立命館小学校

RITSUMEIKAN PRIMARY SCHOOL

立命館小学校

世界の問題を
自分事として行動に向かう
「globally-minded」を育てる

01 「人生の根っこ」を育てる
豊かな実りをもたらすように

 ⽴命館⼩学校は、2006年の開校当時から掲げる「培根達⽀」の理念の下先進的な教育活動に取り組んでいる。学祖である⻄園寺公望が愛した⾔葉「培根達⽀」は、「⼈⽣の根っこをしっかり鍛えてやれば、やがてその根っこの⼒が枝葉まで達して豊かな実りをもたらす」という意味。その「⼈⽣の根っこ」をより豊かで確かなものにするために、⽴命館⼩学校では、教育の4つの柱を掲げている。「確かな学⼒を育てる教育」、「真の国際⼈を育てる教育」、「豊かな感性を育む教育」、そして「⾼い倫理観と⾃⽴⼼を養う教育」。これら4つの教育を推進するため、独自の取り組みを展開している。その1つが、プログラミング的思考⼒を伸ばすICT教育だ。バーチャル空間でものづくりや建築ができるMinecraft(マインクラフト)というゲームのエデュケーション版を教材として活用し、楽しみながら思考力や問題発見・解決力を磨いている。また、異年齢の集団で学校⽣活を過ごす「ハウス活動」も立命館小学校の特色だ。1年生から6年生までの異年齢の集団「ハウス」を構成し、普段の清掃活動をはじめ、遠足やスポーツフェスティバルなどの行事にハウスで参加。異年齢での学び合いを通じて、協調性や自立心を養えるようになっている。

02 多様な価値観を尊重できる
「真の国際人」を育てる

 「真の国際⼈」を育てることを⽬標に、グローバル教育にも⼒を⼊れている。⽴命館⼩学校では、学年や⽬的に応じて選択できる海外研修プログラムを設置。⼦どもたちは中国やアメリカ、シンガポールなど計6カ国の海外の提携校等で語学⼒や⾃⽴⼼を養うことができる。普段の授業においても英語ネイティブ教員と⽇本⼈専科教員の2名体制でオールイングリッシュの授業も⾏っている。つまずきを克服しながら、着実に英語⼒を伸ばすことが可能だ。

 しかし、⽴命館⼩学校が⽬指す「真の国際⼈」とは、単に語学が堪能な⼈ではない。世界のさまざまな⽂化や価値観に共感し、社会の課題に対して⾃ら動くことができる⼒=globally-mindedを育むことが最も重要視される。このマインドの育成を目的として毎年夏に開催されるのが、「ワールドウィーク」という一大イベントだ。立命館アジア太平洋大学(APU)の国際学生を先生として招き、異なる文化や価値観を学ぶ特別授業を実施。1週間にわたる学生との交流の中で、子どもたちはいろいろな「違い」を知り、それを受け入れる力を養っていく。英語などの語学⼒を世界の⼈々と協働するためのツールとして活⽤し、多様な⼈々と共⽣できる⼈こそが「真の国際⼈」なのだ。

03 学校全体で子どもに向き合う
教科連携の取り組み

 世界の課題に目を向け、異なる文化の人々と協働する力を育てるうえで、SDGsは非常に重要なキーワードになる。立命館小学校は早くからその重要性に目を向け、カリキュラムの中に反映してきた。

 英語科の三ツ木由佳教諭は、自ら率先して英語ネイティブ教員の Janiele Shierly 教諭と共にSDGsのカリキュラム化を研究し、授業の中で取り上げてきた。5年生では1年を通じてSDGsの要素を組み込んだ学習プロジェクトを展開。5月~7月にかけて行われる「Peace Week」では、広島での平和学習行事と普段の授業を関連付け、世界で起こっている紛争について知り、授業参観や他学年児童の前で広島で得た学びのプレゼンテーションを行う。このプロジェクトの特徴は英語科だけで完結するのではなく、国語科や社会科、家庭科など教科連携型で実施していることだ。三ツ木教諭は、グローバル教育を推進するうえで教科連携の学びが重要だと語る。

左:三ツ木 由佳 英語科 教諭
右:Janiele Shierly 英語科 教諭

 「国際人を育てると言った時に、海外研修プログラムがある、英語教育をしている、に加えて、子どもの内面を揺さぶる何かが必要だと感じていました。それぞれの教科の中だけではなく、学年として、学校全体としてできるグローバル教育とは何か。そのことを追求した結果、学校行事を軸にしてさまざまな教科が連携する教育の形に至りました。教科がつながることで、子どもたちの中の学びが混ざり合って、いろいろな知識と思考を結び付けながら世界に向き合うきっかけを与えられないかと考えたわけです」

 SDGsの各ゴールは、それぞれが複雑に絡み合っている。立命館小学校が試みた学校全体での学びは、持続可能な未来を築いていくうえで必要な、複眼的な視点を養う意味で非常に意義があると言えるだろう。

Peace Weekの活動風景

04 卒業生から
世界の実情を知る

 給⾷感謝⽉間と関連付けた単元では、⽴命館⼩学校の卒業⽣の芦⽥奏穂さん(⽴命館⼤学在籍)をゲストに招き、Food Waste(⾷品ロス)の問題についてレクチャーが⾏われた。

 芦田さんは高校生の時に『TABLE FOR TWO』※の活動に参加。開発途上国での飢餓の状況や先進国での食品ロス問題への関心を深めながら、自身も積極的に取り組みを行った。その1つが「おにぎりアクション」だ。おにぎりに関する写真を投稿することで飢餓で苦しむ開発途上国の子どもたちに給食を届けられる。芦田さんは学校内に働きかけ参加を呼びかけるとともに、同級生に食と健康に関する問題を伝えた。

 小学生へのレクチャーを終えた芦⽥さんは⼦どもたちの反応について次のように語る。

 「⾼校⽣の頃に取り組んでいた『TABLE FOR TWO』のことを伝え、⼦どもたちが私たちもやってみたいと⾔ってくれたことは嬉しかったです。⼩学校の段階からSDGsや世界のさまざまな問題について知ることができるのはすごく貴重な経験なので、ぜひアクションにつなげてほしいです。私⾃⾝も講師経験を糧に、世界の問題や魅⼒を伝えられる英語教師を⽬指して頑張っていきます」

 そして、5年⽣の最終段階では、「Kids in Actionプロジェクト」と題し、下級⽣である4年⽣に向けて、学んだ内容を分かち伝えるプログラムを実施。エネルギー問題や難⺠問題などSDGsに関わるテーマを選択し、学んだことを英語で発表した。⼦どもたちは芦⽥さんのレクチャーも思い出しながら、試⾏錯誤しながらプレゼンテーションの準備を進め、最終的には動画収録を⾏い、4年⽣に共有していく。

芦⽥ 奏穂さん
立命館大学 在籍

Food Wasteについて教える芦田さん

※TABLE FOR TWO:開発途上国の子どもたちの食に関する問題を解決するために立ち上がったNPO法人による活動

05 学んだ子どもたちが、
世界をかえていく

 ここまで見てきたように、立命館小学校では世界に目を向け、考え、他者に伝える機会が設けられている。三ツ木教諭は子どもたちの将来に対して次のような思いを述べる。

 「子どもたちには、ローカルとグローバルを行き来する思考を持ってほしいと考えています。世界のことを知り、自分の身の回りのことを知る。その2つがつながることで、世界の課題が自分の課題として意識され、行動につながります。そのような行動力を持った『真の国際人』になってほしいです」

 世界のことを自分事として捉えることは、SDGsの達成を目指すうえで非常に重要な考え方だ。立命館小学校で学び成長した子どもたちが世界を変えていく存在になることに大きな期待を寄せたい。

※記事中の肩書は2020年3月31日時点のもの

東洋経済ACADEMIC 「SDGsに取り組む小・中・高校特集」掲載