経済学部 教授

高屋 和子

1996年、甲南大学卒業、1998年、甲南大学大学院社会科学研究科修士課程修了。2005年、大阪市立大学経済学研究科博士課程修了後、立命館大学経済学部に着任。2015年に経済学部教授、および副学部長に就任。2021年、経済学研究科の研究科長に就任。

研究への情熱を原動力に大学教員としてキャリアを重ねる

#25

成長著しい中国経済に関心を持ったのが出発点

大学3回生の時、アジア経済を専門にするゼミを選んだことが現在の研究分野との出会いでした。中国に着目した理由の一つは、香港がイギリスから中国に返還される1997年が近づき、世界の注目が集まっていたこと。それに加えて、私自身『大地の子』や『ワイルド・スワン』といった中国を舞台にしたベストセラー作品を夢中で読み、中国独特の社会や経済に興味が膨らんだからでした。
とはいえ最初はあくまで卒業までのつもりで、「いずれ就活をして、企業に就職するだろう」と漠然と思い描いていました。ところが4回生になる年の1月に阪神淡路大震災が発生。就職活動もままならない中、改めて将来を真剣に考えた時、「大学院へ進学し、もう少し勉強する」という道が浮かんできました。
いざ大学院で研究を始めてみると、知りたいことが次々湧いてきて、修士論文を書いただけでは自分自身納得できなくなっていました。奨学金を得られたこともあり、さらに研究を究めるべく博士課程に進学しました。
博士課程在学中、体力的にも精神的にも大変だったのは、1年半の中国留学を終えて帰国した後、非常勤講師をしながら博士論文の執筆に取り組んでいた頃です。家族で協力して祖母を介護していたことも重なって、寝不足と疲労の中で、研究の質をキープすることに苦労しました。
慌ただしい毎日の中、新たにやりがいを見出したのが、学生に教えることです。非常勤講師として担当していた中国語や中国経済の授業がとにかく楽しかった。研究者にとっては当たり前に思えることでも、学生から素朴な疑問を投げかけられ、「そういう風に見ているのか」と驚かされることも。新たな視点を得ることが、研究にも好影響を及ぼしました。

知らなかったことを知るその喜びが研究の醍醐味

私は現代中国経済の中でも財政制度と農村農業の問題に関心を持って研究しています。中国では、農地は公有制で国が各農家に耕作権を貸し付ける仕組みが主流です。広大な国土がありながら耕地は10数%しかなく、それを農家ごとに分配するため、小規模農業にならざるを得ません。また少子高齢化による担い手不足など、実は日本の農業と共通する課題を抱えており、学び合えるところが多いと考えています。研究にあたっては、文献を読むだけでなく、実際に中国の農村地域に赴き、農家の方へのヒアリングを行うなどフィールド調査も重視しています。文献には載っていない意外な事実を農家の方から聞かされることも少なくありません。それまで知らなかったことを知る。それこそが研究の醍醐味です。

誰もが重要な役職を 担うのが当たり前

立命館大学に赴任したのは2005年。大学教員になると、研究だけでなく、授業を受け持って学生を教育する役割や大学の行政的な業務も担うことになります。研究活動とのバランスを取るのは容易ではありません。最初の頃は慣れない業務に追われ、論文の締め切り前に徹夜したり、研究室に泊まり込むこともありました。
2015年、教授に就任するのと同じ時期に経済学部の副学部長に任命され、さらに2021年、研究科長を拝命しました。役職と共に大学運営に関わる職務が増え、責任も大きくなりますが、大学教員として誰もが担うべき責務だと私は考えています。また本学には出産や子育て、介護などさまざまな事情を持つ教職員を温かくサポートしようという雰囲気があります。だから私も「大変なのはお互いさま。そういう役割が回ってきたら協力しよう」という気持ちで取り組んできました。
キャリアを重ねても、研究への情熱は衰えていません。2019年から1年間、学外研究制度を活用してイギリスへ。アジア研究で有名な研究拠点で1年間、研究に没頭しました。
新しいことを発見したり、自分の間違いを正されたり、好奇心を刺激されることが、研究を続けるモチベーションです。学生の皆さんにも、「知ることを楽しむ気持ち」を大切にしてほしいと思っています。その気持ちがきっとキャリアを築く上で糧になるはずです。