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2020.11.18

湾岸シンポジウムが開催されました! 「変動する湾岸情勢と日本:危機の時代を前望する」

 2020年9月18日(金)、「イラン・イラク戦争から40年」「湾岸危機・湾岸戦争から30年」という節目に、公開シンポジウム「変動する湾岸情勢と日本:危機の時代を前望する」が開催されました。
イラン・イラク戦争がちょうど40年前に勃発して、1980年9月22日から88年まで湾岸地域で長い戦乱が続きました。また、ちょうど30年前の8月2日にイラク軍がクウェートに攻め入って湾岸危機が勃発しました。翌年1991年には湾岸戦争が起き、世界に衝撃を与えました。
湾岸地域は石油や天然ガスを世界経済に供給していますから、日本もエネルギー安全保障、あるいは世界平和の観点から、おおいに関心を持って対応してきました。
湾岸におけるこの2つの危機・戦争と、その後の展開を考え、そして現在から将来を眺望するために、本シンポジウムが開催されました。


シンポジウム全体の記録動画は、こちら。
*YouTubeサイトへ移動します

主催:日本エネルギー経済研究所中東研究センター、立命館大学アジア・日本研究所、立命館大学中東・イスラーム研究センター

共催:科学研究費助成・新学術領域研究「グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立社会科学の確立」(グローバル関係学)、科研費基盤(A)「現代イスラームにおける法源学の復権と政治・経済の新動向:過激派と対峙する主流派」


司会の小杉泰AJI所長

(司会あいさつ)このシンポジウムでは、湾岸をめぐって歴史をふりかえりつつ、そこから現在と将来のことも考えたいと思います。

 主催者の日本エネルギー経済研究所中東研究センターは、その前身も含めると、半世紀近い歴史を持つ、日本でも随一の中東研究の拠点です。また、立命館大学は、関西の私立大学として名を知られておりますが、最近は、中東やイスラーム研究にも力を入れております。昨年は、中東・イスラーム研究センターを設立しました。このセンターと、アジア・日本研究所が主催者に加わっております。

 さて、ちょうど40年前の9月22日、イラン・イラク戦争が勃発して1988年まで湾岸地域で長い戦乱が続きました。また、ちょうど30年前の8月2日にイラク軍がクウェートに侵攻して、いわゆる湾岸危機が起き、その占領を終わらせるために翌年1991年1月には、世界中の国を巻き込んで湾岸戦争が起きました。当時は冷戦が終わったばかりでしたが、中東で巨大な熱戦が起き、その後の世界情勢にも大きな影響を与えることになりました。

 昨今も、イラン、イラク、湾岸アラブ産油国の対立や摩擦があり、アラブ諸国内でもカタルをめぐる対立があり、イエメンでは湾岸からの介入と内戦が続いています。ごく最近は、イスラエルが米国のトランプ政権の後押しがあって湾岸の国と和平条約を結ぶような、少し前には予想もつかなかった事態が起きています。

 この地域は、いったい、どうなるのでしょうか。日本は湾岸の国々と、投資やビジネス、民間交流を通じて深い関係を持っておりますが、これからの関係はどうなるのでしょうか。
 講師、ディスカッサントの先生方、聴講なさっている皆さまといっしょに、考えていきたいと思います。


講師の酒井啓子先生

講演題目:「イラン・イラク戦争から40年」

(司会の紹介から)まず、千葉大学教授の酒井啓子先生です。酒井先生は、イラク政治、中東政治、さらに国際政治の専門家として大変有名でいらっしゃいますので、皆さまご存じと思います。現在、千葉大学のグローバル関係融合研究センター長であり、「グローバル関係学」という新しい学術領域を作る研究プロジェクトを率いていらっしゃいます。
 アジア経済研究所や英国のダラム大学で研究をなさい、イラクやエジプトなどでも長らく調査され、東京外国語大学教授、日本国際政治学会の理事長などを歴任されました。著書も『フセイン・イラク政権の支配構造』『9.11後の現代史』『中東の考え方』など、たくさんございます。


講師の保坂修司先生

講演題目:「湾岸危機から30年」

(司会の紹介から)続いて、日本エネルギー経済研究所の理事で、中東研究センター長の保坂修司先生です。ご専門は、ペルシャ湾岸地域近現代史、中東メディア論などで、特にサイバー空間上の過激派については世界でも有数のスペシャリストでいらっしゃいます。在クウェート日本大使館で専門調査員をなさっていた時に湾岸危機に遭遇なさいました。著書も、『ジハード主義:アルカイダからイスラーム国へ』『サイバー・イスラーム』など、たくさんございます。


ディスカッサントの脇祐三先生

視点:「石油市場の変化と国際関係の視点から」

(司会の紹介から)日本経済新聞社で長年活躍なさった脇祐三先生です。脇先生は、日本経済新聞社で、エジプトやバハレーンなどから中東や湾岸の取材にあたり、湾岸危機・湾岸戦争の際には、現地取材班キャップをお務めになりました。また欧州総局編集委員として、ロンドンから欧州・中東をカバーなさったこともあります。特に経済面を含めての中東通・湾岸通という点では、脇先生の右に出る方はいないと思います。
 著書として、『中東―大変貌の序曲』『中東激変:石油とマネーが創る新世界地図』をお出しになっています。


ディスカッサントの末近浩太先生

視点:「現代中東政治の観点から」

(司会による紹介)立命館大教授の末近浩太先生です。立命館大学中東・イスラーム研究センター長もお務めです。ご専門は、中東・イスラーム地域研究、国際政治学、比較政治学です。
 著書も、『イスラーム主義』『現代シリアの国家変容とイスラーム』など、いくつもお書きになっています。先週は、ちくま新書で『中東政治入門』をお出しになりました。


ディスカッサントの黒田賢治先生

視点:「イラン政治の観点から」

(司会による紹介)国立民族学博物館・特任助教の黒田賢治先生です。現代イランの宗教と政治を人類学的に研究なさっています。イランはイスラーム法学者が最高指導者となる体制を敷いていますが、イスラーム法学者について大変詳しい、気鋭の若手研究者です。
 著書としては、『イランにおける宗教と社会:現代シーア派の実相』という学術書をお出しです。ほかに面白い入門書をお出しです。『サトコとナダ』という、日本とサウディの若い女性の交流を描いたマンガがありますが、そのマンガを素材に『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門』という、わかりやすい本もお出しです。


質疑応答のセッション

(司会:終わりのあいさつ)
 豊富な現地経験をお持ちで、中東諸国の歴史・政治・経済に詳しい2人の講師、3人のディスカッサントから、これまで40年の中東および中東・日本関係をふりかえりつつ、現在から将来に向かって前望性を持って展望する非常に刺激的なお話があり、聴衆の皆さまにとっても聞き応えのあるシンポジウムとなりました。さらに、このような会では最後に時間が窮屈になりがちですが、かなりの質疑応答の時間を取ることができ、熱いディカッションが交わされました(十分な質疑の時間があったことを喜ぶお声も、シンポ後アンケートに記されておりました)。

 たくさんの皆さまにオンラインご来場いただき、まことにありがとうございました。


なお、シンポジウムの全記録動画がアップロードされておりますので、ご関心のある方はどうぞご覧 ください。

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