2010年9月13日更新

サイエンスから生まれる、 スポーツの新しい可能性。

伊坂 忠夫
スポーツ健康科学部 教授
工学博士。1962年生まれ。1985年立命館大学産業社会学部産業社会学科卒業。1987年日本体育大学大学院体育学研究科修士課程修了。同大学で助手、講師を勤めた後、1992年から立命館大学理工学部助教授。1995年から1年間ジョージア工科大学で客員研究員。2003年から現職。「社会学、スポーツ科学、工学と渡り歩いてきましたが、根っこは一緒でね。人間を追求したいということです」。
スポーツ健康科学部ブログ[あいコアの星]

トレーニングジムのマシンは基本的におもり(慣性)、油圧・空圧(粘性)、バネ(弾性)を利用したものが多いが、運動中に負荷を変えることができない。ところが、伊坂忠夫が開発したマシンは、ER(磁性鉄粉)クラッチなどを利用しており、電圧をコントロールすることで、自由自在に負荷を変更できるという。

「重さを突然ゼロにもできます。これまで実現できなかった粘性と弾性を組み合わせたり、加減したり自由に調整可能。このマシンでは、人間の筋力を、速度と力と角度の3次元で分析することが可能なので、鍛えたい部分に合わせて、マシンの機能を変幻自在に操れるのです。また、この3次元分析によって従来よりも詳細に各個人の筋力特性を測定することができます。このあたりで力を強くしたい、スピードを上げたいなどの要求に従って、よりオーダーメードに、粘性に弾性を加えるなど、選手にとって絶妙のタイミングで負荷をかけられるわけですね。今まで、何台もマシンを替えて鍛えていたことを、この1台で完結することができるので、場所もとりません。スポーツ選手だけではなく、リハビリにも応用できるので、可能性はより広がります」

試作品なので、見た目はかなり武骨だが、トレーニングを変える大きな可能性を秘めているのである。もう一つ、特殊なゴーグルをかけてゴルフのスイングをすると、自分の動作と模範となるモデルの動作の両方がリアルタイムにゴーグルに線画として映し出されるシステムを開発した。

ゴーグルに映し出される映像。理想のフォームとの違いを検証することができる
製作中の各種実験機器

「ゴルフのフォームを修正するのに、テレビ等の映像をみるケースが多いでしょ。でも、その映像を見る時点で首の位置がずれていたり、真似ているうちに自己流になってしまったり。このゴーグルを使って、ゴルフをやったことのない学生に、遅い速度で50回ほど練習させると、プロが見てもまあまあやねと。フォームだけですよ、実際に飛ぶかどうかは分かりません(笑)」

実用性の高い試作品が研究室にはゴロゴロあるが、伊坂が目指すものはもっと遠くにある。
「テクノロジーを活用してスポーツを好きになる人、上手になる人を増やしたい。スポーツって自分が変われることを最も身近に理解できるものなんですね。それを工学を応用してお手伝いしたいわけです。スポーツで可能性を広げられることってもっとたくさんあるはずなんです」
そんな伊坂が参加した超学際的なスポーツ健康科学部が2010年に誕生する。

AERA 2009年7月6日号掲載 (朝日新聞出版)
研究室では、骨格標本が取材班を出迎えてくれました。他にも研究室にはいろいろなものが転がっていました......(→続きを読む)

取材こぼれ話

スポーツ健康科学部(2010年4月開設予定/現在設置認可申請中)の設置事務局長として奔走される毎日。その中で取材の時間をとっていただきました。研究室では、骨格標本が取材班を出迎えてくれました。他にも研究室にはいろいろなものが転がっていました。

AERAには掲載していないのですが、研究紹介のときに、説明に使われていた筋肉の模型が発泡スチロールの手作りだったりしたのも印象的でした。理系学部の研究室の前には、必ず研究紹介のパネルが貼ってあり、取材前に読むようにしています。専門家ではないので、100%理解できるわけではないのですが、どういった問題関心からどのような実験を行い、出た結果をどう分析しているのか・・・、その研究室の中身が一目瞭然です。このパネルを集めてもっと研究紹介に活かせないかと新しい宿題を見つけてしまいました。


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