事務局から

知識労働者の生産性とデスクの整理整頓

今日は極めてパーソナルな話題から。

 我が家には保育園児が一人おりまして、子供が生まれる前は愛情いっぱいに育てたいとか、ゆったりとした心で子供の目線に立ち子育てに向き合いたいとか、自分なりの理想を持っていたわけですが、現実はというと日々時間に追われ、ふと気づけば愛情深い声がけよりも「早くご飯食べて」「いい加減お部屋を片付けて」など、昔子供の頃親に言われて嫌だった言葉を多く口にしてしまっている自分がいます。
 整理整頓は保育園でもしっかりと指導いただいているようで、私が夕方子供を迎えに行くと、それまで遊んでいたおもちゃをそれはもう時間をかけて丁寧に片付けてから「さあ帰ろうか」と冷静に一言。(なのになぜ家ではできないのか) 。

 さて、最近気になっているのがデスクのきれいさと仕事のアウトプットの質に相関性はあるか?という問題。私自身は職場の整理整頓には割と気を遣っています。それは単純に仕事中目に入るスペースが散らかっているとストレスを感じることや、デスクが整理されていれば文具・書類などを探し回る時間が最小限で済むこと、さらには自己管理ができていない人間だという印象を与えたくないという多分に周囲の目を意識した理由によるものだと自己分析をしているのですが、身近な研究者を見ていると無頓着な方が多いような...。

 ちょっと調べてみると、かのアインシュタインの机もなかなかの乱雑ぶりだったようですし、この記事(外部リンク)によると研究者ではないですがスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグもこのタイプであり、乱雑なデスクに座っている人ほど、独創的な発想力があるとのこと。こういう情報を目にすると、我が子に対して毎日のように整理整頓を促すことが果たして正しい躾のあり方なのかわからなくなってきます。

 一方で、日頃様々な研究室に出入りする身としては机が整理されているかどうかと、タイムマネジメントに長けているかどうかは相関する、との印象を受けます。つまり、デスクがきれいな研究者ほど締め切りを守る!おまけにメールのレスポンスも早い!ということ(私見です)。さらに面白いデータがあります。私がとあるキャンパスで科研費申請支援を担当したとある年度の秋の公募の採択結果を見てみると、最終提出期限の2週間前までに申請書をリサーチオフィスへ提出された研究者とそれを過ぎてから提出された研究者の採択率を比べると、前者が34.7%、後者は26.7%で、その採択率には実に8.0ポイントもの開きがありました。

 とすると、研究者の創造的・独創的な研究を促すにはデスクが乱雑であろうと何であろうと自由にしていただくのが良くて、その素晴らしい発想を基に研究費を獲得したり、研究のアウトプットを社会へ環流させたりするフェーズにおいては事務局が口うるさく督促してでもある程度は枠にはめるのが良い、ということになるでしょうか。今年も科研費の申請準備に着手いただく時期が来ましたので、この仮説に基づき、自分がサポートする研究者の顔(と机)を思い浮かべながら、効果的なアプローチ方法を色々と考えています。

研究所長室のデスク
当オフィスきってのミニマリスト・Oさんのデスク

<左:研究所長室のデスク/右:当オフィスきってのミニマリスト・Oさんのデスク>

事務局:NaKa