コンセプト

VISION

目的:
デザイン科学の中核拠点を形成し、「人々が“豊かな生活”を実感することのできる時空間の創造」にむけた学術的研究を推進する。
社会的意義:
産官学地コミュニティの創造と協働を通じて、持続可能社会のあるべき姿を様々な視点からデザインすることであり、そのデザインは社会的実装に役立つことが期待される。

MISSION

「新しい学術の体系」については、科学を「あるものの探求」としての「認識科学(cognition science)」と「あるべきものの探求」としての「デザイン科学(design science)」の二つの大きなカテゴリーに分類する考え方が示されている(日本学術会議)。前者の「あるものの探究」としての認識科学は、「事実/仮説/検証/理論」の研究方法論の雛形が確立されており、その拠り所は、「自然科学」である。「あるものの探求」に対する解はひとつである。

これに対して「デザイン科学」のよりどころは「論理」であり、より良い社会への変革を目指す。人間のあらゆる営みは、デザイン活動に立脚している(H.A.サイモン「システムの科学」)。論理は前提条件がすべてであり、倫理に対応するのは「価値」である。価値を導入する以上、「あるべきものの探求」に対する解は一意ではない(横断型基幹科学技術研究団体連合)。「あるべきものの探究」は自ずと特定の主体の価値観を背負う。設計科学の一定の普遍性の担保には「最適化」概念が有用である。研究領域の“Beyond Borders”を意識し、常に部分最適化から全体最適に向かうプロセスを推し進めなければならない。

デザイン科学の研究方法論は「価値命題最適化実現検証」のループを回して“全体最適”に近づける「知力(intelligencecapability)」の営みとなる。その営みは、“BeyondBorders”に基づく個別利害の調整プロセスである。このプロセスは相互理解と行為の創発的活動であり、新たなネットワーキングとガバナンス・メカニズム構築に向けた「治力(governancecapability)」の源泉でもある。科学技術が加速度的に発達する現在社会において、自然性と人工性の新たな融和をデザインするために、このような知力と治力を創発的に引き出す触媒が必要である。

デザイン科学研究センターは、こうした方法論的認識を有するデザイン科学の拠点として「あるべきものの探求」を目指す。探求すべきものは、「人々が “豊かな生活”を実感することのできる時空間の創造」である。こうした時空間を多数生み出し、かつそれら束をつなぎ合わせることが、持続可能社会のあるべき姿の土台となる。

ブダペスト宣言(2009年世界科学会議「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」【ハンガリー・ブダペスト開催】)が「社会のための科学」を明確に打ち出したように、現代において科学と社会の関係性が改めて問われている。デザイン科学研究センターは、産学官地の新たな「協働コミュニティ」の形成とステイクホルダーの創発的な相互理解と行為を通じて、「社会のための科学」の創造と、自然事物と人工物の最適なエコシステム(生態系)を探求していく。