アスベスト被害と救済・補償・予防制度の政策科学 | 世界に点在する日本の美術・工芸品を共有化するデジタルアーカイブ

独自のデジタルアーカイブ技術を開発し
日本美術・工芸品をデジタル化しています。

江戸時代、初期にはキリスト教の布教、鎖国後は交易などの目的で日本を訪れた外国人が、日本の美術・工芸品を自国に持ち帰りました。さらに明治以降は、日本政府が外貨獲得のために輸出政策を進めたこともあり、大量の美術・工芸品が海外へと渡っていきました。それらの多くは、現在、博物館の倉庫に眠っており、私たち日本人も含めて部外者はその存在を詳しく知ることができません。本プロジェクトが目指すのは、独自のデジタルアーカイブ技術を開発・駆使し、世界に散在する日本の美術・工芸品をデジタルアーカイブするとともに、それらの学術情報を公開し、国境を越えて共有することです。

本プロジェクトの基盤となっているのが、立命館大学アート・リサーチセンター(ARC)が中心となって開発した、独自のデジタルアーカイブ技術です。この技術の特長は、撮影の専門家でなくても扱うことができ、かつ海外へも携帯可能な撮影機材で、しかも1〜3名という少ない人数で、研究者自身が極めて短時間に大量の美術・工芸品を撮影できるところです。これによって、これまで貴重な歴史・文化財の撮影にかかっていた時間・コストを劇的に削減することに成功しました。何より特筆すべき強みは、「学術研究者の視点」で作品を撮影できるところにあります。修復や保存、学術研究に必要なポイントを的確におさえて撮影することにより、アーカイブデータの文化資料としての価値を格段に高めることができるようになりました。

現在ARCでは、浮世絵25万枚、舞台写真約16万枚、古典籍2万3千点、歌舞伎浄瑠璃番付2万件などのイメージデータベースを有しています。その他、陶磁器や漆器、竹細工といった工芸品のアーカイブも進んでいます。2011年5月には、国内の個人が所蔵する竹工芸作品140点(画像約2千枚)をデジタル撮影しました。

このプロジェクトでは、デジタル化と並行して、保有するデータを順次WEBサイトで公開し、文化資料として世界の専門家と共有することにも取り組んでいます。例えば、古典籍データベースでは、パスワード付きの研究メンバー閲覧モードにアーカイブされた全作品は2万3千冊以上、一般閲覧モードでも9300点以上が閲覧可能になるまでに成長しました。大規模なイメージデータベースの公開を可能にするため、今後はそれらをまとめるポータルサイトの構築を進めていこうとしています。先行して古典籍ならびに書画を対象とした貴重書のポータルサイトをスタートさせました。

大量の作品のデジタルアーカイブ化が
新たな研究資料の発見に貢献しています。

私たちの開発したデジタルアーカイブ技術は、「ARCモデル」として、いまや欧米の大規模博物館・図書館にも認知され、多くのアーカイブ依頼を受けるまでになっています。アメリカのボストン美術館のWEBサイトで公開されている歌舞伎番付、イギリスの大英博物館で公開されている約2万点に及ぶ浮世絵や絵本のデジタル画像は、本プロジェクトの成果です。最近の代表例としては、アメリカ・ワシントンのスミソニアン博物館の一つ、フリーアギャラリー所蔵の北斎作品約60点を含む江戸時代の絵本コレクション1000点も急ピッチでデジタル化が進んでいます。また、イタリア・ローマのサレジオ大学の図書館、通称「マレガ文庫」にある900点もの日本古典籍すべてのデジタル化も7月から本格的に開始しました。

こうして私たちが世界各国の美術・工芸品のデジタルアーカイブの実績を重ねてきた最大の成果は、各国の博物館・図書館に認知、信頼されることにより、これまで注目されていなかった作品や未整理の作品も含めて博物館が所蔵する「すべての」日本作品のアーカイブを依頼されるようになったことです。その結果、作品の把握・デジタル化のみならず、日本美術・工芸品研究にも、新しい光を投げかけることになりました。例えばこれまで江戸時代後期の浮世絵作品については、他の時期と比べてあまり研究が進んでいませんでした。美術品としてだけでなく、広告や社会・政治風刺といったメディアとしての役割も担っていた当時の浮世絵は作品数が膨大すぎて、全体像を捉えることが困難だったためです。こうした作品についてもデジタル化が飛躍的に進んだことによって、新たな研究資料が次々と発見され、これまでになかった視点から日本の美術史を描き直すことが可能になっています。

デジタルアーカイブ過程およびノウハウの指導を通して
若手研究者の育成にも注力しています。

もう一つ、本プロジェクトは、人材育成においても大きな役割を果たしています。デジタルアーカイブの過程で、若手研究者は本来なら決して見ることのできない貴重な美術・工芸品の現物を目にし、また実際に手に触れる機会を得ます。本物を間近に見て作品を見極める目を鍛える経験が、研究者として成長する上で欠かせない糧となるに違いありません。

私たちは、デジタルアーカイブ技術についても広く公開しています。立命館大学ARCだけでなく、資料を所蔵する博物館の現場でデジタルアーカイブ技術のワークショップを開催し、撮影やデジタル化のノウハウを若手研究者や学芸員に指導しています。その結果、世界各国の大学や博物館・美術館でも独自にデジタルアーカイブが進み、情報共有化が加速します。これによって、国境を越えた共同研究も始まっています。今後も、世界に散らばる日本の美術・工芸品を、いうなれば「文化大使」として活用し、世界の人々に日本文化のすばらしさを伝播する使命を担っていきたいと考えています。

デジタルアーカイブ化の技術指導を行うワークショップを、国内外で開催。若手研究者の育成を積極的に行っている。

2011年は、イギリス、スコットランド国立博物館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(日本漆器)、ドイツ、ハンブルグ工芸博物館・ドレスデン国立博物館(陶磁器)、チェコ国立美術館などでデジタル撮影を行います。大英博物館では、絵巻・軸物にも着手します。

Quarterly Report vol.07 2011年10月10日

赤間 亮 教授

赤間 亮 教授

1991年 早稲田大学文学研究科芸術学(演劇)博士。文学修士。'91年 立命館大学文学部講師。'96年 同助教授。'00年 教授。'02年 ロンドン大学SOAS客員研究員。'04年 立命館大学先端総合学術研究科教授。'09年 立命館大学アート・リサーチセンター長、現在に至る。国際浮世絵学会、歌舞伎学会、日本近世文学会、楽劇学会に所属。'88年 歌舞伎学会奨励賞、'08年上野五月記念日本文化研究奨励賞を受賞。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:赤間 亮
立命館大学グローバルCOEプログラム 日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点
立命館大学グローバルCOE 赤間研究室

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