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2017年度 立命館西園寺塾 5月13日講義「人類史からフィールドへ  となりのトトロの世界をFWする」を実施

2017年5月13日(土)
 ・13:00~14:30 講義
          講師:立命館西園寺塾 塾長・学校法人立命館副総長
                     渡辺 公三

 ・14:45~16:00 ディスカッション
 ・16:00~17:00 グループワーク


【指定文献】
 『人種と歴史(新装版)』クロード・レヴィ=ストロース【著】 みすず書房
【参考文献】
 『闘うレヴィ=ストロース』渡辺公三【著】平凡社新書
【事前課題】
 『となりのトトロ』(監督:宮崎駿)を見てくること

 


▼受講した塾生のレポート(T.K.さん)▼
 今回の講義では、現代⼈類学の2 つの視点として、マクロな視点(⿃の眼)である⼈類史研究と、ミクロな視点(⾍の眼)であるフィールドワークという⼿法を学び、前者の成果であるレヴィ=ストロース『⼈種と歴史』を通じて「⽂化の差異と多様性」「⾃⺠族中⼼主義」「進歩と累積と停滞」などのテーマで議論し、また『となりのトトロ』を通じてフィールドワークを疑似体験した。
 講義中にも紹介のあった『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイヤモンド【著】や『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ【著】など、現在の経済発展の進捗や内容の地域的な差を、その地域の⺠族間の能⼒差ではなく、根底にある「構造」や「仕組み」から解き表す書物がベストセラーになっている。同時に、⼀般的な社会規範としても、⼈種差別をなくし、平等や公平が善であるという認識は、少なくとも先進国と⾔われる国々では浸透しているように思われる。しかし今、その先進国で、その認識とは真逆のことが起こっているように思う。
 そして、それは単純な“⺠族”の対⽴ではないように⾒える。元々“⺠族”を意味のある塊としてグルーピング出来ていた条件(⽣活する空間が近接し、同⼀の情報を得やすく、結果として価値観が⼀致しやすい)は、その場所・空間を無視するような情報流通⾰命や、国の枠まで越えた企業活動によって⼒が弱くなっている(それを恐れる国は情報と企業活動を遮断する)。その結果、個⼈は個々独⾃の価値観を持ち、何にも依存や強制されることのない世界を持つことが出来ることになった。しかし、それはある意味孤独であり、精神的物質的な余裕が無いと耐えきれないのではないかと考えている。もし⽣活が脅かされ、尊厳やプライドが傷つけられた時には、ある仮想の、そして⾃らを利するような分かりやすいグループに取り込まれたくなるのではないか、それが先進国で起こったことのような気がする。
 上記の通り、空間を無視する情報流通や企業活動が、個⼈の独⽴化を推進した⼀⽅で、あくまでも空間的な国や地域に依存する政治がある訳だが、その彼らが⾃らの利益のためになるようなグルーピングを、意図的に⾏おうとしているのが最近の政治情勢ではないかと考えるようになった。


 


▼受講した塾生のレポート(Y.N.さん)▼
 指定文献を読んで講義に臨んだが、実際に参加することで、ようやく少し学び方がわかった気がした。『人種と歴史(クロード・レヴィ=ストロース)』という指定文献をもとに、人種問題について考えるのではなく(それはそれでよいのかもしれないが)、「考え方」を学び、自身の仕事にあてはめて考えてみることが重要なのだと気づいた。
 講義のあと、ディスカッションの内容も踏まえて、改めて会社における「多様性」「相対主義と寛容」について考えてみた。

 弊社でも、海外国籍や女性、家庭事情の異なる従業員など、みんなが力を発揮できるように、「ダイバーシティ」の取組みが行われている。一方で、我々の日常の業務の中では、そういった個人の属性の違いで苦労することは、あまり多くない気がしている(ある程度制度が整っていること、また私自身が当事者ではないことが多いからかもしれないが)。
 ディスカッションでM&Aの話が挙がったが、同じ社内でも、ビジネス(売り物)が異なる事業部門の間には大きな壁があり、協業が必要となるプロジェクトでは、互いのやり方と利害関係を認めつつ進めることに非常に苦労しているのが実情である。
 ディスカッションで「民族」(「クラスタ」)の定義について議論があり、「同じ価値観を共有する単位」という意見が出たが、自分の仕事の周りでは、まず「同じ目的(=ビジネス)を共有する単位」=事業部門から考えてみようと思った。自分の属する事業部門と他事業部門との違い(ビジネス、慣例、etc.)を、会社トータルとしてのミッションに照らして認識することで、よりよいやり方を考えていきたい。
組織は、「民族」とは異なりトップの判断でどんどん変わっていく。いまネットワークにまつわる環境は非常に大きな転換期にあり、技術と業態の変化が速く、組織変更も頻繁になっている。人(クラスタの最小単位でもあり属性そのもの)と組織(目的を共有する単位)を、どれだけ適切に認識できるか、どこまで視野を広げられるか(全体を自社と置くのか、或いは同業他社を含めた業界、ユーザを含めた社会全体と置くのか)が重要なのだと思う。
 あわせて、『となりのトトロ』を通してフィールドワーク(虫の目)を学んだ。職場でも、事例分析をしてみようと思った。

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