所長室から

書評のススメ

 アジア・日本研究所の初の英文ジャーナルが創刊されました。

 創刊号なので、どのくらい投稿をいただけるか心配だったのですが、去る1月の締切には想定以上の投稿をいただき、胸をなで下ろしたことを思い出します。厳しい査読を経て、創刊号には6本の論文が掲載されました。ほかに査読プロセスが続いている論考もありますので、中には次に創刊される英文ブレティンに掲載されるものもあると思います。

 さて、ジャーナル創刊号の書評欄をご覧いただけましたでしょうか(リンクはこちら)。 ご覧になって、ふつうの書評と違うとお気づきになった方もあるのではないでしょうか。3本の書評がありますが、どれも日本語の本が対象だからです。

 このジャーナルの書評は、「日本語やアジアの諸言語で書かれた書籍を対象として、英語で書く」ということになっています。つまり、英語の本は、書評しないわけです。英語の本は、私たちが書評せずとも、英語の読者の手に届きます。ところが、日本語やアジア諸語の本は、そうではありません。

 アジア・日本研究は、アジアや日本でたくさん研究者がおり、研究成果もたくさん出ています。私たちにとっては、言うまでもないことです。ところが、英語圏の読者にとって、それは隠された宝のようなもので、手が届きません。あることすら、知らないことが多いのです。日本では、明治以来(あるいはそれ以前から)外国の文物や知識を貪欲に吸収してきましたが、自分たちの研究を世界に還元する点では遅れを取っています。

 ですから、このジャーナルでは、個々の執筆者がご自分の研究成果を英語で発信するのに加えて、日本語やアジア諸語での優れた文献を紹介して、どのような研究がそれぞれの言語圏でなされているのかについても発信していきたいと思いたちました。その手法の1つとして、このような書評欄を作ったわけです。

 このような書評ならば、若手の皆さまも参加しやすいのではないかと思います。英語の本を英語で書評して世界に発信するのは敷居が高いかもしれません。でも、日本語や、ご自分の専門領域のアジア諸語の書物を読み込んで、それを紹介、書評するのは、そこまでむずかしいことではないと思います。

 というわけで、是非、そのような書評をお寄せ下さい、というのが、今回の「書評のススメ」の趣旨です。

 来年1月の締切まで、十分時間があると思いますので、是非、ご一考ください。投稿をお待ちしています。

(2019.8.2記)