研究プロジェクト紹介

共生領域

明治大正期における、詩詞を通した日中韓文人の交流についての総合研究

プロジェクトリーダー
文学部

萩原 正樹 教授

漢詩を通じた交流から、国際交流や文化理解に果たす文学の役割を考える

本プロジェクトでは、明治・大正期の日本・中国(台湾をおよび香港等を含む。以下同)・韓国の文人たちによる詩のやり取りを通じた交遊について明らかにしようとしています。

明治・大正期までの日本・韓国において中国の古典は、文化・政治などあらゆる面で重要な「教科書」であり、当時の日本や韓国の知識人のほとんどは中国の古典語を自在に読み、書くことができました。日中韓の知識人は中国古典語をいわば「共通言語」として互いにコミュニケーションを取ることができたのです。とりわけ詩詞は作者の心情や感慨を表現するだけでなく、宴席での社交辞令、送別の歌、誕生を寿ぐ歌として詠まれ、古くから社交の道具として用いられてきました。

注目に値するのは、そうした社交詩の交換が、日清戦争や第一次、第二次世界大戦中も少なからず行われていたという事実です。本プロジェクトでは、明治・大正期という言葉の壁なく東アジアの各国が交流できた稀有な時代に焦点を当て、日中韓の詩詞を通じた交流の実態を明らかにしながら、文学が国際交流や文化理解に果たす役割を考えます。プロジェクトを通じて、意見や境遇の違いを超えてアジアの国々が互いを理解し合う手がかりを見出したいと考えています。

プロジェクトでは、まず日中韓それぞれにおいて文人が詠じた社交詩の収集から始めます。こうした詩の多くは当時の漢詩文雑誌や新聞に投稿されたもので、まとまった形では残されていません。それらを発掘・整理するとともに、各詩詞を読み解き、文学としての特徴や変容を詳らかにし、また詩詞を通じて実際にはどのような心情や言葉が交換されたのか、交流の実態に迫ります。

日中韓の中国文学の研究者の他、中国学や歴史学、日本文学などの研究者の協力を仰ぎ、互いに密に連絡を取りながら研究を進めていきます。最終的には収集した作品を一つにまとめた『明治大正期日中韓人交流詩詞集』(仮題)や、研究成果を集めた論文集の出版を目指しています。

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