2012年12月24日更新

“アジア最後のフロンティア”ミャンマーで農業の発展に尽力

松田 正彦
立命館大学国際関係学部准教授
松田 正彦(立命館大学国際関係学部准教授)
博士(農学)。1972年広島県生まれ。1995年京都大学農学部林産工学科卒業。1997年同大学大学院農学研究科地域環境科学専攻修士課程修了、2001年同大学大学院同研究科博士後期課程単位取得退学。国立民族学博物館地域研究企画交流センター、国際協力機構専門家などを経て、2006年から立命館大学。2007年から現職。主な研究分野は、ミャンマーを中心とした東南アジアの農業生態・農村開発。趣味は「特にありません。昔からこだわりは少ない方だと思います」と語る。そんな自然体がミャンマーの農村に受け入れられてきた理由かもしれない。「そういえばミャンマーのビールが好きですね。イギリスの植民地だったので歴史があります。特に現地で飲むと本当においしく感じますよ」
社会

インドシナ半島の西部に位置するミャンマー(ビルマ)は、かつてコメの輸出が世界一ともいわれた肥沃な農業国だが、社会主義経済と軍事政権で低迷。2008年5月には国民投票で民主化へ歩みはじめたが、その直前に超大型のサイクロン(熱帯低気圧)が上陸。死者・行方不明者は14万人以上(外務省)にものぼり、農業にも甚大な被害をもたらした。

このミャンマーで、農業の調査・分析から政策立案などを支援してきたのが松田正彦だ。熱帯地域の農業や作物の専門家であり、2002年には国際協力機構(JICA)から派遣されて同国の経済構造調整政策支援(農業・農村部会委員)に参加。2010年からは農業灌漑省農業計画局でサイクロンによる農業被害の復興に向けて尽力してきた。

「ミャンマーは、アフリカの半乾燥地並みに雨の少ない所から水田に適した南部のデルタ地帯まで、気候や環境が地域によってかなり異なります。このため農業の手法も作物も実に多様。いわば国全体で干ばつや不作のリスクを分散してきたとも考えられます。サイクロンの被害にしても、農地の9割が海水による塩害で壊滅的という村があれば、翌年には早々と収穫量が復旧した土地もあります。多くの少数民族が住み、統計データもまだまだ未整備なので、現地に足を運び、地域ごとの農業の実態を丹念に調査・分析することが私の仕事だと考えています」

かつては政府開発援助(ODA)やNGO 活動の空白地帯だったが、サイクロン被災と民主化をきっかけに海外からの支援が急増。“アジア最後のフロンティア”とされ、中国や韓国も活発に進出している。日本もODAを通じて多額の支援を行っているが、資金援助だけで復興を促進できるわけではないという。

「地域で聞き取った声をグローバルに発信し、世界中の国々にミャンマーの直面している課題や、蓄積されている知恵を正確に理解してもらうことで、ODAなどの資金がより適切な支援につながると考えています。すべてはミャンマーの人々が決めていくことですが、彼らにとってのよりよい国づくりの実現に、少しでも私の研究が役立てばと思っています」

AERA 2012年12月24日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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