スポーツ健康科学部の学生にしか
できない復興支援を

熊本地震が起きた時、私はすぐに支援活動ができなかったのですが、何かしたいという思いはありました。半年後、東北の被災地支援をしている人に話を聞いたことがきっかけで、私も行動しようと決意。スポーツ健康科学部の学生にしかできない活動を模索する中で、大学の団体で地域の子どもたちに運動指導をしてきた経験を踏まえ、「運動で人を集めてコミュニティを作る」活動をすることにしました。
学部の友人や運動指導団体のメンバーに声をかけたところ、すぐに15人が集まり、9月に「KS1」という団体を発足。「熊本をスポーツの力で一つに」という願いを込めた団体名です。大学の災害復興支援室に相談すると、活動の場として熊本県西原村を紹介されました。現地を訪れると、800人あまりの方が仮設住宅に暮らし、知り合いが少ないこともあって家にこもりがちな状況がありました。そこで私たちは、西原村の集会所で運動教室を行い、仮設住宅に暮らす方々のコミュニティづくりのお手伝いをすることにしたのです。

活動を継続・発展させるため、助成金に出願

最初は、金曜日の夜にレンタカー1台で出発し、フェリー泊の後、西原村で運動教室を2日間開催しました。事前のポスティングと開催当日の声かけによって集会所に集まった参加者に、ゲームを通して自己紹介してもらった後、KS1の活動内容と運動の大切さについて話をし、ストレッチやダンス、頭を使う運動、ラジオ体操など、参加者の様子を見ながら臨機応変に指導します。参加者は毎回10人程度、高齢者と小さなお子さんが中心です。
10月に活動を始めた時は1、2回限りの活動を想定していました。しかし当初の目的である「コミュニティづくり」ということを考えると、続けて活動したいという思いが募り、11月から1年間、活動を継続させることにしました。ただ、熊本への交通費をメンバーの自費と募金でまかなっていたため、活動が続けられなくなるメンバーが出てくることが心配でした。そこで、復興支援室に相談したところ「学びのコミュニティ集団形成助成金」を紹介していただき、出願することを決めました。
助成金のことは全く知りませんでしたが、お金をいただくからにはしっかりした活動をしなければという意識にもつながりましたし、何より費用面で活動できないということがなくなったので、助成を受けたことが、団体としての活動を円滑に行う重要なポイントになったと思います。

私たちの思いを地元の方に引き継ぐことができた

回を重ねるごとに連続して参加する方が増え、「運動教室の人」「立命館の人」と認識してもらえるようになりました。震災の時の様子や、今の不安な気持ちを話してくださる方がいたり、参加者同士で会話が生まれているのを見ると、一番の目的だった「コミュニティづくり」に少しは役立てているのかなと嬉しく思いました。
2017年10月までの1年間、初回をふくめ計13回の活動が終了しました。まだまだ十分とは言えませんが、運動のきっかけは提供できたと思います。私たちの思いと運動プログラムをまとめた冊子を作ったところ、社会福祉協議会の介護予防プログラムやイベントなどで活用いただき、私たちの思いを地域の方の手に引き継ぐことができたのかなと思っています。

リーダーとは何かについて
深く考えるきっかけになった

1年間の活動をふり返ると、専門分野を活かして復興支援の一端を担えたことは純粋に嬉しかったです。最初は私の個人的な思いにすぎなかったのに、それを理解してくれるメンバーが集まってくれて、当初は2回だけの予定が、1年ものプログラムになった。そして今、KS1は、1年生が代表を引き継いでくれて、今後の活動を検討中です。次の代にも活動が続いていくのは感慨深いものがあります。
組織のリーダーになったことで私自身も成長できました。元来はなんでも一人で進めてしまうタイプなのですが、メンバーに意見を聞いたり、頼ったりすることも少しはできるようになったと感じています。もっともっとメンバーの話を聞いてから実行に移すことができるようになりたいという目標も見出すことができ、リーダーとは何かについて深く考えるきっかけにもなりました。助成金に出願することによって、1年も先の計画や予算を立てたことも勉強になりました。将来、テニスクラブを経営したいと思っているので、貴重な実践経験ができたと感じています。

一覧へ戻る