成長著しい中国経済に関心を持ったのが出発点
大学3回生の時、アジア経済を専門にするゼミを選んだことが現在の研究分野との出会いでした。中国に着目した理由の一つは、香港がイギリスから中国に返還される1997年が近づき、世界の注目が集まっていたこと。それに加えて、私自身『大地の子』や『ワイルド・スワン』といった中国を舞台にしたベストセラー作品を夢中で読み、中国独特の社会や経済に興味が膨らんだからでした。
とはいえ最初はあくまで卒業までのつもりで、「いずれ就活をして、企業に就職するだろう」と漠然と思い描いていました。ところが4回生になる年の1月に阪神淡路大震災が発生。就職活動もままならない中、改めて将来を真剣に考えた時、「大学院へ進学し、もう少し勉強する」という道が浮かんできました。
いざ大学院で研究を始めてみると、知りたいことが次々湧いてきて、修士論文を書いただけでは自分自身納得できなくなっていました。奨学金を得られたこともあり、さらに研究を究めるべく博士課程に進学しました。
博士課程在学中、体力的にも精神的にも大変だったのは、1年半の中国留学を終えて帰国した後、非常勤講師をしながら博士論文の執筆に取り組んでいた頃です。家族で協力して祖母を介護していたことも重なって、寝不足と疲労の中で、研究の質をキープすることに苦労しました。
慌ただしい毎日の中、新たにやりがいを見出したのが、学生に教えることです。非常勤講師として担当していた中国語や中国経済の授業がとにかく楽しかった。研究者にとっては当たり前に思えることでも、学生から素朴な疑問を投げかけられ、「そういう風に見ているのか」と驚かされることも。新たな視点を得ることが、研究にも好影響を及ぼしました。