教員一覧

物理科学科のスタッフ一覧です。
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教授

池田 浩章
池田 浩章
今田 真
今田 真
小笠原 宏
小笠原 宏
川方 裕則
川方 裕則
是枝 聡肇
是枝 聡肇
清水 寧
清水 寧
菅原 祐二
菅原 祐二
滝沢 優
滝沢 優
中田 俊隆
中田 俊隆
根本 泰雄
根本 泰雄
深尾 浩次
深尾 浩次
森 正樹
森 正樹
藪 博之
藪 博之
和田 浩史
和田 浩史

講師・助教・特任助教・初任助教

平井 豪
講師
平井 豪
藤井 康裕
講師
藤井 康裕
荒木 優希
助教
荒木 優希
奥田 剛司
助教
奥田 剛司
中田 惟奈
助教
中田 惟奈
根間 裕史
助教
根間 裕史
長谷川 友里
助教
長谷川 友里
平野 史朗
助教
平野 史朗
横山 修一
助教
横山 修一
吉岡 潤
助教
吉岡 潤

池田 浩章 (教授)  

池田 浩章

物性物理学は、物質のマクロな性質を微視的な立場から理解しようとする学問で「もの」の理を追求する物理学です。例えば、同じ元素からなる結晶でも、ある組成では磁石の性質(磁性)を示すものが、圧力を加えたり、少し組成を変化させたりするだけで突如、超伝導を示したりします。その起源は何か。現在では、この磁性と超伝導が表裏一体の関係を持ちうるという事が徐々に明らかになってきました。また、物質の幾何学的な構造(トポロジー)から生じるディラック電子やマヨラナフェルミオンは素粒子の分野でも馴染み深い物理概念です。研究の舞台となる結晶は、色々な元素の無数の組み合わせで構成され、さながら人工制御可能な小宇宙と言えるでしょう。そこではまだ見ぬ新奇な量子相や素励起、準粒子が存在するかもしれません。このような想像に心躍らせる一方で、日常社会に還元できる「もの」ができないか、日々、精進しております。皆さんにも卒研等を通して是非その一端を垣間見、社会に巣立つための糧としてもらいたいと思います。

今田 真 (教授)  

今田 真

物質の性質は、ほとんどが物質中の電子の性質で 決まっています。例えば、ガラスが透明なのは、ガラス の中の電子が光をほとんど吸収しないからです。電子は 原子核の周りを回っていますが、自転もしていて、 この自転のことを「スピン」と呼びます。鉄は同じ向きの スピンを持つ電子が多いために磁石になります。 ほかにも電子のスピンのために、温度を変えると金属が 絶縁体に変わったり、実に様々な興味深い性質が現れる ので、私たちはそのメカニズムを解明することを目的に 研究しています。

物質中の電子の状態を直接的に知るために、紫外線 やX線を物質に当てて、飛び出してきた電子のエネルギー を測定する「光電子分光(こうでんしぶんこう)」などの分光 実験を、大学だけでなくSPring-8などの研究施設で 行なっています。

小笠原 宏 (教授)  

小笠原 宏

専門分野:固体地球物理学

世界でもっとも深い地下3.6Km地点で、至近距離からの震源直接観測をおこないます。

地震発生のメカニズムを解析する震源の物理学、とりわけ地震発生準備過程の研究に力を入れています。現在は、世界で最も深い南アフリカの金鉱山において、震源からわずか100m以内という至近距離からの直接観測と調査をおこなっています。この研究は国内の6大学及び研究所の研究者らでつくる日本グループと、南アフリカ、欧米の各グループからなる国際産学協同プロジェクトです。実験で使用する各種の計測装置では、地震の発生から終息までを世界で最も詳細に完全収録できます。

日本の場合は、地震の震源のほとんどが地下10Kmであるために、震源付近での直接調査・研究が不可能です。仮に直接研究ができたとしても、その一生を完全収録するためには百〜千年が必要です。

一方で南アフリカの地震は、地下2〜3Kmでの採掘活動から数ヶ月以内に採掘域の100m以内で発生する特徴があるために、事前に震源域に観測計器を埋設して地震の一生を記録することが可能です。

このようにして地表での自然地震観測では得ることのできない地震の詳像を明らかにしつつあります。これまでに6つの金鉱山で研究をおこない、2006から世界で最も深い地点で欧米との共同観測が始まりました。

川方 裕則 (教授)  

川方 裕則

地震という現象は地下深くで発生するために何が起きているかを視ることが難しい現象ですが、「直接測る,目で視る」ことができる地震学的研究を目指して、実験研究に取り組んでいます。岩石試料を用いた、三軸圧縮破壊試験(地下の地震発生層に相当する圧力条件下で実施する破壊試験)や大型二軸せん断試験(メートルスケールの大きい試料を使い模擬的な断層上で地震のようなすべりを発生させる試験)をおこない、目視での観察に加えて、弾性波(破壊や高速すべりにともなって発生するアコースティック・エミッションと呼ばれる波。地震に対する地震波に相当)の計測を実施します。時には、能動的に弾性波を送信し、試料内部の波の通り方についても調べます。また、実験後には、試料のX線CT画像を取得し、試料の内部構造(できつつある断層の様子)についても調べます。

最近は、フィールドを斜面にも展開し、地すべりに先行して発生することが期待される地下の弾性波の通り方の変化についての知見を得ることを目指しています。実験室での土層への注水実験と斜面現場での弾性波計測を並行して実施し、どのようなメカニズムで弾性波の通り方が変化するかを明らかにしようとしています。砂や土のような固まっていない粒状の媒質では、波がどのように伝わるのかよく分かっていないため、難しいテーマですがその分だけやりがいもあるテーマです。

さらに、室内実験と自然地震の双方にまたがるテーマとして、地震の前震の発生様式の解明を目指した研究や、地震のような大きい破壊と岩石試料内で発生する非常に小さい破壊との関係について調べる研究もおこなっています。

菅原 祐二 (教授)  

菅原 祐二

私の専門は超弦理論(超ひも理論とも言われます)です。超弦理論はすべての素粒子とその間に働く相互作用、そして宇宙の構造を決定する基礎理論の有力な候補とされており、ときおり誇大広告気味に「Theory of Everything」などと言われることもありますが、実際は全く未完成な理論です。物理の他分野の人からは「数学的すぎる」とか「formal theory」と言われることも多く、一方数学の人からは アバウトなことをやっているように見られがちですが、その辺の「浮世離れした」部分と「いいかげんさ」がこの分野の魅力と言えなくもないようです。大きな謎にチャレンジする気概を持った皆さんが本研究室に参加して下さることを期待しています。

中田 俊隆 (教授)  

中田 俊隆

我々の身の回りにある固体のほとんどは結晶であり、その性質は、原子の並び方によって決定されます。液体・気体から、この結晶がどのようにして生まれ、その形はいかにして決まるのか、そしてそれらをどのようにしてコントロールするか、すなわち「結晶成長学」が私の現在の一番のターゲットです。

これらはいかにも簡単な現象であり、良く分かっているかのように思われるかもしれませんが、この現象を既存の科学理論だけから予測することは、いまだに困難です。例えば最近話題を呼んでいる青色発光ダイオードも、半導体の高品質結晶の作製技術が実用化の最大のポイントでした。

最近では、特にタンパク質など有機物の結晶化に注目しています。有機物は無機物とは異なり、一つ一つの分子が個性的な形をしているため、その結晶化過程には未知の点が数多く残されており、なかなか挑戦的な分野だと考えています。

深尾 浩次 (教授)  

深尾 浩次

ソフトマターとはマクロなスケールとミクロなスケールの中間的なスケールに独自の構造とダイナミクスを持つ系であり、ミクロからマクロに渡る広いスしケールに豊富な時空の階層構造を持つものをいいます。

たとえば、高分子、コロイド、液晶、エマルジョン、粉体などがソフトマターに属します。それぞれの物質についての研究は古くから行われてきたのですが、近年、これらの物質をまとめて、ソフトマターと呼び、これらの示す多彩な物理現象を統一的に理解しようとする試みがなされています。

このなかでも、私は高分子を対象としたガラス転移、結晶化による構造形成、ガラスダイナミクス、dewetting 現象になどに興味を持って研究を進めています。

森 正樹 (教授)  

森 正樹

専門分野:高エネルギー天体物理学

宇宙の観測には古代から目に見える光(可視光)が用いられてきましたが、20世紀後半に入って電波や赤外線、紫外線、X線、ガンマ線という目に見えない光をとらえる技術が発達し、これらの光で宇宙を観測するようになると、可視光では全く見えない様々な天体が思いもかけない形態で存在することが次々に明らかに なってきました。

特に、最も波長の短いガンマ線は、重い星が進化の最期に大爆発を起こした後に残される超新星残骸、周期的なパルスを放出し中性子星とされるパルサー、中心に巨大ブラックホールを持ちエネルギー源とする活動銀河核など、最も活動的な高エネルギー天体の研究に適しています。これらの天体では電子や陽子が高エネルギーまで加速され、地球に降り注ぐ宇宙線の源になっていると考えられますが、周辺の放射や物質とのこれらの粒子の相互作用からガンマ線が発生します。ガンマ線は磁場に影響されずに直進し、その到来方向が発生源の方向を保つため、これらの粒子加速現象の研究にはうってつけの探針といえます。

天体からのガンマ線は、大気の厚い層のために、地上では直接観測できません。人工衛星に搭載した粒子検出器や、ガンマ線シャワー現象からの光を通してガンマ線を間接的に観測する地上ガンマ線望遠鏡(チェレンコフ望遠鏡と呼ばれる)を用いる必要があります。これらの観測データは粒子・光検出器を用いて電子的に蓄積され、雑音現象を除去するなど、コンピュータを駆使した解析技術を利用してガンマ線の信号を引き出します。その信号のエネルギー分布や時間分布などの情報を用い、発生天体における高エネルギー現象を解明していきます。

藪 博之 (教授)  

藪 博之

私は場の理論という方法を使って、対称性の自発的破れに関係しておこる現象を研究しています。電場・磁場のように空間の各点に物理量が対応するのが場で、その運動を記述する理論が場の理論です。

対称性の自発的破れというのは、磁石に方向性があるように、場がある特定の大きさ・方向を取った方が安定になる現象です。

おもしろいことにこの現象は素粒子・原子核や原子などミクロな世界から星や宇宙の構造などマクロな世界にも現れます。

私は対称性が破れた系で現れる波動や渦などを理論的に研究して、それが原子気体をはじめ素粒子や宇宙でどのような役割をするのかを解明するとともに、物質波やガンマ線レーザーなどの基礎研究を行っています。

是枝 聡肇 (教授)  

是枝 聡肇

当研究室では超高分解能光散乱分光や超高速時間分解分光などの先端的なレーザー分光法を駆使した実験的研究を行っています。現在の主な研究対象は物質の「強誘電性」という性質に関連した素励起であり、音の量子「フォノン」や、フォノンと電子との相互作用、熱エネルギー(フォノン気体)のダイナミクスなどを扱います。例えば、物体に与えられた熱は拡散しかしないというのが熱伝導の常識ですが、これに反してある種の強誘電体においてはフォノン気体の疎密波として「熱の波動」が存在します。我々はレーザーを駆使することによって「コヒーレントな熱の波動」を物質内部に積極的に励起する実験を行っています。また、高分解能光散乱実験では、ある種の強誘電体において単結晶には本来存在しない「フラクタル」の存在を確認しており、その新たなダイナミクスの解明を進めています。

清水 寧 (教授)  

清水 寧

私は10-1000くらいの原子から構成されるマイクロクラスターのダイナミクスについて、コンピュータを用いた数値シミュレーションに基づきながら理論的に研究しています。

特に非線形性によりもたらされる乱雑な運動(カオス)について、統計力学の観点から、そして力学系の観点から興味を持っています。

金属、希ガス、等々の多様な元素から構成されるマイクロクラスターがこの世の中に数多く存在しますが、それらの中に見られる個別性と普遍性を「マイクロクラスターの中の動き」の中に見つけたいという動機から研究を続けています。

滝沢 優 (教授)  

滝沢 優

液晶ディスプレイに偏光板を置いて(通して)見たとき、偏光板がある角度の時、画面が暗くなります。これは液晶ディスプレイから出てきている光がある特定の方向に偏光しているためです。この光の偏光を利用することにより、ある特徴を見えなくしたり、あるいは、見えるようにしたりできます。逆に、そのことから物質の特徴を解明することができます。目に見える光(可視光)だけでなく、赤外線から紫外線やX線までの偏光した光を発生する放射光を用いて、液晶などの分子配向や物質中の電子のエネルギーと運動量だけでなく電子の存在確率の形状(原子軌道)をも特定する研究を行っています。

和田 浩史 (教授)  

和田 浩史

私の専門分野は物理学と他の科学が交わる領域にあります。あえていうと、ソフトマター、生物、流体、非平衡現象の物理学になりますが、流れや変形の関わるマクロな自然現象全般に強く惹きつけられて研究をしてきました。とくに最近はバクテリアから植物まで、生物界にみられる多様なかたち(form)と動き(motion)を生み出すメカニズムに強い関心を持って研究に取り組んでいます。どのような生命現象も、その系がもつ対称性や保存則(質量保存や力のつりあい)といった基本的な物理法則を破ることはできません。逆にいうと、そのような少数のマクロな物理法則にもとづいて、いっけん複雑な生命現象のある側面がすっきりと理解できることがあります。物理学(とくに力学)と幾何学をよりどころとして生命現象の謎に挑む科学精神は、ダーシートムソン以来の歴史ある分野ですが、近年ますます輝きを増す科学のフロンティアです。このような試みを通じて、決してくみ尽くすことのない豊かで深い古典物理学の世界観を体験することも楽しみのひとつです。それは、物理学の案内に導かれて、生物に限らず我々を取り巻くありふれた日常現象に思いがけない発見や驚きをみいだすことです。学生の皆さんにはこの物理科学科での学びを通じて、世界の成り立ちについてなにかを教えてくれる新鮮な景色に出くわしてほしいと思います。

根本 泰雄 (教授)  

根本 泰雄

専門分野:固体地球物理学(細目:観測地震学),理科教育学(細目:地学教育,地震教育,地震防災・減災教育)

小中高等学校の「理科」,大学学士課程での「地球惑星科学」に関して,科学する醍醐味を体験・体得する授業方法や教材の開発に取り組んでいます.また,そのための,観測に基づく地震の研究も行っています.例えば,“地震に伴う地鳴り現象”(地震動に伴って地鳴りが聞こえる自然現象)が知られていますが,その発生メカニズムは科学的に未解明です.このような,学問的にも未解明な課題を素材とする,観測方法の提案も含めた教材開発研究を進めています.

科学的に未解明な課題の解明へチャレンジできる教材を開発することは,大地震時の流言(例えば,地鳴りがしたから数時間後に大きな余震がくる,など)へ,科学的に考え対応できる人を育てることにもつながります.

科学的に未解明な課題の解明も含め,科学する醍醐味を伝えられる「理科」教員を育てる教育・研究を,地球の観測を通して,今後も目指していきたいと思っています.

実験,観察,観測等をふんだんに取り入れた,生徒の眼が輝く授業が行える「理科」教員を目指すことも,卒業後の進路の一つとして考えてみませんか?

平井 豪 (講師)  

平井 豪

私は、少し工学部っぽいのですが、せっかくやるなら自分の研究が少しでも社会に役立つようにと思い、特に資源枯渇・環境破壊の問題の解決に貢献することを意識して、光物性物理学や電気化学、結晶工学などの分野で研究を行っています。具体的には、水銀を使った従来の蛍光灯に置き換わる次世代の照明に使われる発光材料や、現在主流となっているシリコン太陽電池と肩を並べられる新しい太陽電池材料、太陽光エネルギーを使って代替クリーンエネルギーである水素を製造することができる水分解光触媒材料などのエネルギー変換材料の研究・開発に取り組んでいます。また、最近は核医学画像撮影に利用される放射線検出材料の研究にも力を入れています。さらに、それらの材料はできるだけ環境に低負荷でつくられるべきだと考え、融液、溶液などの液相を利用した省資源の材料プロセス技術の開発も合わせて行っています。

これらの研究・開発に、数ナノメートルから数マイクロメートルのメゾスコピック領域と呼ばれるスケールでの物理・化学を積極的に応用することによって、画期的なエネルギー変換材料や材料プロセス技術の開発を目指しています。

荒木 優希 (助教)  

荒木 優希

私の研究対象は固体-液体の界面における水です。結晶が成長するときや原子置換が起こるとき、吸着や表面拡散に界面の水がどのような影響を及ぼすか、そして界面水の構造は何によって支配されるかについて研究しています。この課題に、水和構造を実空間的に可視化することができる周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)という測定手法で挑んでいます。炭酸カルシウム結晶や粘土、脂質膜などさまざまな結晶表面での水の構造や振る舞いをその場観察してきましたが、最近では、界面水は結晶表面原子との相互作用だけでなく、水溶液中のイオンの影響を受けることがわかってきました。

今後は界面水に関する知見を生かして、水がある環境でどうやって地球最初の生命が誕生したか?というテーマに挑戦します。生命はRNAの形成から始まったとされるRNAワールド説が提唱されて久しいですが、その形成は海中で起こったと考えられている反面、脱水重合を経て形成されるRNAは水中で生じにくいというパラドックスが存在します。FM-AFMによる観察を通して明らかになったイオンによって引き起こされる微視的な水和構造変化は、海中でRNAの形成が起こることを示す重要な鍵になると予測しています。

中田 惟奈 (助教)  

中田 惟奈

シンクロトロン放射光は光速近くまで加速された電子や陽電子が磁場によって加速度を受けて曲がる際に放射する電磁波(光)です。この光の持つ「真空紫外からX線までの幅広い波長分布」、「偏光性」などの性質を活かし、物質中の電子状態を調べる実験を行っています。

物質の持つ磁性や超電導などの性質は物質中の電子の状態に由来します。どんな原子軌道の性質を強く持っているかにこれらの電子の性質は大きく左右されます。「水平偏光」「垂直偏光」などの性質を持った光を物質に入射すると、特定の原子軌道の性質を持つ電子を選択して励起することができます。この性質を利用することによってこれまで困難であった希土類(レアアース)化合物の電子の空間的な広がり方を調べる実験手法を近年開発してきました。希土類に限らず、様々な物質の電子状態解明に役立てることがこれからの目標です。

藤井 康裕 (講師)  

藤井 康裕

これまで、「光」を主な実験の手段としてソフトマター(生物や液体、ゲルなど)からハードマター(結晶)までを対象として研究活動を行ってきました。それ故、研究領域としては誘電体、化学物理、生物物理などいくつかの分野を行き来しています。

最近では特に、ラマン分光による機能性物質の評価に力を入れています。物質に光を入射すると、試料の分子振動や格子振動による電子分極率の揺らぎに起因して、入射光とは異なる周波数をもつ散乱光が発生します。そのスペクトルを解析することによって、分子種の特定や格子振動の解析を行なうのがラマン分光法です。その中でも我々は、角度分解偏光ラマン分光という測定手段を用いて、強誘電体や圧電体といった物質を対象とした研究を行なっています。この方法では、結晶試料中の特定の1点に注目して格子振動の対称性等を精度良く測定することが出来る為、局所不均一性をもつ試料等の評価に有効です。今後は特に、低振動数領域のダイナミクスについて研究を進めたいと考えています。

平野 史朗 (助教)  

平野 史朗

我々の身の回りでは、割り箸のように固体が引っ張られて開くという破壊現象が多く見られます。それに対して多くの地震は、岩石が圧縮され、形成された亀裂面を堺に岩石同士が摩擦を生じながら滑るという破壊現象であると考えることができます。

このように少し変わった破壊現象である地震の姿は、現場が地球という不均質でスケールの大きな領域ゆえに、極めて限定的な形でしか観測することができません。この不足を補い、また観測結果を統一的に解釈するためには、単純なモデルを用いた理論的研究が有効となる場合があります。

そこで私は、物性や力が不均質な場において、地震時に断層がどのように破壊しエネルギーを解放しうるのか…という問題を、偏微分方程式や特異積分方程式などを頼りに、数理モデルの観点から取り扱っています。このアプローチのためには弾性波・破壊・摩擦などにまつわる個々の理論の相互作用を考える必要がありますが、極力単純な理論だけの組み合わせからでも様々な数学的問題が生まれ、現象が示唆されるところに、世界中で多くの理論研究者が興味を惹かれ取り組んでいます。

長谷川 友里 (助教)  

長谷川 友里

私は,自己組織化的に形成される分子薄膜を対象として研究しています.自己組織化とは,異なる要素が集まることで新たに機能を発現する現象のことで,自然界のあらゆるところで観察されます.これを新規機能性材料や省エネルギーなデバイスの開発・設計に活かすことが目的です.

実験においては有機半導体分子を扱います.分子個々が性質を有すると同時に,薄膜においては分子レベルの集合構造によって互いに相互作用を受け,電子・光物性の発現に影響を及ぼすことが知られています.一方で,その集合構造は弱い相互作用で安定化されているため,容易に制御できるものではありません.そこで分子と基板との相互作用を利用して成膜するところから実験を始めていきます.このとき,作製した薄膜の物性発現の機構について,表面科学の手法を用いて分子レベルの構造からアプローチします.それを実現するため,SRセンターの放射光を用いた電子状態計測や,走査プローブ顕微鏡を用いた分子レベルの構造計測を軸に,研究を進めていきます.

奥田 剛司 (助教)  

奥田 剛司

宇宙から地球に到来する放射線(宇宙線)にはガンマ線やベータ線、各種の原子核やニュートリノがありそのエネルギーも様々である。それら宇宙線の中でも10[EeV](1.6ジュール)以上の宇宙線は最高エネルギー領域の宇宙線と呼ばれており、人類が現在、単一粒子に込めることのできる最大のエネルギーよりはるかに 高いエネルギーである。

非常にエネルギーの高い宇宙線が地球に到来すると地球大気との相互作用で多数の粒子を生成する(空気シャワー現象)。高エネルギー宇宙線は一般にエネルギーの増加とともにその数が減少し、エネルギーが10[EeV]以上の宇宙線は1年間観測して1平方キロメートルに1個到来する程度である。したがってこのエネルギー領域の宇宙線を研究するには非常に大きな検出器が必要で、地球大気を検出媒体として空気シャワーを観測することで研究が行われている。その研究内容はこのエネルギー領域の宇宙線が起こす空気シャワー現象についての研究や、観測された空気シャワーから再構成された到来宇宙線のエネルギー、到来方向、宇宙線種を用いた観測的宇宙物理の研究である。

現在、自分は主に学部生向け実験を担当しながら、この最高エネルギー領域の宇 宙線観測研究に取り組んでおります。

吉岡 潤 (助教)  

吉岡 潤

主に液晶の研究をしています。液晶と言うと、液晶ディスプレイのことを思い浮かべる方が多いかと思いますが、これに使われている物質が私の研究対象です。液晶という言葉は「液体結晶」に由来するもので、それが示す通り液体と結晶の中間の状態を指します。そのため、液体のような流動性と結晶のような秩序性を両方併せ持ち、この二面性こそが液晶の一番面白いところだと、私は思っています。

液晶は、電場、磁場、温度勾配といった外場に敏感に応答します。例えば液晶ディスプレイでは、電場のオンオフによる液晶の構造間のスイッチングを駆動原理としています。また、電場や温度勾配によって液晶中に定常な流動が誘起され、それによって新たな構造が発現、安定化するという現象も報告されています。少し俯瞰的に見ると、こういった構造は外部とエネルギーのやり取りをしながら形成、維持されているとみなすことができ、散逸構造と呼ばれます。この散逸構造の究極例としては、恒星、ガス惑星、銀河といった宇宙系の諸構造や、あらゆる生体構造が該当します。こういった散逸構造を物理的に記述する手法は未だよく確立されておらず、現代物理学の課題の一つとされています。この課題に対する糸口が、液晶系における散逸構造から得られないだろうか、と考えつつ日々液晶の実験をしています。

根間 裕史 (助教)  

根間 裕史

物質と相互作用を示す電磁波は、物性研究のよいプローブとなります。これまで、いくつかの周波数領域で、物性物理の実験的研究を進めてきました。当初、キロヘルツからメガヘルツ領域で、実験を手掛けました。グラファイト表面に形成される単原子層のヘリウム3薄膜で現れる量子スピン液体状態(絶対零度でもスピンの自由度が凍結しない状態)の高磁場中の磁性を、核磁気共鳴を用いた実験で明らかにしました。

近年は、電波と光の中間に位置するテラヘルツ領域で実験に携わりました。量子井戸構造を利用した極めて感度の高いテラヘルツ検出器の作製・評価を行いました。また、超高感度なテラヘルツ近接場顕微計測を、グラフェン(グラファイトの単原子層の薄膜)や二酸化バナジウムなどの物質にはじめて適用し、電流揺らぎを捉えられないか試みました。今後は、光の領域で物性研究を深めていきたいと考えています。

横山 修一 (助教)  

横山 修一

私の専門分野は理論物理学、特に場の量子論と一般相対性理論を統一する方法に関する研究です。

物事を統一的に理解できると見通しが良くなったり新しい物理現象の予言に役立ったりします。身近な例で言えば、Maxwellが電場と磁場を統一して電磁現象を発見したことが挙げられます。これにより、電磁波という横波の存在が予言されましたし、また光が電磁波の一種として理解できるようになってそれまで別個に研究されていた光学という分野も電磁気学の中で再構成されることになりました。

私は現在一般相対性理論に含まれる基本的な問題について研究を進めています。重力はNewton力学ではベクトル量で表されますが、一般相対性理論では時空の曲がり具合(曲率)によって表されます。したがって、重力が強い場所では時空の曲率が大きくなりますが、一般の曲がった時空におけるエネルギーや運動量といった物理量の定義に不完全な部分が残されていました。私はつい最近の研究で、この不完全な部分を改善する物理量の定義を提案しました。現在この提案した物理量を使って何か新しい物理に応用できないか研究中です。

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