2012年2月6日更新

人工知能の「エージェント」が、災害などの危機から人間を救う!

小川 均
立命館大学情報理工学部教授
小川 均(立命館大学情報理工学部教授)
工学博士。1950年大阪府生まれ。1973年大阪大学基礎工学部電気工学科卒業。1978年同大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程後期課程修了。同大学産業科学研究所講師を経て1988年から立命館大学。2004年から現職。「人間の考え方に限りなく近い人工知能」の開発がライフワーク。立命館大学合気道部の部長(合気道二段)でスキー、テニスも趣味。「人工知能を秘書や遊び相手のロボットなど人間のパートナーになるように、より便利で親しみのある存在にすることを考えてきました」
防災 ロボット

東日本大震災が発生してから、携帯電話にも頻繁に緊急地震速報が入るようになった。今では落ちついたようだが、独特の報知音から強い揺れが来るまで数秒から数十秒しかない。どうやって私たちは身の安全を確保すべきだろうか。

小川均が取り組んできた人工知能は、そんな時に「地震が来ます」と音声で警告すると同時にテレビや電灯、ヒーターなどの電気系統をシャットダウンするが、人がいる場所だけは明かりを確保するなど、個別の状況に応じて適切な判断を行うことが際立った特長だ。

「地震を告知するアナウンスも、相手は大人から子どもまでいますから変化が必要。大きな地震なら切迫した音声のほうが緊張感を与えられます。自分は元気でも、別の部屋で病人や高齢者が寝ていることもあるでしょう。そんな場合は『病人がいます』と追加警告して、その部屋までの明かりも確保する。このように、人間と設備・機器との間で人工知能が適切に判断・予測して必要なことを実行する、『エージェント』(代理人)と呼ばれるシステムを開発しています」

加えて、人間に親しみを感じさせるコミュニケーションも小川の目標だ。たとえば 音声入力による「しりとりマシン」も完成しているが、人工知能の応答は一様ではない。人間が「リンゴ」と言えば、素早く答えるだけでなく、時には考えこんでから「ゴマあえ」などと答えるのである。

「この場合はあくまでゲームですから、またやりたいなと感じてもらうため。人間と同じように不規則に反応するロボットが相手なら、より楽しくなるじゃないですか」

こうした人工知能のエージェントを、立命館大学情報理工学部が所有するITカー(アンテナや発電機を装備)に組み合わせて、情報収集が困難な災害地で様々な情報を収集して発信するシステムも開発中というから期待したい。

「さらに個人情報の収集端末として注目しているのがスマートフォン。GPS(全地球測位システム)で位置情報が把握でき、各種のセンサーを搭載しているので、どんな状態かも分かる。インターネットも利用できるので、いつかスマートフォンが生命を救うこともあり得ると考えています」

AERA 2012年2月6日発売号掲載 (朝日新聞出版)

このページに関するご意見・お問い合わせは 立命館大学広報課 Tel (075)813-8146 Fax (075) 813-8147 Mail koho-a@st.ritsumei.ac.jp

ページの先頭へ