2013年3月4日更新

GIS(地理情報システム)を駆使して、来るべき巨大地震に備える

山田 悟史
立命館大学理工学部建築都市デザイン学科助教
山田 悟史(立命館大学理工学部建築都市デザイン学科助教)
博士(工学)。1981年千葉県生まれ。2003年日本大学生産工学部卒業。2008年同大学大学院生産工学研究科建築工学専攻博士後期課程修了。2009年から立命館大学で現職。主な研究テーマは、情報技術を用いた都市・建築計画手法の構築など。「小学校から大学まで実家の近辺でしたが、就職先だけは遠くなってしまいました(笑)」。可愛い盛りの娘(小学1年)がいるので、「週末は(彼女が勉強中の)英会話の相手やピアノ演奏の観客役になるのが無類の楽しみ」という。
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専門医と看護師がヘリコプターで救急現場に駆け付ける「ドクターヘリ」は、阪神・淡路大震災がきっかけだったという。2007年には「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」が成立。急速に普及してきたが、「実は具体的な運用効果は見えていなかったのです」と山田悟史は指摘する。

一機数億円ともいわれる配備予算はもちろん無尽蔵ではなく、救急車でも救命効果に変わりのない地域もあるはずだ。そこで山田は琵琶湖周辺を対象とした「ドクターヘリ運用効果の可視化」と題する特殊な地図を制作したのである。大量出血で早期の治療が必要な疾患・事故を前提に、地域の人口など4つの指標を解析。ある地図にはドクターヘリによる時間短縮効果が緑から赤のグラデーションで色分けされている。琵琶湖の東側は緑色が多く、ヘリを出しても30分以下の短縮。ところが西側は高島市を中心に60分以上の短縮を示す赤色が広がっており、それだけ救命効果が高いわけだ。琵琶湖周辺は大阪大学医学部附属病院のドクターヘリが管轄ということもあるが、これほど明瞭に違いの分かる地図は初めてではないだろうか。

「四国での配備計画も検討しました。ヘリの配置場所が最適で、到着時間の短縮を図るだけなら1機、人口数を加味しても4機で運用可能。つまり、ドクターヘリはそれだけあれば十分なのです」

こうした研究・解析手法は、GIS=地理情報システムと呼ばれる。地図という位置情報に様々なデータを加えて、高度な分析や判断をコンピューターで視覚的に表現する仕組みだ。山田はこれを津波からの避難地図にも応用している。

「青森県内の自治体からの依頼で、浸水地域から最寄りの避難場所までの移動時間(徒歩)を、やはり緑から赤のグラデーションで表示しました」

真っ赤に表示された地区は、避難場所まで53分以上。水位が上昇を始めれば避難はとても間に合わないが、「避難タワーを要所に設置したり、高速道路に上れる階段を設ける、あるいは外階段を付けた避難ビルの指定など、各種対策による効果も地図にしました」という。こうしたシミュレーションが可能なこともGISの見逃せない特長だ。

「これからチャレンジしたいのは南海トラフ地震の避難地図です。広域で深刻な事態が起きると想定されているので、できるだけ早くそれに備えた地図と効果的な対策を提案していきたいですね」

AERA 2013年3月4日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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