団  士郎 先生(応用人間科学研究科 教授)

被災地でマンガパネル展や講演を実施
家族心理カウンセラー、家族療法訓練トレーナー、さらには漫画家・コラムニストでもある団 士郎教授(応用人間科学研究科)は、東日本大震災以降、本学の復興支援活動の一環として、被災地でのマンガパネル展や講演などを実施されてきました。

大きな被害とたくさんの命を奪った東日本大震災によって、私達の国は、直接被災した人と、様々な間接的影響を受けた人に分かれました。直接体験した人は、決して震災を忘れることはないでしょう。
一方、戦争や事件などにおいてもそうですが、当事者ではない人々は刻々と移り変わるニュースの中で、やがて忘れてしまうものです。
ですから、「忘れてはならない」と主張するよりも、被災しなかった人が忘れないように、また、大震災発生後に生まれた人々が震災について知ることができるように、間接的に見たり、聞いたり、触れたりできる「装置」が必要だと思います。さらに、簡単に忘れたり、記憶から消えないようにしておくことは、結果的に予防や防災にもつながると考えています。

私が2011年秋から被災地で開催しているマンガ展のプロジェクトは、「10年続ける」と言っています。これは、1回だけ盛り上がるようなイベントにはしないという宣言であり、このマンガ展は「忘れないための一つの『装置』」なのです。10年続けることは、過去のものにしてしまわないということです。過去も現在も未来も、被災地の復興とともに存在すること。たとえば、10年後に「10年前は、あの壁にしかパネルをかけるところがなかったですね…今ではこんな立派な建物が建ちました」と話せる日が来るかもしれません。その時初めて、このマンガ展を続けてきたことや、被災地を見続けてきたことの意味が分かるのかもしれないと思っています。

被災者にとってマンガが「どんな効果があるのか」という話ではなく、「細く長くやり続けます!」と発することが大切だと思っています。被災地の人々には、「ずっと忘れないでいます」という気持ちが届くのではないでしょうか。自分がやっていることを、どこかで誰かが見てくれている、誰かは知ってくれている、そう思うと力が出てきます。これは、被災者にも支援者にも言えることです。その人の中にある力や、心の中に持っているものを大切にするということ、それがこのマンガ展の目的の一つでもあります。

被災地復興支援には大規模な、多くの人々の力になるモノも必要ですが、極端なことをいうと、たった一人のための支援も大切だと思うのです。誰か一人でもちゃんと支えることができたら、その人にとっての世界のすべてを助けたことになるでしょう。誰かが、何かから勇気をもらう事が、それが波及していく世界に繋がっていることを知ってほしいです。

復興には長い時間がかかります。その中にはゆっくり役に立つ援助と、緊急的に役に立つ援助、どちらも必要です。どんなやり方が役に立つのかは、援助する側が考えなければならないことです。自分だったら、何ができるか、何を続けられるのか、それを考えて「装置」をつくり、それを通じて被災地へ関心を持ち続けること。それが、被災者と同じ時代に生きている私たちにとって大切なことではないでしょうか。

3月11日あなたはどう迎えますか?

私にとって今度の3.11は、このプロジェクトと動き始めて、3年目のスタートの日です。だからそう思って、今年のマンガ展の準備を開始します。

企画/犬塚 直希(経済学部6回生)、田中 裕太郎(文学部4回生)、國田 華奈(産業社会学部3回生)、樽見 彩加(文学部3回生)、梅田 友裕(政策科学部2回生)、岡戸 亜沙美(産業社会学部2回生)、樋川 貴之(情報理工学部2回生)、松下 健太郎(情報理工学部1回生)、簗瀬 百合香(産業社会学部1回生)