専門分野を志した理由・きっかけを教えてください。

いろいろな人と本との出会いは大きいです。

東京で予備校に1年間通っていました。神田駿河台下の三省堂にて、河合隼雄『ユング心理学入門』を手に取った時のことは、今でもよく覚えています。このような心の奥を探求する学問を探っていましたが、その当時、河合先生は自分の志望する大学の先生ではなかったです。しばらく忘れていました。

大学に入学後、別の学部で河合先生が臨床心理学という講義を担当していると知って、聴きに行きました。生き生きと人の心のありようを伝える摩訶不思議な話に驚き、こういう道もあるのかと気づきましたが、すでに私は他の学部の3回生でした。それでも学部地下の書庫に日々潜り込み、探索しました。正木正、佐藤幸治、水島恵一、戸川行男ら人間をトータルにとらえる心理学者群像に瞠目しました。

あつかましく学部が違うのに、実習や実験にも入り込み、心理学の初歩を学ばせていただきました。その鷹揚な学風には感謝しています。

高校生へメッセージをお願いします。

心の奥底にあるものに関心を持ったのは、
高校時代に文学や音楽に引き付けられたのが大きいです。
高校時代に好きなこと、熱中することは生涯つきまといます。
元気のもとです。

かといって、熱中することが今見つからなくても気にすることはありません。
身近にあって気にも留めなかったものが、
後に大切になることは、ざらにあります。

生きることにおいて人は皆エキスパート、専門家です。
その目でもう一度今を発見できます。
先になったら見えてくるだろうと今はおいておきましょう。

これまでに私は私立大学1校、国立大学2校にて、
多くの卒業論文の指導を行ってきました。
「不登校経験者の語り」、「がんと死の受容に関わる調査研究」、
「父親の育児休業」、「性的マイノリティの自助グループでの探求」を
扱ったものが印象に残っています。

心理学も、生きることそのことを扱うことができるようになってきました。
ぜひ心理学の未来に向けてよい課題を探していきましょう。

経歴・業績について