今日の学びが明日の未来をつくっていく。

立命館大学 学長 川口清史

昨年3月11日、私たちは東日本大震災と福島原子力発電所事故という人類史的な経験をしました。とりわけ、被害が深刻とされている岩手県から11名、宮城県から38名、福島県から21名の新入生が本日ここに列席しています。多くの苦難の中、よく立命館に来られました。心から歓迎いたします。

今、私たちが直面している事態は、負わされた深い心の傷あとから立ち直り、街を復興させるということにとどまるものではありません。生存や、人間同士のつながり、人類、社会、地球の未来そのものに対するもっと根源的な問いかけを通して、人類の新しい道のりを模索する営みが必要となっているのです。みなさんは、これから始まる大学での勉学をとおして、具体的に日本社会の再生に、人類の持続的発展に、貢献できる道を模索してください。創立者・中川小十郎によって策定された建学の精神は「自由と清新」です。「清新」は英語ではinnovationです。イノベーションは、立命館の創立以来、深く刻まれた歴史的伝統です。

立命館は一貫して、教学の、研究の、そして大学そのものの革新を続けてきました。そして、学問・芸術・文化・スポーツなどに秀でた多様な人材を受け入れ、社会に送り出してきました。この多様な人材の交流こそが、私立学園の社会的使命であり、優位性であるといえます。「多様性」は、今日の世界で最も重要なキーワードとなっています。多様性が重要であるのは、危機の時代、変化の激しい時代にあって、新しい発展の可能性は、多様性の中にしかその萌芽がないからです。この危機の時代にあって、大学がなすべきことは、新しい可能性を持つ人材、新しい可能性を開く研究を進めることであり、それは多様性の中からこそ生まれてくるのです。

立命館の一員となった諸君は、立命館の持つ多様性の中から新しい可能性を切り開く変革の文化、気風を、立命人の一員としてぜひ、我が物にしてください。絶えざる自己の革新への努力こそ、「立命」の名に恥じない生き方です。

君たちが大学で学び自己を創り上げていくことは、君たち自身の未来を創るだけではなく、日本社会の、さらには地球と人類の未来を創っていくことになります。敗戦直後に立命館に招かれ、長く総長をお務めになって今日の発展の基礎を築かれた末川博先生は、「未来を信じ、未来に生きる」という言葉を残されました。今日の学びが明日の未来を創っていくのです。新入生諸君、大学院生諸君。平和で民主的で、持続可能な社会を創る人間になっていこうではありませんか。入学、進学、おめでとう!!