立命館は創立以来、建学の精神を生かした、私学ならではの多様な能力・価値観を身に付けさせる教育を行った結果、多くの優秀な人材を世に送り出してきました。今後は、今日の社会が求めている、独創性に富んだ人材を育成する教育にも軸足を置かねばなりません。そのためには、高い教養を身に付けるための教育に加え、教員の先端研究活動にも学生を積極的に参加させ、未知の世界に挑戦する意欲を高揚させ、実社会の難題解決に真っ向から挑戦する人材の輩出にも力点を置かねばなりません。
このような人材を育成するためには、まず、世界に誇れる最先端の研究拠点を形成し、立命館の研究水準をより一層、国際的で高いレベルに向上させる事が必要と考えます。この研究拠点から輩出される人材は、グローバル化の荒波を乗り切り、海外での競争に打ち勝つだけの素質を持ち、日本の将来を担ってくれると信じています。
また、科学・技術を担う者にとって、科学・技術は社会の要請を満たすだけでなく、自然との共生の重要さを常に認識しながら人類の発展に貢献せねばならないことを、学生たちに教えていく事も重要です。時代により地球環境が大きな変貌を見せる中で、自然環境の変化を敏感に感じながら科学・技術を進歩させていくことができる人材を育成する使命を我々は負っているのです。
大学を取り巻くこれらの変化に応えるために、本学は2008年4月に「立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)」を設立しました。この機構では、次世代を担う若者の人材育成に重点を置き、今世紀初頭に日本が緊急に解決せねばならない研究課題に焦点を絞りました。
20世紀を振り返り、前世紀は「科学・技術の世紀」と言われています。その由縁は、科学・技術の革新により、前世紀の人々が求めた物質欲および長寿欲を、大いに満足させた事からです。人間の好奇心から生じる「自然の真理探究」および生活快適願望から生まれる「ユビキタス社会の実現」に、多くの人々が長年にわたり「知の営み」を武器として、真正面から挑戦した成果であります。
しかし、科学・技術の恩恵を100%享受できたのは、先進国に住む人々だけである事を忘れてはなりません。しかも、科学・技術の革新には、「光と影」が必ず存在します。20世紀の科学・技術の「光」の部分は、「成長」の一言で表現される如く物質社会の高度化でありました。一方、「影」の部分は「地球の自然破壊」に代表される地球温暖化、資源枯渇、食糧不足などであります。その他にも、貧富の二極化、モラルの崩壊、宗教対立の激化など、20世紀は人類史上稀な、数多くの課題を今世紀に残しました。
21世紀の科学・技術は、これらの負の遺産を清算しつつ、地球と共生できる新たな社会の構築に向けた挑戦でなければなりません。「地球の自然破壊」に対する今世紀の挑戦は「持続可能で豊かな社会(サステイナビリティ)の追求」であることは間違いありません。
R-GIROは、このような背景を踏まえ、持続可能な社会形成のために解決せねばならない課題に焦点を絞り、教育・研究を通じて社会貢献していくための組織的な機構です。具体的には、まず、21世紀に緊急に解決せねばならない課題として「環境」「エネルギー」「食料」「材料・資源」「医療・健康」「安全・安心」の6領域を研究対象として、2008年4月から自然科学系を中心として、政策的・組織的に取り組みを実施しています。現在、22プロジェクトが進行して、異分野連携、産学連携、および学学連携によるイノベーションのダイナミズムにより、様々な角度から自然を見つめ直しています。
2009年度からは、人文社会科学系の見地から、「持続可能で豊かな社会」を実現するために、「人・生き方」「平和・ガバナンス」「日本研究・地域研究」の3領域に加え、「自然科学・人文社会科学融合新研究領域」を研究対象として、プロジェクトを開始し、現在、11プロジェクトが進行しています。そしてイノベーションの担い手となる若手研究者も50名弱がこれらプロジェクトに参画しており、人材育成も進んでいます。
今後、上記で挙げた「自然科学・人文社会科学融合新研究領域」の創成がより進むことを期待すると同時に、R-GIROの研究成果が「21世紀の要請である自然共生型社会の実現」に貢献できることを切望します。

