バイオ炭が可能にする温室効果ガス削減と地域活性化

バイオマス資源を用いて炭素隔離を実現し
温室効果ガスの削減と農山村部の経済復興に
貢献します。

本プロジェクトでは、温室効果ガス削減に寄与することを目的に、バイオマス資源を用いた炭素隔離に取り組んでいます。私たちは、低コストで高いCO2削減効果を見込める簡易炭化技術に着目し、農山村地域で発生する農産廃棄物や放置竹林といった未利用のバイオマス資源を活用する炭化システムを確立しました。

植物は光合成によって大気中のCO2を吸収、固定しますが、そのままではやがて枯れて微生物によって分解され、再びCO2を排出することになります。そうなる前に植物をバイオ炭にして土壌に戻し、炭素を貯留する方法が、近年、新たなカーボンマイナスの手だてとして世界的に注目されています。炭素は固定期間が5万年以上におよぶともいわれ、農山村部で大量に発生する未利用バイオマスをバイオ炭にすれば、温室効果ガス削減に大きな貢献を果たすことになるでしょう。

特に本プロジェクトの画期的な点は、バイオ炭による土壌への炭素隔離を、CO2の削減のみならず、農山村部を経済的・社会的に持続させるための駆動力としても活用しようとするところです。私たちは、貯留した炭素分をCO2排出量取引を通して企業などに売却することで、都市から農山村部へ持続的に資金が還流するシステムを構築しようと考えています。加えて、バイオ炭を施用した農地で収穫した農産物を付加価値商品として販売し、新たな経済効果をもたらすことも狙っています。

京都府亀岡市などと協力し、2007年から“亀岡カーボンマイナスプロジェクト”を進めてきました。これまで亀岡市地域において、稲わらやもみ殻、竹の間伐材を回収してバイオ炭を作り、簡易炭化の効率を検証するとともに、バイオ炭と堆肥の混合物を田畑に散布して農作物を栽培し、収穫物を「クールベジタブル」と名づけて販売を試みてきました。

バイオ炭による炭素貯留効果を確かめると共に
ボランティア市場での排出量取引を実現させました。

2011年度に達成した大きな成果の一つが、本プロジェクトで作ったバイオ炭をカーボンクレジットとして、国内のボランティア市場で排出量取引が実現したことです。京都銀行、サントリー、ブリヂストン化成品のCSR活動の一環として、購入されました。また京都府では、2011年10月20日より、府版のCO2排出量取引制度の運営を開始しています。この制度にも取引可能なカーボンクレジットとしてバイオ炭が導入されました。今後は京都CO2削減バンクを通じて多くの企業に販売していくことが可能になります。これによって、企業から農山村部の生産者へとつながる持続的な資金還流の枠組みを整えることができました。

二つ目の成果が、炭素貯留効果の測定を開始したことです。バイオマス資源の仕入れやバイオ炭の販売の過程で排出されるCO2量が、固定化した炭素量より多ければ、CO2を削減したことにはなりません。それを確かめるためには、バイオ炭が実際どれほど炭素固定化に寄与しているのか、厳密な計測が欠かせません。私たちは、亀岡市保津地区を評価対象に、稲わら、もみ殻、竹林間伐材をそれぞれ炭化して水田、および畑に貯留し、CO2削減効果を測定しました。原材料の調達から農地への施用までの間の輸送で排出されるCO2量なども換算し、削減効果を計算したところ、カーボンマイナスになるという結果が導き出されました。2012年2月には正確な実数値を報告する予定です。

こうした結果は、国が政策決定する際の指標としても期待が寄せられています。私たちの提供するデータは今後、CO2排出削減の方策の一つとして炭素貯留の有効性が議論される際の一助となるでしょう。

国際的なバイオ炭大会で成果を報告し
アジアの炭素隔離におけるリーダーシップが期待されています。

最後に、社会的認知度を高めたことも有意な成果でした。バイオ炭による排出量取引やクールベジタブルの販売によって、バイオ炭作りやそれを用いた農業が、亀岡市の農業や地域の活性化に寄与している実態が徐々に社会的にも認められつつあります。

さらに国際的にも広がりを見せています。2011年9月、第2回アジア太平洋バイオ炭大会(APBC Kyoto 2011)を立命館大学で開催しました。これは「アジア太平洋諸国におけるバイオ炭土壌隔離の方法論の確立とその普及に向けた体制作り」を目的とした国際会議です。私たちが行っている集約農業型の社会に適した炭素隔離方法の報告は、アメリカやオーストラリアなどで盛んに行われている大規模農業による炭素封じ込めとは一線を画すものとして、各国に大きなインパクトを与えました。今後、日本と農業形態が類似したアジア各国の炭素隔離において、イニシアティブを取る役割を担うこととなるでしょう。今後は国際社会だけでなく、日本国内においてもさまざまな地域にこの取り組みを導入していきたいと考えています。

研究においては、炭素の貯留の経年変化を追い続けていくことが変わらぬ課題です。また農作物に対する消費者の感応度試験を実施し、経済的な施策のブラッシュアップも図っていくつもりです。立命館大学をはじめ、国内外の行政、企業、非営利法人などさまざまな機関と連携を図る必要性も感じています。すでにR-GIROのメンバーである久保幹教授の研究チームとの共同研究を進めていますが、その他、周瑋生教授の研究プロジェクト、さらには立命館大学産業社会学部が中心となって地域活性化に取り組む「京北プロジェクト」などとも連携していきたいと考えています。

Quarterly Report vol.08 2011年1月10日

鐘ヶ江秀彦 教授

鐘ヶ江秀彦 教授

1994年 東京工業大学理工学研究科社会工学博士後期課程修了。博士(工学)。'01年 東京工業大学社会理工学研究科助手。'02年 立命館大学政策科学部助教授。'06年 同教授。'06年 立命館大学地域情報研究センター長を経て、現在に至る。日本学術会議連携会員、日本経済学会連合会評議員、横断型基幹科学技術研究団体連合代議員。木質炭化学会、JBA、日本計画行政学会、日本地域学会、日本都市計画学会、日本不動産学会、地域安全学会、日本シミュレーション&ゲーミング学会(副会長・理事)、日本環境共生学会(理事)、資産評価政策学会(理事)等に所属。'99年 日本シミュレーション&ゲーミング学会賞・優秀賞、'05年 日本計画行政学会2005年度学会賞・論文賞、'09年 日本地域学会2009年度学会賞・著述賞を受賞。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:鐘ヶ江秀彦

このプロジェクトに関連する記事

研究成果一覧へ戻る