高エネルギー宇宙線(一次宇宙線)が宇宙空間から地球大気に入射すると、大気の
原子核と衝突してパイ中間子・電子・光子などの二次粒子が発生し、この二次粒子が
さらに大気の原子核と衝突し、という過程が繰り返されて多数の粒子に増殖する現象。
もとの粒子のエネルギーが細分化されて二次粒子を生み出せなくなるようになると
粒子数は減少し、シャワーは減衰します。約100 TeV以上のエネルギーの一次宇宙線によるシャワーは地上まで到達し、粒子検出器により観測できます。
粒子が温度で定まる統計的なマクスウェル分布を超えた高いエネルギーを持つに至る過程。フェルミは1949年、宇宙線がべき乗型のエネルギー分布を持つことを説明するため、荷電粒子が運動する星間磁気雲と衝突により加速される機構を導入しました。
衝突が近付く方向なら加速され、遠ざかる方向なら減速されるが、多くの環境では統計的には前者が勝るため、全体としては加速されます。
この統計的な加速は今日、衝突毎に得るエネルギーが運動速度の二乗に比例することから「二次フェルミ加速」と呼ばれています。
ベル(1978)、ブランドフォードとオストライカー(1978)は独立に、超新星残骸における衝撃波ではフェルミ加速が効率的に起こることを示しました。この過程は、衝突毎に得られるエネルギーが衝撃波の速度に比例することから「一次フェルミ加速」と呼ばれています。
これらの加速機構がどのような天体でどう実現されているかについては理解が進んでいないため、現在でも理論的・実験的に興味深い研究対象になっています。
屈折率nの媒質中では光速はc/n(cは真空中の光速)になるため、高エネルギーの荷電粒子がこれより速く媒質中を進むと、荷電粒子周囲の電磁場が後に「おいてきぼり」となり、波面が重なって衝撃波が生じます。この衝撃波がチェレンコフ光です。
速さv=βcで走る荷電粒子からのチェレンコフ光の放出角度はcosθ=1/(nβ)で
表され(ただしnβ>1)、1気圧の大気中を光速近くで走る荷電粒子の場合ははθ=1.3度となり、進行方向に開いた細長い円錐状に放出されます。
ガンマ線は主に非熱的過程によって放射されます。これに対し、
より波長の長い電磁波は主に熱的過程により放射されます。
高エネルギー粒子が高エネルギーガンマ線を放出する機構としては、主に以下の四つが挙げられます。
ガンマ線を検出する機構としては、以下の三つが用いられます。
どの検出法を用いるかは、主にエネルギーによって決まり、
100keV以下では光電効果、数MeV以上では電子・陽電子対生成が、その間はコンプトン効果が用いられますが、
検出に用いる物質の原子番号にもよります(左図)。
高エネルギーのガンマ線を電子・陽電子対に変え、それらの飛跡とエネルギーを測定するタイプのGeV領域のガンマ線検出器。原子番号の大きな金属箔を挟み込んだ飛跡検出器(トラッカー)と、電子・陽電子を吸収してエネルギーを測るカロリメータから構成されます。トラッカーが自己トリガーできない場合は別にトリガー用検出器が用いられます。また、荷電粒子のバックグラウンドを排除するためにアンタイコインシデンス検出器を周囲に配置します。
空気シャワー中の荷電粒子からのチェレンコフ光は、空気の屈折率によって定まる
一度足らずの広がりで光のフラッシュとなって地上に降り注ぎます。この光を集光して
光電子増倍管などの高速の光センサーでとらえれば、シャワーを起こした粒子の
方向を知ることができます。陽子などの宇宙線は惑星間磁場などで曲げられてしまう
のに対し、ガンマ線は直進し、発生源の方向を指し示すので、望遠鏡として働く
ことになります。チェレンコフ光は微弱ですが、直径数mの反射鏡で集光すれば、約1 TeV以上のエネルギーのガンマ線の観測が可能です。ただし、荷電宇宙線の起こす空気シャワーからのチェレンコフ光も同様の光のフラッシュとなるため、チェレンコフ光の像の特徴の違いを利用して、ガンマ線シャワーと識別する必要があります。このようにチェレンコフ光の像をとらえる能力を持つものを解像型チェレンコフ望遠鏡(imaging atmospheric Cherenkov telescope)と呼びます。
1054年の超新星の残骸で、藤原定家の「名月記」に「客星あり」と
記録されていました。中心には、電波からガンマ線にいたるまでの
広い波長の範囲で33ミリ秒周期の
パルスを出すパルサーが見つかっています。
1989年アメリカのホイップルグループにより最初の超高エネルギーガンマ線天体としてとらえられました。
ミリ秒から数秒の周期で規則的に脈動する放射を出す天体。
通常の星ではこのような高速回転を保つことはできないため、回転する中性子星であることはほぼ間違いありません。初めは電波観測で1967年に発見されましたが、X線やガンマ線を出すパルサーも見つかっています。
通常の恒星と中性子星やブラックホールなどのコンパクト星との近接連星で、
X線を強く放射する天体。
恒星から物質がコンパクト星へ降着して降着円盤を作っており、高温になった
円盤の表面からX線が放出されると考えられています。
進化した星が最後に内部から爆発を起こす現象。
星を作っていた物質の多くは爆発で吹きとばされますが、
元の星の質量が大きいと、爆発後の中心には中性子星や
ブラックホールが残されます。1987年に銀河系の
伴星雲である大マゼラン雲で爆発した
超新星1987Aからはニュートリノバーストが観測されました。
超新星爆発の際に放出された物質が星間空間物質と相互作用して
作られる、拡大していく球殻状の構造。相互作用の結果、衝撃波面が
でき、フェルミ加速のメカニズムが働いて、荷電粒子が
高エネルギーまで加速されていると考えられています。
1950年代から有力な宇宙線の起源天体とされてきました。
銀河のうち非常に明るく小さな核を持つ天体。セイファート銀河、
BL Lac天体、クエーサーなどに分類されます。中心には巨大な
ブラックホールが存在して、その膨大な放出エネルギーの源と
なっていると考えられています。
ブラックホールに落ち込む物質は、角運動量を持つために
中心に落ち込む前に降着円盤を形成し、磁気流体力学メカニズムにより
円盤に垂直な方向に高速のジェットが吹き出し、粒子を
高エネルギーまで加速しているとされています。M. Mori, Updated March 17, 2016