2012年12月3日更新

褒める・叱るには信頼関係が不可欠。部下を動かすリーダーシップを探る

山浦 一保
立命館大学スポーツ健康科学部准教授
山浦 一保(立命館大学スポーツ健康科学部准教授)
修士(教育学)、博士(学術)。1972年福岡県生まれ。1994年熊本大学教育学部卒業、1996年同大学大学院教育学研究科学校教育専攻修士課程修了、2003年広島大学大学院生物圏科学研究科博士後期課程環境計画科学専攻修了。九州大学大学院研究生、静岡県立大学経営情報学部講師などを経て、2010年から現職。主な研究分野は上司・部下との関係性、リーダーシップとその開発など。ラグビーなどスポーツ全般の観戦が趣味。特に球技が子供の頃から大好きで、自らバッティングセンターでバットを振る時もある。ドライブも好きで「時間が許せばどこまでも」と遠距離を走ることも珍しくないという。
心理

部下を持つ上司やスポーツチームのリーダー、あるいは子どもを持つ父母を最も悩ませているのは、褒め方や叱り方ではないだろうか。

企業組織やスポーツにおけるリーダーシップと人間関係の調査・研究に取り組んできた山浦一保は、「相互の信頼関係によって、褒めたつもりでも逆効果になることがありますからね」とドキッとすることを言う。

「初対面の人たちが上司と部下役になって協働作業をする実験をしたことがあります。ある条件の上司は仕事に忙しくてほとんど無口。もう一つの条件の上司は『最近は調子どう?』などと声をかけるタイプを設定。作業後、それぞれの上司が部下の仕事ぶりを褒めたのですが、無口な上司の場合は効果がないどころか、仕事に対する部下の意欲を削いでしまいました。つまり、褒める以前に部下との信頼関係をつくることが必要なのです」

叱ることも同じで、信頼関係さえあれば、少しばかり厳しくてもマイナス面が出にくいという。

「褒める場合には、結果でなくプロセスを褒めることも大切。例えば子どもならテストの成績でなく、勉強をいつもより頑張ったことを褒める。部下なら『しんどい時もよく頑張ったよな』などとなります。叱る時には理由を明確にして、相手に納得させることが重要になります」

職場には様々な社員がいるほか、今後は国際化で外国人の参加も考えられる。上司のあり方もそれだけ難しくなりそうだが、「チームのメンバーは多彩なほうが変化に強いのです」と山浦は語る。

「その中で個人が成長し、チームとしても高い成果を上げる信頼関係づくりが私のテーマですが、リーダーは何がゴールで何がタスク(仕事)なのかを常に明確にすることが不可欠。それがあいまいであれば人間関係にも影響します。部下同士の横の関係を密にすることもチームを強くしますね」

ただし、「人間関係でまったく同じケースは一つとしてありません。だから人間関係をきちんと把握することがリーダーの責務。こう言えば必ずうまく行くという魔法の言葉などないのです」とクギを刺す。そんな山浦が挑戦する新たなテーマが「リーダーシップの継承」だ。

「京都・滋賀には歴史を誇る老舗が少なくありません。彼らがリーダーシップをどのように引き継いできたかを明らかにできれば、様々な事業をうまく次世代に継承できると思うのです。」

AERA 2012年12月3日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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