研究プロジェクト紹介

共生領域

「大分岐」と「大収斂」:アジアからの世界史像の再構築

プロジェクトリーダー
国際関係学部

山下 範久 教授

ヨーロッパ中心の世界史像から脱却した新しい歴史の教科書をつくる

これまで歴史学における「近代」や「近代化」の概念は、19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパの経験を基準につくられてきました。しかし日本や中国をはじめアジア諸国がこれほど発展してきた世界にあって、近代社会に至る道程は、必ずしもヨーロッパが辿ったものだけではないことが明らかになっています。そうした中で、従来のヨーロッパを中心に据えた「世界史像」を前提とする社会科学の各ディシプリンもまた根底から揺らいでいます。本プロジェクトは、こうしたヨーロッパ中心的な世界史像や歴史観から脱却し、アジアの歴史的な経験も包摂した新たな「世界史像」をアジアから発信し、歴史観から社会科学を基礎づけなおそうという問題意識のもとで立ち上げられました。そのアウトプットとして、世界で共通に用いることのでき、まさに現代の世界を生きる学生が学ぶべき新しい「歴史の教科書」を設計しようとしています。

プロジェクトがスタートして最初の1年間で7回研究会合を開催し、教科書に盛り込むべきコンテンツについて検討を重ねてきました。まずヨーロッパを軸にした地域・時代区分で語られてきた「歴史学」そのものを見直し、改めてグローバルな地域・時代の区切りを検討し、それぞれを比較するための歴史に対する「語り口」、歴史記述について議論しています。教科書には、例えば「国家」や「医療」などといった、地域や時代によって多元的な意味を持つ概念を考え直す課題も盛り込むつもりです。一方で、社会科学そのものに今、パラダイムチェンジが起こっていることからも目を背けることはできません。ヨーロッパが先導してきた社会科学における「人間」の捉え方、人間観が大きく変わりつつあるなど社会科学の変化を捉え、歴史観の変化と接合させる必要があると考えています。今後さらに検討を重ねて教科書の構成を具体化し、「グローバル・リベラル・アーツの世界史」と呼ぶにふさわしい教科書を目指します。

エアフルト 大学マックス・ウェーバー・センターのカーステン・ヘルマン=ピラート教授を迎えてのワークショップ

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